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パラパラチャーハン好き必見!【卵を入れるベストタイミング】を新発見!

投稿者:サイエンスライター 大嶋絵理奈(おおしまえりな)

2019年10月17日

自宅のコンロで作るチャーハンは、米がくっついてベッチョリとしがちだ。中華料理店で食べるようなパラパラチャーハンを作るには、強い火力だけでなく、卵の使い方が重要である。今回は、チャーハンに卵を入れるタイミングを探ってみたい。

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1. 卵はいつ入れるべきなのか

家でパラパラなチャーハンを作るコツとして、卵を入れる方法がしばしば紹介されている。卵がお米の表面をコーティングすることで、米粒同士がが分離するというのだ。しかし、「卵とご飯を同時に入れる」「卵を入れてからご飯を入れる」など、卵を入れるタイミングは見解が分かれている。卵は温度で状態変化しやすい食材であるため、火を通すタイミングや時間はシビアであるはずだ。卵をどのように使うのが、お米の表面を覆うのに最も効果的なのだろうか。卵を入れるタイミングを変えてチャーハンを作り、ベストなタイミングを検証してみた。

2. 卵を入れるタイミングを変えて検証

検証は、卵の影響を直に見るために、最小限の材料で行った。電子レンジで温めるタイプのレトルトご飯(1パック100g)に対し、サラダ油大さじ1、卵1個分の溶き卵を使った。材料を加えるタイミングの異なる9パターンのチャーハンを作成し、その仕上がりの違いを見た。火力はIHヒーターの最大値にセットし、いずれのパターンでもお米に火が通る時間が2分半となるように統一した。その結果、3つのことが分かった。

卵を先に入れない

実験では、フライパンに溶き卵を先に入れてサラダ油と混ぜ合わせる場合(1)や、ご飯と溶き卵を同時に入れる場合(2)を試した。しかし、いずれも、ご飯をほぐしきる前に卵が固まってしまい、ご飯全体に行き渡らなかった。お米の柔らかさと卵のプルりとした食感の相性自体は悪くないが、お米を卵でコーティングするという目的はかなわず、パラパラとしたチャーハンを目指すには不適であると思われた。卵を先に入れてうまくやる方法は、手早い操作に慣れた料理上級者向けであると感じた。

ご飯を先に入れない

次に、卵が固まる前にご飯をほぐれていれば良いと考えて、ご飯を先に入れて30〜90秒ほど炒めてから卵を加える場合を試した(3〜5)。ところが、ご飯はほぐれるどころか、炒めるに従ってまとまりを持つようになってしまった。卵は、お米一粒一粒というよりは、ご飯のかたまりを覆うような仕上がりになり、ご飯のかたまりごとに分かれているようなチャーハンとなった。これもパラパラチャーハンとは言い難かった。

サラダ油の使い方を変える

炒める前にご飯と卵が分離しているとうまくいかなかったことから、炒める前に材料を混ぜ合わせる試みを行った。同時に、これまで当たり前のようにフライパンにひいていたサラダ油も、大事な材料の一部と考えた。そこで、炒める前に、溶き卵とご飯を混ぜておく場合(6)、ご飯と油を混ぜておく場合(7)、溶き卵と油を混ぜておく場合(8)、溶き卵・ご飯・油を混ぜておく場合(9)を試した。
その結果、(9)が最も一粒一粒が独立しており、食感も良いパラパラチャーハンになることがわかった。9パターンの中では、(9)の「溶き卵・ご飯・油を混ぜておいてから、フライパンで2分半炒める」という方法がベストだと言えた。これは他では見たことのない結論だろう。「油をフライパンにひくために利用しない」という固定観念の破壊が、新たな発見に繋がった。なお、調味料や具材を加えるのは、卵がお米の表面で固まってからが良いと思われる。

3. 結果を科学的に説明すると?

