1. 「する」のはイヤだ。「あたり」たい!

実のところ「するめ」と「あたりめ」は全く同じもの。するめを細かく裂いたものをあたりめと呼ぶわけではなく、原材料や製法が違うわけでもない。するめの「する」がお金をすり減らす、使い果たすという意味の「する」を連想させるため、それを嫌って逆の意味を持つ「当たり」という言葉をあてた、というわけ。縁起のよくない言葉(忌み言葉)を避けて縁起のよい言葉に言い換える、日本人ならではの験(げん)担ぎなのだ。
2. まだまだある、縁起を担いだ言い換え

ゴマや山芋を擂る「すり鉢」や「すりこぎ」を「あたり鉢」「あたり棒」と呼ぶのも同じ理由。その他にも、「切る」「刺す」という言葉を嫌って言い換えた「切り身・刺身→お造り」、「割る」を避けた「鏡割り→鏡開き」、「不遇」から濁点を取って「福」にした「河豚(ふぐ)→ふく」、「梨」を「ありの実」と呼ぶなど、日本人は験を担ぐのが大好きで、それが食べ物の名前にまで及んでいることがわかる。
結論
スポーツの試合や習い事の発表会、テスト、受験...。子供の頑張り時に「カツ(勝つ)丼」や「伊予柑(いい予感)」、「ウインナー(winner)」といった験担ぎフードで励ましつつ、日本語や、日本人の言語感覚の面白さについて話してみるのも、いいコミュニケーションになるかもしれない。