1. 練馬大根とは、どのような歴史で栽培されてきた野菜か?
練馬大根は、名前の通り東京都練馬区の特産品だ。栽培は江戸時代に始まった。練馬周辺の土壌は関東ローム層であり、水はけがよく、かつしみ込みやすい。大根の栽培にはうってつけの環境でもあった。練馬大根はほかの大根に比べて長く、1mを超すものもある。形は細いが、中央が膨れている。この形のせいで、畑から抜くには強い力が必要だ。したがって、多量の練馬大根を栽培すると収穫が大変だ。練馬大根は盛んに栽培されていたが、何度も危機に見舞われた。干ばつや病気などの自然の脅威もあるが、食生活の変化などの人的な要因もある。これらが重なり、また先述のように栽培に手間がかかることなどもあり、練馬大根の栽培量は徐々に減少していった。そしてほとんど姿が見られなくなり、幻の大根と呼ばれるようになってしまったのだ。平成に入ってから、練馬大根の復活に向けた取り組みが進められているが、現在でも生産量はまだ多くなく、練馬大根が貴重な作物であること変わりはない。
2. 練馬大根は、品種により美味しい食べ方が違う
練馬大根には厳密にはいくつか品種があり、代表的なものは2つだ。それぞれ向いている料理が違う。
・練馬尻細大根
練馬尻細大根は、たくあん向きの品種だ。全体の長さが長い品種で、先が尖っている。重要な特徴は、水分が少ない、かつ乾きやすいことだ。たくあんを作る際には、まず大根を干してから漬ける必要がある。時代劇などで、民家の軒先に吊り干されている大根を見たことがあるかもしれない。干す工程は重要で、失敗すると美味しいたくあんを作れない。干し大根を作るにあたり、練馬尻細大根の乾きやすい性質はうってつけだといえる。時期や環境によって、漬ける際の塩やぬかの配合、漬け方などが細かく変えられる。そのような努力があって、美味しいたくあんが仕上がるのだ。現在手に入る練馬大根は、この尻細大根であることが多いようだ。
・練馬秋づまり大根
もうひとつの品種は練馬秋づまり大根と呼ばれる。こちらは尻細大根と比べると太く、一般的な大根と似たような見ためをしている。また、実が柔らかいのが特徴だ。甘みもあることから、煮物に向いているといわれる。とくに、じっくり煮込んだおでんなどが美味しい。ほかに、ぬか漬けなどにも使われるようだ。
3. 練馬大根を普及するための取り組みとは
練馬大根は現在でも生産量は決して多くない。だが、広めようとさまざまな努力が行われている。取り組みの例をいくつか見てみよう。
・引っこ抜き競技大会
先述のように、練馬大根を畑から抜くのには力がいる。栽培の難しさのひとつだが、これを逆手にとり競技として楽しむ会が開催されている。尻細大根を抜く速さや量を競い、練馬大根を身近に感じてもらう会だ。
・給食への使用
練馬大根を食事に取り入れてもらうための取り組みも行われている。代表的なのは、学校の給食への導入だ。通常買える量はまだ少ないものの、生徒たちに練馬大根の味に親しんでもらえる機会だ。
・加工品の製造、販売
販売するための規格から外れたなどの練馬大根を使い、さまざまな加工品が製造されている。ドレッシングをはじめ、練馬大根を混ぜ込んだパンやお菓子など、種類は幅広い。練馬大根そのものを手に入れられなくても、加工品なら比較的入手しやすいはずだ。取り組みの甲斐あって、練馬大根の生産量は年々増えているようだ。
結論
練馬大根は土壌のよさもあり盛んに栽培されていたが、自然災害や人的要因により数を減らし、希少種となってしまった。とはいえ、たくあんをはじめとした加工品が有名でもある。現在では数を増やすための取り組みが行われており、生産量も増えてきている。練馬大根がより多くの人々に親しまれることを願いたい。
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