最後に、実験結果を科学的に考えてみたい。

チャーハンのメインの材料であるお米の主成分はデンプンである。デンプンは、温度が55度程度を超えてくるに従い、粘度が増して粘り気が出てくる。粘度の増加は95度がピークであるが、フライパンで炒める場合、少なくともフライパン表面に接している部分のお米は95度に達してしまう。お米だけを先に混ぜ合わせるとお米同士がくっついてしまったのは、粘度を増したデンプン同士がくっついたためであろう。パラパラチャーハンを作る最大の課題は、お米を分離させることだと言える。

デンプンは、水となじみやすい性質と油となじみやすい性質があるため、理論的にはデンプン同士の結びつきを切るには水か油があれば良い。チャーハンの場合、水は加熱に伴う蒸発により失われるため、油がその役割を果たしそうであるが、お米のデンプンは、ジャガイモなどの他のデンプンと比べても特に油を吸着しやすいため、過度の油を直にお米に触れさせると、お米を油っぽくしてしまうことにつながる。
そこで別の方法でお米一粒一粒を独立させることを考えた時に役立ちそうなのが、卵の中に含まれるタンパク質だ。卵のタンパク質は黄身と白身で固まりやすさが異なるが、一番固まりにくいものでも70度を超えれば固まってくる。卵のタンパク質で米粒を包むことができれば、デンプンの粘度が上がりきる前に米粒の表面を固めることができるのだ。

溶き卵をご飯とあらかじめ混ぜておく方法は、こうした理由から理にかなっており、これまでもパラパラチャーハンのコツとして他の場所でも紹介されてきた。ただし、溶き卵とご飯を混ぜる方法は、パラパラにはなるが表面がボソボソするという問題点があった。筆者も、条件(6)で実験をし、ボソボソとした表面とお米の柔らかいテクスチャーの相性が悪いことを確認した。これは、お米の表面で卵のタンパク質が不均一に固まってしまうためだと思われる。

卵を均一に固まらせるためには、溶き卵の時点で卵内部の成分をもっと均一にしておく必要がある。そこで役立つのが油であった。卵にはレチシンと呼ばれる、水と油を混ぜ合わせる(乳化させる)働きのある成分が含まれている。卵の約76%は水分であるため、卵と油を混ぜ合わせると(乳化させると)、レチシンが卵の水分と油を均一になじませる。タンパク質には水になじみやすいもの同士、なじみにくい同士でそれぞれ集まりやすい性質があるが、水と油がなじんだ液体の中であれば、そうしたタンパク質の偏りも緩和され、溶き卵溶液全体にタンパク質が均一に混ざり合いやすくなると思われる。この状態で固まれば、溶き卵だけの時よりもタンパク質の不均一さが改善されるだろう。また、お米にとっても、油だけの時より吸着する油の割合が下がるため、お米の油っぽさも抑えられる。溶き卵と油を混ぜ合わせることで、溶き卵だけの時よりもボソボソ感を改善しつつ、一粒一粒が分離したチャーハンを作れたのには、こうした背景があるのではないかと考えられた。

結論

自宅でパラパラチャーハンを作るためには、「溶き卵と油とご飯を混ぜ合わせておく」という方法が最も効果的であることが分かった。溶き卵と油をしっかり乳化させてからご飯を混ぜ合わせ、温めたフライパンで直に炒めると、2分半後には一粒一粒が独立したチャーハンができあがる。

投稿者プロフィール

サイエンスライター
大嶋絵理奈(おおしまえりな)
2015年、東京大学大学院総合文化研究科修士課程ならびに科学技術インタープリター養成プログラム修了。修了後は、味覚センサーを中心とする食品分析企業にてオウンドメディア『味博士の研究所』初代編集長を務め、月間150万PVを達成。現在は、製菓企業にてお菓子と科学のウェブメディア『OPENLAB Review』編集長を務めるほか、『科学雑誌Newton』を中心とするサイエンス記事の執筆を行っている。専門は分子生物学で、他には食品化学や認知心理学分野を得意とする。

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