1. グレープフルーツとは
グレープフルーツの漢名は「葡萄柚」だ。ぶどうの房のように1本の枝にたくさん果実が実るところからこの名が付いたとされている。そんなグレープフルーツの基本をおさらいしておこう。
亜熱帯が原産の柑橘類
18世紀頃、西インド諸島・バルバドスで最初に発見された、ミカン科ミカン属グレープフルーツ種の柑橘類である。オレンジとブンタン(ザボン)が、自然交配したことで生まれたといわれている。
日本では1971年以降に普及
1823年頃にはアメリカへと伝わり、日本にも大正時代には入ってきたという。ところがグレープフルーツは寒さに弱い。そのため日本での栽培に適さず、このときは普及しなかったようだ。時が経ち1971年、貿易自由化(規制の緩和)が図られ多く輸入されるようになったことから、日本でも普及していったとされている。
主な産地
日本でも栽培されてはいるものの、鹿児島県や熊本県、和歌山県や愛媛県などごく一部の温暖な地域だけであり、また栽培量も少ない。そのため、国内に流通しているグレープフルーツの多くは輸入ものである。主な産地は南アフリカとアメリカで、我々が目にするのはほとんどがアメリカ産だ。
旬の時期
グレープフルーツは基本的に通年手に入るが、旬の時期はいろいろある。たとえばカリフォルニア産は初夏から秋、フロリダ産は晩秋から初夏、南アフリカ産は晩秋から冬であることが多い。また国産のグレープフルーツは春から夏が旬とされている。
2. グレープフルーツの主な品種
グレープフルーツは果肉の色で「白肉種」「紅肉種」などに分けられる。主な品種を紹介しよう。
マーシュ(白肉種)
果皮が爽やかな黄色で、果肉は白みがかった薄黄色をしている。もっとも流通している品種だ。果汁たっぷりで、強い酸味とほのかな苦みが特徴である。
ルビー(紅肉種、別名ピンクグレープフルーツ)
果皮は黄色からオレンジ色、果肉は赤みがかったピンク色をしている。白肉種よりも酸味が控えめなので、酸っぱいのが苦手な方はこちらがおすすめだ。
スタールビー(紅肉種)
果皮は黄色からオレンジ色、果肉は赤みがかったピンク色をしている。ルビーよりも赤みや甘みがやや強い。わずかではあるが、国内産も出回っている。
スウィーティー、オロブランコ
果皮は緑色、果肉は淡い黄色をしている。イスラエル産をスウィーティー、アメリカ産をオロブロンコと呼ぶが同一品種である。酸味が少なくまろやかな味で、独特の甘い香りも特徴だ。
メロゴールド
果皮は緑色から黄色で剥きやすい。また果肉は黄色で果汁たっぷりなのがこちらの品種である。酸味は少なく甘みが強いのが特徴だ。
3. グレープフルーツの切り方とおすすめの食べ方
とくに「こうしなければならない」という縛りはないが、基本的な切り方や美味しい食べ方を紹介しよう。
基本的な切り方
流水で表面をよく洗い、頭(ヘタ)とお尻を1cm厚に削ぎ落とす。このとき果肉を切り落としすぎないように気をつけよう。次に、りんごの皮を剥くときと同じように回しながら、外皮と白い皮を剥く。最後に薄皮と果肉の間に包丁を差し込み、果肉を切り出せばOKだ。
半分にカットする
以前は、皮を剥かず半分にカットし、砂糖をかけて先割れスプーンで食べる方法が主流だった。ジューシーな果肉が砂糖の甘さと混じり合い、なんともいえぬ幸福感を味わえた。もちろん今でも美味しい食べ方のひとつだが、甘い品種が増えたことなどから砂糖の必要性は減っているようだ。
スムージーにする
糖質制限をしている方などはとくに、ヨーグルトに加えたり、ゴーヤやモロヘイヤなどと一緒にスムージーにしたりといった食べ方がおすすめだ。ミキサーにかけるときは、果皮や種などを取り除いておくと苦味を抑えられる。
料理に加える
ほどよい酸味とほろ苦さが美味な果肉を、サラダや洋風寿司などに加えると、華やかな見た目と爽やかな香りが特徴のひと皿が完成する。
4. グレープフルーツの選び方と保存方法
続いてグレープフルーツを選ぶときの着目ポイントと、正しい保存方法を解説する。
目利きポイント
外皮が滑らかでツヤとハリがあるものを選ぼう。また手に持ったときに重量感が感じられれば、表皮が薄く糖度が高いものに当たる確率があがる。フロリダ産のグレープフルーツの場合、気候などの影響で表面にシミや傷がついているように見えるものがある。「サビ果」などというが、中身は問題ないことが多い。フロリダ産の場合は、そこまで見た目に神経質にならなくてもよいかもしれない。
保存方法
丸ごとの場合は、風通しのよい冷暗所で保存するのを基本にしよう。冷蔵庫の野菜室という手もあるが、温度が低すぎると低温障害を招くおそれがあるので注意が必要だ。なお保存する際は、乾燥やにおい移りを防ぐためポリ袋などに入れるとよい。うまく保存できれば、2~3週間はもつはずだ。一方、カット済みのものはラップできっちり包み、ポリ袋などへ入れて冷蔵庫の野菜室で保存しよう。この場合は、できるだけ早く食べきることを心がけてほしい。
日が経ったものはカビに注意
グレープフルーツは外皮が厚いため、みかんなどと比べると果肉が傷みにくい。とはいえ、購入してから日が経っているものについては、念のため食べる前に腐っていたりカビが生えていたりしないか、確認しておくと安心だ。
5. グレープフルーツの栄養と効能
グレープフルーツに限ったことではないが、果物には水分やビタミン、ミネラルや食物繊維などが含まれている。いずれもヒトの健康維持に欠かせない成分なので意識して摂取したいところだ。ただし野菜と比べると糖質が多いものがほとんどなので、食べ過ぎには注意しよう。文部科学省「食品成分データベース」(※1)による、グレープフルーツの栄養素を紹介する。
