1. 蕎麦屋の基礎知識

蕎麦と日本人
蕎麦は麺類の中でも日本人との関わりが深い。蕎麦は日照りや寒さに強く、土地が痩せていても育つので、古くから広く育てられてきた。日本で蕎麦の栽培が始まったのは、縄文時代といわれている。
蕎麦と麺
蕎麦の歴史は古いが、現在のような麺状の蕎麦になったのは、江戸時代になってから。それまでは、今でいう「蕎麦がき」や「蕎麦まんじゅう」のような状態で食べられるのが普通だった。蕎麦は、麺というより一種の穀物として愛食されてきたのだ。
蕎麦切りの始まり
江戸時代になると各所で現在のような細い麺状になった蕎麦が食べられるようになった。当時はこれを蕎麦切りと呼んだ。蕎麦屋も多く誕生し、中には現在でも暖簾を守る店がある。ちなみに江戸時代から続いており、「蕎麦屋御三家」と呼ばれているのが「薮」「更科」「砂場」である。耳にしたことがある人も多いだろう。どの系統も1軒の蕎麦屋から始まり、暖簾分けを繰り返した結果、似た名前があちらこちらに存在するといわれている。
2. 蕎麦屋のマナー

「かけ」と「もり」
蕎麦は、「かけ」と「もり」が王道。「かけ」とは温かい汁をかけたもので、「もり」とは冷たい蕎麦をざるに盛ったものだ。ちなみに「もり」は、盛られた中心から食べると絡まりづらいように盛り付けられている。「もり」と「ざる」の違いもよく話題になるが、これは店によってさまざま。古くは出汁に差があったとされるが、現在では海苔がのっているものを「ざる」と呼ぶケースが多い。
豪快にすすってOK
食事の場で音を立てるのは、マナー違反といわれることがほとんどだが、蕎麦においてはその逆。豪快に音を立ててすすって、食べてもいい、むしろその方が粋といわれるほどだ。このすする文化は、江戸時代に蕎麦が大ブームを起こした頃から続くといわれている。
つけすぎ注意!
「もり」や「ざる」の場合、つゆがついてくる。そのつゆに蕎麦をつけて食べるわけだが、ここでもちょっとしたポイントがある。
蕎麦は喉越しや味わいはもちろん、香りをたのしむものでもある。つゆに蕎麦をドボンと入れて食べている人がいるが、あれでは香りを楽しむことができない。つゆの濃さによって、1/3〜1/2ほど浸して食べると風情があっていい。
蕎麦は喉越しや味わいはもちろん、香りをたのしむものでもある。つゆに蕎麦をドボンと入れて食べている人がいるが、あれでは香りを楽しむことができない。つゆの濃さによって、1/3〜1/2ほど浸して食べると風情があっていい。
3. 蕎麦屋の雑学

蕎麦の種類
古くは、蕎麦粉だけで作られてきた蕎麦であったが、取り扱いや価格の問題があり、つなぎを使ったものが登場した。定番のつなぎとして挙げられるのが小麦粉であり、その比率が呼び名にも使われている。蕎麦粉だけのものを十割、小麦粉2、蕎麦粉8のものを二八半分ずつのものを半々などだ。小麦粉のかわりに布海苔をつなぎにしたへぎ蕎麦などもある。
蕎麦はパワーフード!?
蕎麦は、ルチンを代表とする栄養成分や食物繊維、タンパク質などが豊富に含まれており、優れた健康食品と呼ばれている。蕎麦に豊富に含まれているこれらの栄養素はどれも、現代人が不足しがち。ぜひ、積極的に取り入れたい。ちなみに蕎麦の健康効果は、蕎麦が大流行した江戸時代から語られていたという。
縁起と蕎麦
蕎麦は、日本では縁起物としてしばしば食べられる。例えば、年越し蕎麦、引っ越し蕎麦、節分蕎麦などは、その1つだ。それぞれ諸説あるが、かなり古くから伝わるものが多く、蕎麦が人々の暮らしに深く馴染んでいたことが伺える。
結論
健康に良く、美味しい蕎麦。これからの季節なら、まだ明るいうちに蕎麦屋へ行き、つまみと日本酒から始めるのもおすすめ。最後に「もり」で締めて、明るいうちに帰ってくる。これぞ、粋な嗜み方だ。