1. そばの種類

まずはそばに関する基礎知識を簡単に身につけておこう。
そばの種類
そばの実の挽き方により「一番粉」「二番粉」「三番粉」などと分かれている。最初に挽かれる一番粉は胚乳の中心部、でんぷん質を多く含む部分が粉になったもので、白っぽい色をしている。二番、三番と進むに連れて色が濃くなり栄養価も高くなる。しかし同時に味わいにクセも出てくるため、どのそばが好みかは分かれるところだ。
このように選り分けをせず、そばの実全体を挽いたそばを「挽きぐるみ」と呼ぶ。殻ごと挽いているため色が黒っぽく、香りが強いのが特徴だ。また、そばの実の外皮を剥いてから挽いたものは「全層粉」という。こちらも黒っぽく香りが強いが、栄養価が高い。
このように選り分けをせず、そばの実全体を挽いたそばを「挽きぐるみ」と呼ぶ。殻ごと挽いているため色が黒っぽく、香りが強いのが特徴だ。また、そばの実の外皮を剥いてから挽いたものは「全層粉」という。こちらも黒っぽく香りが強いが、栄養価が高い。
そばが普及した潮流による分け方
日本そばが世に広まる歴史の中で「更科蕎麦」「藪蕎麦」「砂場蕎麦」という3つの流派が生まれた。合わせて3大そばともいわれている。更科蕎麦は一番粉のみを使用して作られるもので、江戸時代に長野県の更組村から上京した人が、武家屋敷の保科でそば切りを作ったのが始まりだ。藪蕎麦は、比較的塩気が強いつゆを少量つけて食べる蕎麦である。そして砂場蕎麦は、大阪城築城の際、砂を置いてある場所で作られたのが発祥と考えられている。
韃靼そばと普通のそば
日本そばと韃靼そばは、中国ではそれぞれ「甘そば」と「苦そば」といわれている。その名の通り韃靼そばは多少苦味があるが、日本そばに比べてビタミンB群やミネラルが豊富で、高い抗酸化力がある。
2. そばの栄養と効能

そばは精製しないで挽くため、うどんや米と比べて栄養価が高い。米や小麦は胚芽部分を取り除いて胚乳部だけを使用するが、そばの場合、栄養豊富な胚芽部が実の中心部にあるため取り除くことができないのだ。また皮の下の甘皮にも栄養が多いため、精製しないで作るそばは栄養が豊富なのである。
そば(全層粉)100gあたりの主な栄養一覧
- エネルギー:361kcal
- 水分:13.5g
- たんぱく質:12.0g
- 脂質:3.1g
- 炭水化物:69.6g
- ナトリウム:2mg
- カリウム:410mg
- カルシウム:17mg
- マグネシウム:190mg
- リン:400mg
- 鉄:2.8mg
- 亜鉛:2.4mg
- 銅:0.54mg
- マンガン:1.09mg
- ビタミンB1:0.46mg
- ビタミンB2:0.11mg
- ナイアシン:4.5mg
- ビタミンB6:0.30mg
- 葉酸:51μg
- パントテン酸:1.56mg
- ビオチン:17.0μg
- 飽和脂肪酸:0.60g
- 一価不飽和脂肪酸:1.11g
- 多価不飽和脂肪酸:1.02g
- 水溶性食物繊維:0.8g
- 不溶性食物繊維:3.5g
これは文部科学省「食品成分データベース」(※1)による、そば(全層粉)100gあたりの栄養価だ。主な栄養素とその効能を詳しく解説しよう。
良質のたんぱく質
たんぱく質は20種類のアミノ酸が結合して成り立っている。炭水化物や脂質と並び、エネルギーを生産するうえで欠かせない栄養素だ(※2)。そばには植物性たんぱく質が多く含まれており、その量は牛乳に匹敵するほどといわれている。水溶性で消化されやすく、胃に負担をかけずに食べられるのも特徴だ。またそばのたんぱく質は非常に良質で、体内では作ることができず食品から摂取する必要のある「必須アミノ酸」が豊富に含まれている。
エネルギー源となるデンプン
そばに含まれるデンプンは、短時間加熱することで消化・吸収しやすくなり、エネルギー源にもなる。
ビタミンB1とB2が豊富
ビタミンはヒトの体内でほとんど合成できないため、食べ物から摂取する必要がある栄養素だ(※3)。そばにはビタミンB1とB2が豊富に含まれている。ビタミンB1は疲労回復を促し、精神的なイライラを鎮める作用があるほか、食欲不振の緩和にも役立つという。薬味のネギと一緒に食べると、ネギに含まれるアリル化合物がビタミンB1の吸収を促進する。またビタミンB2は、皮膚や粘膜の状態を整え、健やかに保つのを助ける働きがある。
抗酸化物質ルチン
そばには「ビタミンP」とも呼ばれるルチンも含まれている。穀類ではそばだけが持っている栄養で、抗酸化物質のひとつに数えられている。抗酸化物質とは、活性酸素の発生を抑えたり取り除いたりすることにより、動脈硬化や免疫機能の低下、老化やがんなどの予防に役立つとされる物質だ(※4)。
肝機能をサポートするコリン
コリンはビタミンB群の仲間だが、肝臓の働きを助け、飲酒による脂肪肝を防ぐといった効果が期待できる。そのため、そばを食べながら酒を飲むと身体にやさしいといわれている。
食物繊維も豊富
そばは食物繊維を多く含む食べ物だ。先ほど紹介した栄養一覧を見ると、100gあたり4.3gの食物繊維が含まれている。同量の精白米(うるち米)は1.5g(※5)なので、およそ2.5〜3倍になる。食物繊維には便秘を緩和する作用のほか、腸内環境を整えたり血糖値の上昇を緩やかにしたりする作用がある。また脂質や糖、ナトリウムなどを吸着し、体外へ排出する働きもある(※6・※7)。
そば湯やそばがきで栄養を残さずいただこう
もちろん、そばそのものを食べるだけでも豊富な栄養を取り込めるが、そば湯を飲んだりそばがきを食べたりすることで、さらに栄養を摂取できる。そば湯とはご存知の通りそばの「茹で汁」であり、水溶性のビタミンB群(B1・B2・ナイアシンなど)、たんぱく質、ルチン、コリンといった栄養素が溶け出している。またそばがきとは、そばを団子のようにした食べ物である。茹でないため、栄養素が溶け出さず効果的に摂取できる。
この記事もCheck!
3. そばの栄養がダイエットに効果的とされる理由

