1. お燗の温度によって味わいが変化する
燗酒と一口に言っても、温度によって味わいも香りも変わってくる。これが日本酒の奥深さでもある。その日の気分や料理に合わせて、おいしい温度を探ってみよう。
- 日向燗(ひなたかん)30度
ほぼ常温に近い状態。温度の高さを感じない程度、ほんのり香りが引き立つ。 - 人肌燗(ひとはだかん)35度
触ると温かいと感じる程度、米や麹の良い香りが立ち味に膨らみがある。 - ぬる燗 40度
熱いと感じない程度、香りが良く立つ。 - 上燗(じょうかん)45度
注いだ時に湯気が出る程度。引き締まった香りを感じる。 - 熱燗(あつかん)50度
徳利から湯気が出て、触ると熱く感じる。キレの良い辛口になり香りもシャープになる。 - 飛びきり燗(とびきりかん)55度
徳利を持つと熱い。よりシャープな香りで辛みが増す。
2. 燗酒は「お湯は熱く、時間は短く」が鉄則
家で燗酒を作るには、湯煎又は電子レンジを使うのが一般的だが、ちょっとした工夫とこだわりで、劇的に味が変わることをお伝えしたい。
■湯煎で作るポイント
- 徳利に注ぐ分量は九分目
目いっぱい注ぐと吹きこぼれだけではなく、熱の伝わり方にムラが出て味が均一にならない。 - 徳利の口をラップで塞ぐ
口を塞がずにお燗をすると、温められて膨張したお酒の香りが逃げてしまい風味が損なわれる。 - 鍋に張るお湯は徳利が半分浸かる程度
鍋に張るお湯の量が多すぎても、少なすぎても熱の伝わり方にムラができたり、お燗の時間が必要以上に長くかかり、風味を損なう。 - お湯は熱く一定温度で時間は短く
おいしく仕上げるコツは、高温のお湯に徳利を入れ短時間で温める。ぬるめの燗酒でも、熱めの燗酒でも同様。十分にお湯を沸騰させて火を止めてから徳利を入れる。目安は2~3分程度で上燗(45度前後)になる。
※ぬる燗にしたいからと40度のお湯で燗をすると10分以上時間がかかってしまい風味もアルコール分も飛んでしまう。
■レンジで作るポイント
- 湯煎と同様に、お酒は九分目まで注ぎ、ラップで口を塞ぐ
- こまめに温度を確認する。
温度の目安は人肌燗(35度)の場合、お酒1合(180ml)で約40秒(500w電子レンジ使用時)。電子レンジはお酒の温度にムラができやすいので、20秒ほど温めてから一度取り出し、軽く徳利を振って温度を均一にする。
3. お酒によって違う、おいしさの適正温度
日本酒の香りや風味を損なわない方法で燗をすることはもちろんだが、おいしく飲むもう一つのポイントは、それぞれのお酒の種類に適した飲用温度で飲むことだ。基本的に燗酒には、味もコクもしっかりとしている純米酒や普通酒が向いている。大吟醸酒や吟醸酒はぬる燗以上に温めると、持ち味である爽やかな甘みや、豊潤な香りが台無しになってしまうため、燗をする際には注意が必要だ。
結論
日本酒はお酒の性質や温度によって、様々な味わいを楽しめる。ポイントを押さえて丁寧に温めれば、ふくよかな香り高い燗酒を楽しむことができる。燗酒は苦手という人こそ、ぜひ一度試してほしい。