目次
1. 鶏肉を冷凍保存する二つのメリット

鶏肉を冷凍保存するメリットには「長期保存ができること」と「鶏肉が柔らかくなること」の二つがある。これらは冷蔵保存には見られない、冷凍保存ならではのメリットだといえるだといえる。
メリット1.1か月程度の長期保存が可能に!
冷蔵保存の保存期間は数日程度だが、冷凍保存の場合は1か月程度保存がきく(※1)。保存期間が長い理由は、冷凍室では鶏肉の腐敗を引き起こす微生物(細菌など)が活動できないからだ。詳しく説明すると、一般的な家庭用冷凍庫は-18℃以下になるよう設計されており、これは細菌の発育限界温度(-10℃程度)よりも低いのだ(※2)。このため、冷凍室で保存すると長期保存が可能になる。
メリット2.肉の組織が壊れて柔らかい!
鶏肉を凍らせると組織が壊れるため、肉質が柔らかくなる。これはうま味成分を含む肉類の水分(ドリップ)が出てしまうことを意味するため、本来なら「鶏肉の品質が落ちる」といわれることが多い(※3、4)。しかし、柔らかい鶏肉を食べたいときにはむしろ冷凍保存のほうがおすすめだ。なお、冷凍方法を工夫すれば鶏肉の組織をできる限り傷つけないで保存することも可能だ。
2. 正しい鶏肉の冷凍保存のやり方

冷凍された鶏肉は、そのまま冷凍庫に入れて保存すればよい。一方、生の鶏肉を冷凍する場合はいくつか準備が必要になる。以下に正しいやり方・手順を説明するので、確認しながら行うようにしよう。
- ビニール手袋をして、発泡トレーから鶏肉を取り出す
- 鶏肉についたドリップをキッチンペーパーでふき取る
- ふき取った鶏肉を一つずつていねいにラップに包む
- チャック付きの密閉袋にラップをした鶏肉を入れる
- アルミ製のトレーに乗せて鶏肉を急速冷凍させる
鶏肉の部位別の冷凍方法のポイント
スーパーなどでよく見かける鶏肉の種類にはむね肉、もも肉、ささみ、手羽先・手羽元、鶏ひき肉などがある。これらは全て冷凍保存が可能だが、やり方がそれぞれ異なるのでポイントを確認しよう。
- 鶏むね肉:凍りにくいため一口大に切ったものを冷凍保存する
- 鶏もも肉:凍りにくいため一口大に切ったものを保存する
- ささみ:乾燥しやすいため下ごしらえしてから保存する
- 手羽先:骨と肉の間に切れ目を入れてから保存する
- 鶏ひき肉:一回分に小分けしてから保存する
3. おいしく鶏肉を冷凍保存する4つのポイント

鶏肉の冷凍保存をする際のポイントはいくつかあるが、ここではとくに重要になる「急速冷凍」「酸化防止」「乾燥防止」「衛生管理」の四つを紹介する。それぞれに関する具体的な対策方法も紹介するのでしっかりと覚えておこう。
ポイント1.品質の劣化を防ぐための急速冷凍
鶏肉の品質を維持するには、できるだけ新鮮な状態にするために急速冷凍が必要になる。しかし-30℃以下で保存できる業務用冷凍庫と異なり、-18℃以下で保存する家庭用冷凍庫では急速冷凍が難しい。そこで「小分けにして保存する」と「金属トレーに乗せて保存する」の二つをするとよい。これらを行うことで急速冷凍に近い状態になり、鶏肉を中まで素早く凍らせることができるようになる。
ポイント2.味や色を維持するための酸化防止
食品の劣化には腐敗以外に酸化などがあり、冷凍保存を行っても「酸化」を防ぐことはできない。酸化が進むと、味や色が悪くなり、食べてもおいしくない状態になる。酸化を防止するには、ラップで包んでから密閉用保存袋に入れて保存するのがおすすめ。保存容器にはタッパータイプもあるが、こちらは空気に触れてしまい酸化が起きてしまうため使わないほうがいい。
ポイント3.風味を維持するための乾燥防止
鶏肉を冷凍保存する際には、食品の乾燥にも注意しよう。冷凍していると食品に霜が付くことがあるが、これは食品が乾燥している目印である。鶏肉の乾燥を防ぐためには「冷凍庫の開閉を少なくする」と「液体調味料で味付けする」などが必要だ。とくに冷凍庫の開閉が多いと、冷凍庫の温度が高くなり食品が溶けてしまうので注意しよう。もし料理が決まっているなら液体調味料に浸すのもよい。
ポイント4.鶏肉に細菌をつけない衛生管理
冷凍保存中は細菌の増加を防げるが、殺菌作用はないので細菌が減るわけではない。そのため、保存の段階で鶏肉に細菌を付けないのが重要だ。細菌を付けないためには「ドリップをふき取る」「ドリップシートは捨てる」「清潔な容器に移し替える」「新鮮なうちに冷凍する」「まな板や包丁を消毒しておく」など、数多くのポイントがある。先述の正しいやり方に沿って冷凍保存するとよい。
4. 冷凍した鶏肉を安全に解凍する方法