100gあたりのカロリー
- グレープフルーツ:38kcal
- りんご(皮剥き):57kcal
- バナナ:86kcal
- 日本なし:43kcal
グレープフルーツはほかの果物よりカロリーは低めであることがわかる。なお白肉種と紅肉種があるとお伝えしたが、種類によるカロリーの差はほとんど見られなかったため同じ扱いとさせていただいた。続いて糖質量もチェックしてみよう。
100gあたりの糖質
- グレープフルーツ:9g
- りんご(皮剥き):14.1g
- バナナ:21.4g
- 日本なし:10.4g
文部科学省「食品成分データベース」には糖質の数値がないため「炭水化物量」から「食物繊維量」を差し引いたものを糖質としている。カロリー同様、グレープフルーツはほかの果物と比べて糖質は少なめといえるだろう。そのほか、グレープフルーツにはビタミンC・ビタミンB1・カリウム・食物繊維などの栄養価が含まれており、紅肉腫など果肉が赤いものにはリコピンやβカロテンも含まれる。
ビタミンC・ビタミンB1
活性酸素の働きを抑制、あるいは活性酸素そのものを取り除くといった「抗酸化ビタミン」の一種がビタミンCだ。一方、ビタミンB群は体内のさまざまな代謝に関わる「酵素」の働きを助ける作用がある。いずれも体内ではほとんど合成できないため、食物から摂取する必要がある(※2・※3)。
カリウム
細胞内に多く存在するミネラルの一種で、ナトリウムを排出する作用があることから、塩分の摂り過ぎを調節するのに重要な役割を果たす栄養素である。また、細胞内液の浸透圧を一定に保ったり、神経の興奮性や筋肉の収縮などに関わっていたりもする栄養素だ(※4)。
食物繊維
ヒトの体内では消化・吸収されず、大腸まで達する栄養素である。便秘や腸内環境の改善、血糖値の急上昇を抑えるといった働きがあるほか、肥満や脂質異常症など生活習慣病の予防や改善効果も期待されている(※5・※6)。
リコピン・βカロテン
どちらも、活性酸素を抑制したり、活性酸素そのものを取り除いたりする抗酸化物質「カロテノイド」に分類される栄養素だ。活性酸素が体内で大量に生成されると、動脈硬化やがん、老化や免疫低下などを招くおそれがある。リコピンやβカロテンには、そうした症状を予防・改善する効果が期待できる(※7・※8)。
6. 投薬中の方はグレープフルーツに注意が必要?
グレープフルーツには、薬の作用を妨げるおそれがある成分が含まれるといわれている。たとえば小腸など消化器官に強い阻害を示す成分により、薬が正常に代謝できず体内に長くとどまってしまうことがある。その結果、薬の血中濃度が上昇し、副作用を招く場合があるという。
またカルシウム拮抗剤と呼ばれる、血管拡張作用をもたらす薬の作用を強める可能性があるともいわれている(※9)。グレープフルーツはもちろん、ジュースなどの場合も同様のリスクがあるため、投薬中の方は必ず医師・薬剤師に確認しておこう。現在投薬中でなくとも、将来的に投薬することになるかもしれない。もちろんリスクがあるのであれば処方の際に伝えられるはずだが、頭の片隅にでも入れておいていただけると幸いだ。
またカルシウム拮抗剤と呼ばれる、血管拡張作用をもたらす薬の作用を強める可能性があるともいわれている(※9)。グレープフルーツはもちろん、ジュースなどの場合も同様のリスクがあるため、投薬中の方は必ず医師・薬剤師に確認しておこう。現在投薬中でなくとも、将来的に投薬することになるかもしれない。もちろんリスクがあるのであれば処方の際に伝えられるはずだが、頭の片隅にでも入れておいていただけると幸いだ。
結論
グレープフルーツは丸ごと1個でさまざまな栄養を摂取できる。アメリカではハートマークがつけられ、心臓病予防食品として利用されている一方、高血圧治療薬などとの飲み合わせには注意も必要だ。グレープフルーツが好きな方は、薬を服用する前に医師や薬剤師に相談しよう。
(参考文献)
- 1:文部科学省「食品成分データベース」
https://fooddb.mext.go.jp/ - 2:厚生労働省「ビタミン _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html - 3:厚生労働省「抗酸化ビタミン _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-008.html - 4:厚生労働省「カリウム _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-005.html - 5:厚生労働省「食物繊維 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html - 6:厚生労働省「食物繊維の必要性と健康 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html - 7:厚生労働省「抗酸化物質 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-009.html - 8:厚生労働省「カロテノイド _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-007.html - 9:消費者庁「食品表示基準Q&A」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200327_26.pdf
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