1. 春雨には種類がある?
春雨に種類があることを知っている人は少ない。そもそも春雨は、でんぷんから作った透明な麺である。では、我々が普段食べている春雨は、何のでんぷんを原料に作られているのだろうか。また、どんな種類があるのか概略を見てみよう。
原料が違う2種類の春雨
春雨はもともと中国料理の素材である。6世紀の中国の書物には、当時から緑豆を用いていたことが記録されている。現在でも中国の春雨は緑豆を原料としたものが大半であり、味わいもよいとされている。
一方、日本産の春雨はじゃがいもやさつまいいものでんぷんが使用されている。普通春雨とか日本春雨と呼ばれるこのタイプが、日本の春雨市場のマジョリティである。
2. 春雨の主な栄養素と効能
春雨にははたして栄養があるのだろうか。文部科学省の食品成分データベースを参考に、春雨の栄養を数字で見てみよう。
100gあたりに含まれる栄養成分
茹でた春雨100gあたりの栄養素を表で説明する。普通春雨とともに、緑豆春雨の数字も見てほしい。(※1、2)
・普通春雨(茹で)
- 食物繊維 0.8g
- カルシウム 10mg
- 鉄分 0.1mg
・緑豆春雨(茹で)
- 食物繊維 1.5g
- カルシウム 3mg
- 鉄分 0.1mg
食物繊維
食物繊維は、腸内でその環境を整えて健康に寄与してくれる成分である。排便をスムーズにするという単純な理由だけではなく、血糖値やコレステロール値の上昇を抑制する働きもある。(※3)生活習慣病予防のために非常に有益な成分といえるだろう。(※3)春雨100gあたりの食物繊維量は、普通春雨で0.8g。(※3)決して多い量ではないが、春雨の食べやすさを利用して、上手にメニューに加えたい。
カルシウム
幼少期から積極的な摂取を推奨されているミネラルのひとつ、それがカルシウムである。骨や歯の構成成分であるにとどまらず、筋肉や血液にも重要な役割を果たしている。(※4)
普通春雨100gに含まれるカルシウムの量は10mgである。成人男性1日の推奨摂取量は700〜800mgなので、春雨だけで1日のカルシウム摂取量をまかなうことは難しい。(※4)しかし、日本人のカルシウムの摂取が不足していることを考えれば、春雨を日常的に食べる価値はあるだろう。
鉄分
鉄分もまた、人体の健康維持のために不可欠なミネラルである。鉄分は、血液中の酸素を運搬する働きをするほか、筋肉に酸素を貯蔵するためにも必要な成分である。(※5)成人男性ならば、1日に7〜7.5mgの鉄分を摂取することが推奨されている。普通春雨100gが含む鉄分は0.1mgである。鉄分の不足は貧血などを起こす可能性もあるため、意識して摂取する必要があるだろう。(※5)
3. 春雨のカロリーと炭水化物の量
ダイエットに春雨を用いる人も多いかもしれない。では、春雨のカロリーはどのくらいになるのだろうか。また、ほかの主食となる食材と比較した場合、春雨にはどのくらいのメリットがあるのか。炭水化物やカロリーを数字で見てみよう。
茹でることで100gあたりのカロリーは低く見える
春雨は、乾燥の状態ではカロリーや炭水化物量が高い。しかし、春雨は調理すると水分を吸収して4倍ほどに膨張する性質がある。調理後のカロリーや炭水化物量は、100gあたりで比較すると、乾燥時とは比べ物にならないほど低いのである。その数字を見てみよう。
・普通春雨100gあたりの数字(※1、6)
「乾燥」
- カロリー 346cal
- 炭水化物 86.6g
「茹で」
- カロリー 76kcal
- 炭水化物 19.9g
主食になる食材との比較
茹でた普通春雨100gのカロリーは76kcalである。数字で表してもぴんと来ない方のために、そのほかの主食のカロリーや炭水化物量を表で比較してみよう。
・食品100gあたりのカロリーと炭水化物量(※1、7、8、9)
「普通春雨(茹で)」
- カロリー 76kcal
- 炭水化物 19.9g
「精白米(水稲めし)」
- カロリー 156kcal
- 炭水化物 371.g
「食パン」
- カロリー 248kcal
- 炭水化物 46.4g
「うどん(茹で)」
- カロリー 95kcal
- 炭水化物 21.6g
100gあたりの数字で見れば、春雨のカロリーや炭水化物は、ほかに比べて低いといえる。ただし、食べる際は、調理法やともに食べる食材のカロリーなども考慮するようにしよう。
4. 春雨はダイエットに効果的?
