1. 傘代わりになるほど巨大なふき「秋田ふき」

秋田ふきの最大の特徴、それはその特大サイズにある。巨大なサイズのふきは、通常市場で見かけることは少ない。秋田ふきの特徴に迫ってみよう。
独特の形状ゆえにうまれた言い伝えもまたご愛嬌
茎の長さが2mになることも珍しくない秋田ふきは、葉の大きさも直径が1mになることもあるという。傘を思い起こさせるこの秋田ふき、実際傘になりうる大きさである。秋田音頭にも、秋田にはこのふきがあるから傘はいらないという歌詞が挿入されているほどである。このサイズのふき、かつては東北北部や北海道で自生していたというが、現在は栽培されたものが主流である。北海道には、この大きなふきの葉の下に妖精が住んでいるという言い伝えも残る。また、江戸時代に秋田藩主が江戸において傘のような故郷のふきを諸侯に自慢したところ、誰も信じてくれなかったために藩主の佐竹氏が自国に早飛脚を立てて江戸に届けさせたという伝説もある。
食べるだけじゃない?秋田に根付く秋田ふき
秋田ふきは、食用としてだけではなく別の用途でも使用される。それは、一子相伝といわれる秋田の工芸品「秋田蕗摺」である。
1861年に考案されたこの工芸品は、巨大な秋田ふきをふすまや屏風に摺る作品で、秋田ふきの美々しい緑色や姿かたちを気品ある形で芸術品にしている。現在は5代目が継いでいるこの工芸品は、宮越家という家系に伝わる秘術なのである。また、秋田では秋田ふきが漆器のデザインになるなど、まさに郷土のシンボルとして大事にされてきた歴史がある。
1861年に考案されたこの工芸品は、巨大な秋田ふきをふすまや屏風に摺る作品で、秋田ふきの美々しい緑色や姿かたちを気品ある形で芸術品にしている。現在は5代目が継いでいるこの工芸品は、宮越家という家系に伝わる秘術なのである。また、秋田では秋田ふきが漆器のデザインになるなど、まさに郷土のシンボルとして大事にされてきた歴史がある。
2. 生食には向かない?秋田ふきの特徴

その大きさは、一度目にすると忘れられないインパクトがある秋田ふき。それでは、実際の味はどのようなものなのだろうか。秋田ふきは、どこで食すことが可能なのかみてみよう。
夏目漱石も天皇陛下も召し上がった秋田ふきの砂糖漬け
秋田ふきの最もよく知られた食べ方が、砂糖漬けであろう。1883年創業の秋田の老舗「菓子舗榮太楼」の看板商品が、この秋田ふきの砂糖漬けなのである。同社のサイトによれば、1908年(明治41年)に当時皇太子であった大正天皇に秋田ふきの砂糖漬けを献上したという記録が残る。また、甘党であった文豪夏目漱石も、「秋田蕗の砂糖漬けを食って細君に叱られる」と詩に詠むほど、秋田ふきの砂糖けを愛していたという。
秋田ふきの旬や食べ方
秋田ふきは、言い伝えによれば6月頃に秋田藩の藩主の膳にのせられていたという記録が残る。現在も収穫時期は6〜7月とされており、北国といえども春の風物詩というには少しずれている感は否めない。秋田ふきは、生食にするとその大きさのためか硬い食感がある。そのため、青果として目にすることはあまり多くない。前述したように、砂糖漬けにされたり、漬物や佃煮などに加工されたりすることが多い。また、前述した工芸品に代表されるように、その非現実的なまでの美しい緑色はパウダーに加工されて、着色料として利用されることもある。実際、秋田には秋田ふきのパウダーを使用した饅頭も販売されている。
たまさかに青果として秋田ふきが販売されているときには、乾燥しすぎてはいないか、変色はしていないかなど、新鮮度を確認してから購入することをおすすめする。また、茎が太すぎるものはやはり硬い可能性が高いため、直径が3cmくらいまでのものがベストである。
たまさかに青果として秋田ふきが販売されているときには、乾燥しすぎてはいないか、変色はしていないかなど、新鮮度を確認してから購入することをおすすめする。また、茎が太すぎるものはやはり硬い可能性が高いため、直径が3cmくらいまでのものがベストである。
3. ふきはアク抜きを怠るべからず

ふきは、一般的にいかなる品種といえどもアクが強い食材である。そのため、いかにアク抜きに手を抜かないかが美味しく食べるコツである。秋田ふきも同様であり、その巨大さからついつい簡略化したい思いに駆られるが、アク抜きだけはしっかりと行う必要がある。下茹でも茎が太いものならば1時間弱かけて行い、外側の筋の部分は惜しまずむいて破棄するほうが柔らかいふきを堪能できる。
伝統に忠実に柔らかく処理したふきを砂糖漬けにするのもよし、王道で和風の味つけにするもよし、いずれにしてもさまざまな調味料と相性がよいふきの特有性ゆえ、バラエティーに富んだ味つけを楽しむことが可能である。
伝統に忠実に柔らかく処理したふきを砂糖漬けにするのもよし、王道で和風の味つけにするもよし、いずれにしてもさまざまな調味料と相性がよいふきの特有性ゆえ、バラエティーに富んだ味つけを楽しむことが可能である。
結論
秋田の専売特許といっても過言ではない秋田ふき。かつての秋田藩主が、諸侯たちに自慢したほどの姿かたち・味を誇る。食材としてだけではなく、工芸品にも大きな影響与えてきた秋田ふき。貴人や文豪にも愛された歴史や伝統工芸にも思いを馳せつつ、秋田の風土と密接に結びつく食材として、秋田ふきを楽しみたいものである。