1. 本マグロとは?
本マグロとは、生鮮魚介類として流通しているクロマグロの一般名である。クロマグロはマグロの中でも特に大きく、全長4m程度、体重400~500kg程度に達することもある。日本では刺身や寿司ネタとして古くから食べられているが、近年は乱獲などに伴い個体数が減少してしまい、天然ものは絶滅危惧種に指定されている。そのため、クロマグロの養殖に注目が集まっている(※1)。
なぜ本マグロと呼ぶのか?
消費者庁の「魚介類の名称ガイドライン」によれば(※2)、魚介類の名称は馴染みのない標準和名の表示によって消費者が混乱することがないようにする必要があるとし、例えば、キアンコウを「アンコウ」と表示することを認めている。クロマグロも同様で、消費者に販売するときには、「本マグロ」と表示することができる。なお、クロマグロ以外を本マグロと表示することはできない。
本マグロの旬と主な産地
本マグロは通年流通しているが、旬は最も脂がのり、トロが美味しくなる「冬頃(12~2月頃)」といわれている。実際、東京都中央卸売市場の「市場統計情報(月報・年報)」でも12月頃に最も多くマグロが取引されている(※3)。また、北は北海道から南は沖縄県まで全国的にクロマグロを漁獲しているが、特に「大間の本マグロ」で有名な青森県での漁獲量が多くなっている(※4)。
2. 本マグロの特徴と魅力を紹介!
本マグロ(クロマグロ)の最大の魅力は、その味わいである。特に本マグロの大トロは舌の上で溶けてしまいそうなほど脂が乗っており、うま味と甘みが非常に強い。また、本マグロはたんぱく質やDHA・EPAなどの栄養素も豊富。そんな本マグロの特徴や魅力についても確認しておこう。
その1.脂の乗りがよくてうま味が強い
本マグロは、肉質が非常にまろやかでコクがあり、うま味が強いことが特徴。また、一般的には天然ものよりも、養殖もののほうが脂の乗りがいいといわれている。部位によって味わいは異なるが、赤身はマグロ本来のうま味、中トロはうま味と甘み、大トロは強い甘みととろけるような食感を楽しむことができる。天然ものの漁獲量の減少から、近年は養殖ものが多く出回るようになっている。
その2.たんぱく質や不飽和脂肪酸が多い
本マグロは脂質が少ないためヘルシーであるにもかかわらず、たんぱく質は非常に多く含んでいる。また、青魚に多く含まれているEPA・DHAなどの不飽和脂肪酸も豊富だ(※5)。EPAやDHAなどは体内で合成することができないため、必須脂肪酸と呼ばれており食品から補う必要がある(※6)。このように本マグロは美味しいだけでなく、栄養面でも優れている魚となっている。
その3.天然ものは高値で取り引きされる
本マグロはその味のよさから高級魚の一種とされており、一般的には高値で取り引きされている。特に正月に行われる初競りは祝儀価格で取り引きされるため、通常よりも高い値段が付くことも珍しくない。中でも2019年の初競りでは、大間産クロマグロ1匹に過去最高額の3億3360万円の値段が付いた(※7)。落札したのは「すしざんまい」を経営している株式会社喜代村であった。
3. 本マグロ基本的な栄養価
文部科学省の「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」には(※5)、「天然」と「養殖」の本マグロ(クロマグロ)の栄養価が収録されている。また、脂身・赤身などの部位、生・水に・蒸し・焼きなどの調理方法別に栄養価を掲載している。ここでは「養殖・赤身・生」の栄養価を確認しよう。
くろまぐろ(養殖・赤身・生)100gあたりの栄養価
- エネルギー:153kcal
- たんぱく質:24.8g
- 脂質:7.6g
- 炭水化物:0.3g
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸:1.73g
・一価不飽和脂肪酸:2.53g
・多価不飽和脂肪酸:2.15g - ビタミン
・ビタミンA(レチノール):840μg
・ビタミンD:4.0μg
・ビタミンE:1.5mg
・ビタミンK:0μg
・ビタミンB1:0.16mg
・ビタミンB2:0.05mg
・ナイアシン:15mg
・ビタミンB6:0.51mg
・ビタミンB12:2.5μg
・葉酸:10μg
・パントテン酸:0.27mg
・ビオチン:1.1μg
・ビタミンC:2mg - ミネラル
・ナトリウム:28mg
・カリウム:430mg
・カルシウム:3mg
・マグネシウム:38mg
・リン:270mg
・鉄:0.8mg
・亜鉛:0.5mg
・銅:0.02mg
・マンガン:0mg
・ヨウ素:31μg
・セレン:79μg
・クロム:0μg
・モリブデン:0μg - 食物繊維:0g
4. 本マグロの美味しい食べ方3選
新鮮な本マグロは刺身や寿司にするのがおすすめだが、ほかにも丼物・サラダ・ソテー・天ぷら・煮付けなどにしても美味しく食べられる。そこで本マグロの美味しい食べ方をいくつか紹介しておこう。
食べ方1.マグロの漬け丼
新鮮な本マグロを手に入れたら、調味料に漬け込んで「漬け丼」にするのもおすすめ。作り方は簡単で、本マグロを食べやすい大きさにカットしたら、醤油・みりん・ごま油を合わせた調味料に20分程度漬け込む。それからご飯をどんぶりに盛り、刻みのりを乗せてから漬けマグロをトッピング。最後に薬味の小ネギやみょうがをのせれば完成だ。美味しいのでご飯がどんどん進む一品である。
食べ方2.マグロのカルパッチョ
脂が乗っていない赤身は「カルパッチョ」にするとよい。オリーブオイルなどを使うため、濃厚な味わいを楽しむことができる。こちらも作り方は簡単で、本マグロをカットしたらお皿に盛り付ける。その後、オリーブオイル・砂糖・塩・醤油・にんにくを合わせた調味料をかける。最後に水菜やベビーリーフのような葉物野菜をトッピングすれば、あっという間にオシャレなおかずが完成する。
食べ方3.マグロのなめろう
筋が多い部分や血合いの部分、刺身の切れ端などは「なめろう」にして美味しく食べよう。こちらも作り方は簡単で、まな板の上で余った本マグロを包丁でたたく。それからボウルに本マグロ・醤油・味噌を入れて混ぜる。最後に小ネギをトッピングすれば完成だ。ご飯のおかずにも、お酒のおつまみにも適しているので、最後まで本マグロを美味しく調理しよう。
結論
本マグロは「クロマグロ」のことであり、個体数の減少に伴い天然ものは入手しにくくなっている。しかし、近年は養殖技術が向上しているため、美味しい養殖ものの本マグロが手ごろな価格で入手できるようになっている。本マグロは刺身や寿司で食べることが多いが、丼物・揚げ物・焼き物などにしても美味しい。さまざまな調理方法で本マグロの味や食感を楽しむようにしよう。
【参考文献】
- ※1:全国海水養魚協会「クロマグロ(黒鮪)」
https://www.yoshoku.or.jp/gyosyu/kuromaguro/ - ※2:消費者庁「魚介類の名称のガイドライン」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/151224_qa16-betu8.pdf - ※3:東京都中央卸売市場「市場統計情報(月報・年報)」
https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/geppo/ - ※4:水産庁「太平洋クロマグロの漁獲状況について~令和3年4月26日更新~」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/maguro_gyogyou/gyokakujoukyou.html - ※5:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/ - ※6:厚生労働省e-ヘルスネット「不飽和脂肪酸」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-031.html - ※7:日本経済新聞「マグロ初競り 史上最高の3億3360万円 豊洲」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39673070V00C19A1MM0000/
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