冷凍した鶏肉の解凍する方法には「低温解凍」「氷水解凍」「加熱解凍」「常温解凍」などの種類がある。それぞれの特徴と具体的なやり方に加え、冷凍した鶏肉をそのまま使えるレシピを紹介する。
冷凍した鶏肉は低温解凍か氷水解凍が基本
鶏肉をおいしく安全に解凍したいなら、冷蔵庫に入れる「低温解凍(自然解凍)」や、氷水に浸す「氷水解凍」がおすすめだ。これらの特徴は、細菌繁殖の原因になるドリップの量を少なくできることである。低温解凍のやり方は、保存袋に入れたまま鶏肉をお皿の上に置き、冷蔵庫で一晩解凍するというもの。また氷水解凍のやり方は、ボウルに張った氷水に保存袋のまま浸けるというものだ。
冷凍鶏肉をそのまま使える料理もおすすめ
解凍が大変な場合は、冷凍した鶏肉をそのまま使える料理もおすすめだ。たとえば、鶏むね肉を鍋で茹でて「鶏チャーシュー」にするのもいいし、棒状に切った鶏肉をパン粉にまぶしてあげる「揚げ焼き」などもよい。また下味をつけて冷凍しているなら、そのまま鍋やフライパンで加熱する方法もある。加熱解凍に含まれるこれらの調理方法も、安全においしく鶏肉を解凍できる方法となっている。
鶏肉の常温解凍は原則NG!
鶏肉の常温解凍は、ドリップが多く出てしまうため避けるべきだ。ドリップが多く出ると、うま味成分が出てしまうだけでなく、細菌が繁殖する原因にもなってしまう。そのため、味の面でも安全性の面でもおすすめとは言えない。基本は冷凍解凍、氷水解凍、加熱解凍を選ぶようにし、もしどうしても素早く解凍したいなら流水に浸ける「流水解凍」や「電子レンジ解凍」などを行うようにしよう。
5. 鶏肉を冷凍保存する際の注意点

冷凍保存をすることで鶏肉をおいしく安全に長期保存できるが、冷凍保存をする際にもいくつか注意点がある。完璧な保存方法ではないので、以下の注意点についてもしっかりと確認しておこう。
注意点1.におい移りに気をつける
一般的に冷凍庫のように低温で乾燥した環境は、におい移り(移り香)が起こりやすい(※5)。におい移りとはほかの食品や建物のにおいなど、その食品以外のにおいが移ってしまうことをいう。このにおい移りを防止するには、密閉袋などを使って鶏肉をきちんと密閉することが重要。また、密閉していても臭い移りが起こる可能性もあるので、できるだけ早めに食べることが大切である。
注意点2.異臭・変色がある場合は破棄する
先述のとおり、鶏肉を冷凍保存すれば細菌の増加は防げる。しかし、冷凍保存をしても酸化や乾燥などの「冷凍やけ」は防ぐことができない。そのため、もし冷凍焼けによる異臭がしたり、変色があったりした場合は無理せずに破棄したほうがいいだろう。なお、鶏肉の冷凍保存は1か月ほど可能だが、冷凍焼けのことを考慮するとできるだけ早く食べ切るほうがよい。
結論
鶏肉を安全においしく保存したいなら冷凍保存が有効だ。しかし、トレイのまま保存するのは衛生的によくない。冷凍保存する場合は少し大変でも、ドリップをふき取り、ラップに包み、密閉袋に入れて保存しよう。また、よりおいしく保存したいなら「急速冷凍」「酸化防止」「乾燥防止」「衛生管理」にも気をつけて、鶏肉を冷凍保存するといいだろう。
【参考文献】
- ※:農林水産省「ホームフリージングを行う際は、どんな点に注意すればよいですか。」
https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1810/01.html - ※:日本冷凍食品協会「冷凍の世界~冷凍食品の新常識~後編」
https://online.reishokukyo.or.jp/feature/feature-14-2.html#ath - ※:ベターホーム協会「家庭での冷凍・解凍の基本を、科学的な観点からまとめました」
https://www.betterhome.jp/lp/book_01/ - ※1:全国食肉生活衛生同業組合連合会「覚えておこうお肉のこと!」
http://www.zenniku-seiren.or.jp/archive/wp-content/uploads/2018/04/0be564e24f64a9c95067ef33d6b8e02d.pdf - ※2:日本水産学会誌「3.低温度における微生物の腐敗活性」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan1932/35/8/35_8_784/_pdf - ※3:日本冷凍食品協会「ホームフリージングと冷凍食品の違い」
https://online.reishokukyo.or.jp/learn/faq/supportfaq/#ath - ※4:日本食肉消費総合センター「ドリップ」
http://www.jmi.or.jp/info/word/ta/ta_140.html - ※5:日本冷凍食品協会「冷凍室内の移り香について」
https://www.reishokukyo.or.jp/wp-content/uploads/pdf/claim_04.pdf
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