1. シラスウナギはウナギの稚魚
ウナギの子供であるシラスウナギは、しらす干しで知られるシラスとは別物だ。ウナギは万葉の昔から日本国民に親しまれている食べ物で、養殖の歴史も長期にわたる。しかしウナギの生活には謎が多く、生態は完全に解明されていない。人工でふ化したニホンウナギの稚魚であるシラスウナギ。身体の特徴は透明で約6cmと、つまようじほどの長さで重さは約0.2gだ。
国内採捕量には年変動があるため、不足分が輸入で補われている。シラスウナギの採捕方法は、12月から翌年の4月にかけての期間、とくに新月の夜や河川・海岸線で網ですくったり、河川に仕掛ける小型の定置網で採捕したりする。多くの魚は資源保護の関係で小型魚の採捕が禁止されているが、ウナギも同じだ。
ただしシラスウナギは、ウナギ養殖の稚魚として欠かせないもので、都府県知事が採捕許可を出している。許可は自県の地域や養鰻業者数で、年変動が大きい来遊量や来遊時期を勘案して採捕期間・場所・漁法を厳しく制限している。ごく少量の水があれば持ち運びができるシラスウナギ。採捕者は全国で2万人を超えており、1人が1日に採捕できる量は数gと極めて少なく、管理することが非常に困難である。
2. シラスウナギはどこで獲れる?
ここではシラスウナギが採捕できる地域を紹介しよう。日本でシラスウナギの採捕を行っている都府県は徳島・高知・香川・愛媛・福岡・佐賀・大分・宮崎・鹿児島・静岡など、全国で24都府県だ。マリアナ海溝で産卵した卵から孵化したシラスウナギが川を遡上する時に採捕する。
来遊状況について解説すると、採捕量は平成26(2014)年の漁期はかなり良好だったが、昭和50年代の後半以降に低水準で減少基調となった。平成22~24(2010~2012)年にかけての漁期は3期連続で採捕が不漁となり、池入の数量が大きく減った。その後はウナギ養殖業者向けの支援や保護対策や資源管理をウナギ緊急対策として定めたという。
平成26(2014)年の漁期は採捕がやや良好であったが、ニホンウナギの資源が回復したと考えるのではなく、継続して資源管理と生息環境の改善に対して取り組みを進めることが大切だと考えられていた。先述したようにシラスウナギの国内での採捕量は年変動があるため、不足分が輸入で補われている。
3. 高価なシラスウナギを狙った密漁も
最後にシラスウナギの流通の実情について解説しよう。採捕量が減っているシラスウナギは高い時には1kgあたり100万円位の価格で取引されるほど高価だ。それを狙った密漁も増えている。基本的に採捕されたシラスウナギは採捕者から集荷業者に渡り、流通業者を経由し、養殖業者に供給される多段階流通が一般的だ。
先述したように採捕者1人で1日当たり数gのみ採捕できるシラスウナギ。流通業者が全国から集荷して養鰻業者が必要なkg単位にまとめ、安定的に供給する役割を担うのだ。しかし都府県等の聞き取りでは、流通の実情として後述するような原因が指摘されている。
ひとつは採捕者が自分の採捕数量や優良な採捕場所を他人に知られたくないうえ、大漁のねたみを回避するために報告しないケースがあるという。また採捕者が指定以外の出荷先へ、より高い価格で販売し、報告しないケースもあるようだ。さらに無許可の採捕、いわゆる密漁も行われているという。
結論
絶滅が危惧されているニホンウナギの稚魚であるシラスウナギについて解説した。 シラスウナギはどこで誰が採捕しようとも、それが誰に販売されようとも、最終的にはすべて養鰻業者の養殖池に入るという。いずれにしろ美味しいウナギを口にできるよう、順調に育ってもらいたいものだ。
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