【黒ミル貝】こそ本ミル貝！白ミル貝との違いや美味しい食べ方とは？

ミル貝は、水管に「ミル」という海藻が付き、そのまま水管をしまった姿がまるでミルを喰っているように見えることから「ミルクイ」と名付けられ、ミル貝と呼ばれるようになったという。

それでは黒ミル貝とはどのような貝かご存知だろうか。ミル貝といえば、貝殻からはみ出る白い身（水管）が特徴的な白ミル貝を思い浮かべるかもしれない。写真も白ミル貝を写したものだ。しかし、実は白ミル貝は「ナミ貝」というミル貝によく似た別の貝である。本ミル貝は、黒ミル貝のことを指すのだ。

黒ミル貝は、その名の通り貝殻が黒く、身は貝殻からはみ出しているものの白ミル貝と比べると小ぶりで歩留まりが悪い。つまり可食部が少ないのだ。さらに漁獲量が少ないこともあって、現在では希少で高価な貝である。国内においては東京湾や三河湾、瀬戸内海などにおいて、潜水によって漁獲される。旬は春頃である。

栄養面については、貝の中では高たんぱく質なほうで、ビタミンB12も多く含む。ほかにカルシウムやマグネシウム、タウリンやベタインを含んでいる（※1）。

高級食材の黒ミル貝だが、スシローのような回転寿司屋で食べたことがある人もいるかもしれない。ミル貝としか表記のない場合は白ミル貝を使っているのかもしれないし、安価な中国産や韓国産かもしれない。あるいは、黒ミル貝はカナダからも輸入されており、水産加工会社の企業努力によって安定した品質で流通するようになったからとも考えられる。

いずれにせよ、安く食べられる黒ミル貝は外国産である可能性がある。それでも大変美味な貝ではあるが、国産の黒ミル貝は味が格別で、高級寿司屋などで扱われるのがほとんどだ。とくに東京湾で獲れる黒ミル貝は一級品といわれるので、その味を確かめたい人は思い切って高級店ののれんをくぐってみてはいかがだろうか。

黒ミル貝を家庭で味わう場合の、美味しい食べ方を紹介する。まず、活きた黒ミル貝を買うときは、黒ミル貝の身に動きがあるかをチェックし、新鮮なものを選ぼう。売り物を指でつつくなどの行為がはばかられる場合、店主に頼んでみてもらうのがいいだろう。黒ミル貝の鮮度について、どうしても磯や貝特有の香りはするものだが、長時間陳列されているなどしてにおいがきつい場合は避けたほうが無難だ。

次に捌き方や調理法だが、まずは殻を開き、身をはずしてむき身にする。刺身にする場合、むき身から水管を切り分けて縦に開き、湯通したら皮をむこう。最後に切り身にすれば刺身の完成だ。また、天ぷらにしても旨い。切り身の水気をよく切り、小麦粉をまぶしたら衣をつけて高温でさっと揚げる。揚げることで身の甘みが増して絶品だ。

ヒモや貝柱、ワタも食べられるが、においや鮮度が気になるなら加熱調理するのがいいだろう。バターとニンニクをフライパンに入れて火をつけ、さっと炒めるだけでバター炒めになる。または、小鍋で水から煮出し、味噌を溶けば味噌汁に。臭みを消しつつ、貝の旨みを存分に味わえるおすすめの調理法だ。

高級食材の国産黒ミル貝はなかなか手に入らないかもしれないが、カナダ産なら通信販売でも手に入る。価格も国産に比べると安い傾向だ。気になったらぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

黒ミル貝は、本ミル貝とも呼ばれ、白ミル貝と比べて希少な高級食材である。コリコリした食感の刺身はもちろん、加熱調理しても貝の旨みが存分に味わえる黒ミル貝。同じ大きさの白ミル貝よりとれる身の量が少ないので、余すところなく堪能したい。旬の春を迎えると水揚げ量も品質も向上するので、ぜひタイミングを逃すことなく食べてみてほしい。

（参考文献）
※1　文部科学省　第2章魚介類（正誤表11反映1222）
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/20/1365343_1-0210r11.pdf