カロリーが低いことでは突出している春雨。その春雨はダイエットに活用できるのだろうか。もちろん、純粋に主食の代替として春雨を用いれば、おのずとカロリーの数値は低下する。一方で、GI値(グリセミックインデックス)に注目しても、春雨はダイエット向きの食材といえるのである。その理由を見てみよう。
GI値(グリセミックインデックス)
近年よく耳にするGI値(グリセミックインデックス)とはなんだろうか。GI値は、その食品が食後にどの程度血糖値を上昇させるか、を数値化したものである。(※10)糖尿病患者において、食後の急激な血糖値上昇は心筋梗塞などの重篤な疾病を誘発する可能性があり、食品のGI値が注目されるようになった。とくに、高血圧や高血糖などメタボリックシンドロームの人は、GI値の低い食品の摂取が推奨されている。(※11)
こうした健康上の理由だけではなく、ダイエットの分野でもGI値が重要視されているのは、食後の血糖値の上昇によってインスリンの分泌が増加し、脂肪が蓄積しやすくなるためである。(※12)
春雨のGI値は低GIとされる55以下の範疇にある。したがって、春雨の摂取は食後の急激な血糖値上昇につながりにくいといえる。
結論
炒めものやスープに活躍してくれる春雨。透明感のある外観とのど越しのよさで、食卓の人気食材である。本来は中国料理の食材であった春雨だが、原材料によっていくつかの種類に分けられる。日本の春雨は、いも類のでんぷんで作られていることが多い。カロリーが低いだけではなく、低GI値の食材としてより注目されるようになった。主食の代替として、さまざまな食品と組み合わせながら、ダイエットに活用するのも一案だろう。
(参考文献)
1.文部科学省「食品成分データベース(いも及びでん粉類/<でん粉・でん粉製品>/(でん粉製品)/はるさめ/普通はるさめ/ゆで)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02062_7
2.文部科学省「食品成分データベース( いも及びでん粉類/<でん粉・でん粉製品>/(でん粉製品)/はるさめ/緑豆はるさめ/ゆで)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02061_7
3.公益財団法人長寿科学振興財団「食物繊維の働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/shokumotsu-seni.html
4.公益財団法人長寿科学振興財団「カルシウムの働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-ca.html
5.公益財団法人長寿科学振興財団「ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-tetsu.html
6.文部科学省「食品成分データベース(いも及びでん粉類/<でん粉・でん粉製品>/(でん粉製品)/はるさめ/普通はるさめ/乾)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02040_7
7.文部科学省「食品成分データベース( 穀類/こめ/[水稲めし]/精白米/うるち米)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=1_01088_7
8.文部科学省「食品成分データベース(穀類/こむぎ/[パン類]/角形食パン/食パン)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=1_01026_7
9.文部科学省「食品成分エータベース(穀類/こむぎ/[うどん・そうめん類]/うどん/ゆで)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=1_01039_7
10.集英社「情報知識imidas2018(グリセミックインデックス)」
11.公益財団法人長寿科学振興財団「メタボリックシンドロームの改善」https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka-yobou/himan.html
12.小学館「日本大百科全書(インスリン)」
1.文部科学省「食品成分データベース(いも及びでん粉類/<でん粉・でん粉製品>/(でん粉製品)/はるさめ/普通はるさめ/ゆで)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02062_7
2.文部科学省「食品成分データベース( いも及びでん粉類/<でん粉・でん粉製品>/(でん粉製品)/はるさめ/緑豆はるさめ/ゆで)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02061_7
3.公益財団法人長寿科学振興財団「食物繊維の働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/shokumotsu-seni.html
4.公益財団法人長寿科学振興財団「カルシウムの働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-ca.html
5.公益財団法人長寿科学振興財団「ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-tetsu.html
6.文部科学省「食品成分データベース(いも及びでん粉類/<でん粉・でん粉製品>/(でん粉製品)/はるさめ/普通はるさめ/乾)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=2_02040_7
7.文部科学省「食品成分データベース( 穀類/こめ/[水稲めし]/精白米/うるち米)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=1_01088_7
8.文部科学省「食品成分データベース(穀類/こむぎ/[パン類]/角形食パン/食パン)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=1_01026_7
9.文部科学省「食品成分エータベース(穀類/こむぎ/[うどん・そうめん類]/うどん/ゆで)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=1_01039_7
10.集英社「情報知識imidas2018(グリセミックインデックス)」
11.公益財団法人長寿科学振興財団「メタボリックシンドロームの改善」https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka-yobou/himan.html
12.小学館「日本大百科全書(インスリン)」
この記事もCheck!