そばは炭水化物だが、しばしば「ダイエット向き」といわれる。一般的に炭水化物といえばダイエットの敵といったイメージがあるが、果たしてダイエット向きといわれる理由はどこにあるのだろうか?
低GI食品である
食後の血糖値の上がりやすさを示す指標として「GI値」がある。数値が低いほど、食後の血糖値の上昇が緩やかであることを意味するもので、55以下の食品を低GI食品という。実は、そばはこのGI値が54と低い。なぜ低いのかといえば、それは食物繊維が豊富に含まれているからだ。炭水化物であり糖質も含まれているが、豊富な食物繊維が糖の吸収を抑えているのである。
血糖値が急上昇するとインシュリンが大量に分泌され、太りやすい体質になってしまうとされるが、そばはまさにこの逆をいく食べ物というわけだ。
血糖値が急上昇するとインシュリンが大量に分泌され、太りやすい体質になってしまうとされるが、そばはまさにこの逆をいく食べ物というわけだ。
代謝を促すビタミンが多い
そばに多く含まれる水溶性ビタミンは、体内で起こるさまざまな代謝に欠かせない「酵素」の働きをサポートする役割を担っている。たとえばビタミンB1やB2であれば糖質や脂質、たんぱく質など代謝をサポートし、新陳代謝を促進するといった効果がある。代謝はダイエットに大きく影響を与えることから、そばに含まれる栄養がダイエット向きであるといわれるのだろう。
ただし食べ合わせも重要
そばにも欠けている栄養素がある。いくらダイエットのためとはいえ、そばだけを食べていては栄養が偏ってしまうので気をつけよう。たとえば、そばに不足している栄養素としてビタミンAやCが挙げられる。とくに、そばに含まれるルチンはビタミンCと一緒に摂取するとより効果的とされる栄養素だ。野菜を一緒に食べるなどして上手に補おう。
4. そばの「具」や「薬味」の栄養は?

そばの具といえば天ぷら、薬味といえばネギやわさび、七味などが浮かぶが、これらの栄養はどれほどのものなのだろうか?
天ぷらの栄養
油で揚げてあることから、高カロリーであることは否めない。だがかぼちゃやししとうなどの緑黄色野菜の天ぷらにすれば、βカロテンやビタミンCといったそばにない栄養素を補うことができる。カロリー過多や胃もたれを招くおそれがあるため食べ過ぎはNGだが、うまく組み合わせればバランスよく栄養を摂取できるだろう。
薬味の栄養
ネギに含まれる辛み成分アリシンは、ビタミンB1の吸収を促進するといわれる栄養素だ。またわさびの辛さのもとになるシニグリンには、ビタミンB2の作用を高める働きがあるといわれている。そのほか、七味にはβカロテンやカプサイシンといった栄養が含まれている。薬味はいずれも大量に摂るものではないため、体内に取り込める栄養素は微々たるものかもしれないが、こうした栄養があることは知っておいてもよいだろう。
結論
そばには、生命活動を司るたんぱく質や、疲労回復・肌の調子を整えるビタミンB群などの栄養素が豊富に含まれている。「そば好きは長生きする」という言い伝えはこうしたことが背景にあるのかもしれない。食べ合わせも考慮しつつ、ぜひそばを上手に食生活に取り入れていこう。
(参考文献)
- 1:文部科学省 食品成分データベース「穀類_そば_そば粉_全層粉 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=1_01122_7 - 2:厚生労働省「たんぱく質 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-044.html - 3:厚生労働省「ビタミン _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html - 4:厚生労働省「抗酸化物質 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-009.html - 5:文部科学省 食品成分データベース「穀類_こめ_[水稲めし]_精白米_うるち米 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=1_01088_7 - 6:厚生労働省「食物繊維 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html - 7:厚生労働省「食物繊維の必要性と健康 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html