目次
- ※1,8)文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 https://fooddb.mext.go.jp
- (※2)公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会「22. 魚類缶詰に豊富なEPAとDHAとは何ですか?」 https://www.jca-can.or.jp/useful/qa/1064
- (※3~6)公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット」 https://www.tyojyu.or.jp
- (※7)厚生労働省「e-ヘルスネット」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp
1. アジの栄養素と健康への効果

魚は栄養素が豊富に含まれているイメージがある。実際、アジにはさまざまな栄養素が含まれている。ここでは、アジに含まれている栄養素の中でとくに注目してほしい栄養素について紹介する。
EPA
EPAは青魚に多く含まれる栄養素として有名だ(※1)。EPAは略称で、正式には「エイコサペンタエン酸」と呼ばれる。EPAは脂肪酸の1つで、n-3系多価不飽和脂肪酸に分類される。EPAは血液をサラサラにしてくれる働きがあり、血栓を予防する働きを持つ。また、血中コレステロールを減らす働きもあるとされている(※2)。
DHA
DHAもEPAと同じく、青魚に多く含まれる栄養素だ(※1)。DHAは略称で、正式には「ドコサヘキサエン酸」と呼ばれる。EPAと同様にDHAも脂肪酸の1つで、n-3系多価不飽和脂肪酸に分類される(※2)。しかし、その働きはEPAとは異なる。DHAは脳や神経伝達に関係している栄養素で、摂取することで脳の働きがよくなるとされている。また、抗アレルギー作用といった生理作用もあるとされている(※2)。
カルシウム
カルシウムといえば牛乳などの乳製品のイメージが強いが、実はアジにも多く含まれている(※1)。カルシウムのメインの働きといえば骨や歯の構成要素となることだ。カルシウムが不足すると骨や歯が上手に構成されず、弱くなってしまう(※3)。骨や歯の形成に関係するだけでなく、カルシウムは筋肉の収縮や血液凝固にも関係しているため不足しないように注意が必要な栄養素だ(※3)。
たんぱく質
当たり前のようだが、アジにはたんぱく質も多く含まれている(※1)。小・中学校でも身体を構成する栄養素として習う、有名な栄養素だ。筋肉や臓器を構成する働きのほかに、酵素やホルモンとして身体の調整を行なったり、免疫に関係したりといった働きも担っている(※4)。
ビタミン類
ビタミン類と一口にいっても、その種類は多岐にわたる。アジにもさまざまなビタミン類が含まれているが、特筆すべきはビタミンB群だ(※1)。ビタミンB群はビタミンB1 やビタミンB6といった栄養素の総称だが、それぞれ異なる働きを持っている。たとえば、ビタミンB1は糖質のエネルギー代謝に関係しており、不足するとエネルギーが生成されず疲労感を感じやすくなってしまう(※5)。
マグネシウム
アジにはマグネシウムも含まれている(※1)。カルシウムに比べてマイナーな印象を持たれるマグネシウムだが、実はその働きは多岐にわたる。エネルギー産生や栄養素の合成、神経伝達、筋収縮など体内のさまざまな場所でいろいろな働きをしている(※6)。カルシウムと同じく積極的に摂りたい栄養素の1つだ。
アミノ酸
アミノ酸はたんぱく質の構成要素で、全部で20種類ある。なかには体内で合成されるものもあるが、9種類は体内で合成できないため食品から摂取する必要がある(※7)。アミノ酸はバランスよく摂るのがポイントだが、実はアジにはすべてのアミノ酸が含まれている(※1)。
2. アジの種類別の栄養成分

アジにはさまざまな種類がある。そこで気になってくるのが、アジの種類によって含まれる栄養成分が異なるかどうかだ。ここでは、食べる頻度の多い真アジと、真アジによく似ている丸アジの栄養価を紹介する。
真アジの栄養価
真アジ(100gあたり)に含まれる栄養素は以下のようになっている(※1)。
エネルギー:112kcal
たんぱく質:19.7g
脂質:4.5g
炭水化物:0.1g
カルシウム:66mg
マグネシウム:34mg
ビタミンD:8.9μg
ビタミンB1:0.13mg
EPA:300mg
DHA:570mg
真アジにはたんぱく質が多く含まれている。一方、真アジは脂がのっているイメージがあるが、意外にも脂質量は少ない。また、EPAとDHAがともに多く含まれているのも特徴の1つだ。
丸アジの栄養価
丸アジ(100gあたり)に含まれる栄養素は以下のようになっている(※1)。
エネルギー:133kcal
たんぱく質:22.1g
脂質:5.6g
炭水化物:0.2g
カルシウム:53mg
マグネシウム:33mg
ビタミンD:19.0μg
ビタミンB1:0.10mg
EPA:350mg
DHA:770mg
丸アジは真アジと比較すると、エネルギーとたんぱく質、脂質が多く含まれている。脂質が多く含まれているため、EPAやDHAの含有量も多くなっている。また、ビタミンDが多く含まれるのも丸アジの特徴だ。一方、カルシウムやビタミンB1は真アジと比べると含有量が少ない。
3. アジ料理の栄養成分

アジに含まれる栄養成分が分かったら、次はアジ料理の栄養成分が気になってくる。アジは使い勝手がよい魚なので、さまざまな料理で食べられるが、ここでは人気のアジ料理の栄養成分に絞って紹介する。
アジの刺身の栄養価
新鮮なアジなら刺身にすることが多いだろう。刺身は魚をそのまま捌いて盛り付けるだけなので、調理による栄養価の変化がない。そのため、アジの刺身は生のアジ(ここでは真アジ100gとする)と同じ栄養価となり、以下のようになる(※1)。
エネルギー:112kcal
たんぱく質:19.7g
脂質:4.5g
炭水化物:0.1g
カルシウム:66mg
マグネシウム:34mg
ビタミンD:8.9μg
ビタミンB1:0.13mg
EPA:300mg
DHA:570mg
調理による栄養素の損失がないため、アジに含まれる栄養素を丸ごと摂取することができる。
焼きアジの栄養価
表面をカリッと焼いたアジは、生のアジとはまた違った美味しさを堪能できる。当然ながら焼くことでアジに含まれる栄養価は変化する。真アジ100gを焼いたときの栄養価は以下のようになっている(※8)。
エネルギー:157kcal
たんぱく質:25.9g
脂質:6.4g
炭水化物:0.1g
カルシウム:100mg
マグネシウム:44mg
ビタミンD:12.0μg
ビタミンB1:0.15mg
EPA:430mg
DHA:820mg
生のアジと比べると全体的に含まれる栄養素量が多い。そのため、焼きアジのほうが栄養価が高いと勘違いしてしまうが、実はアジは焼くと水分が抜けるため重量が軽くなる。そのため、単純に重量で比較した場合、焼きアジのほうが栄養価が高くなる。
アジの開きの栄養価
アジの開きは、開いて干したアジを焼いた料理だ。焼きアジと異なるのは干すという工程が含まれることだ。干すことで栄養価がどのように変わるのか、真アジ100gを開きにしたときの栄養価は以下のようになる(※8)。
エネルギー:194kcal
たんぱく質:24.6g
脂質:12.3g
炭水化物:0.1g
カルシウム:57mg
マグネシウム:38mg
ビタミンD:2.6μg
ビタミンB1:0.12mg
EPA:560mg
DHA:1300mg
アジの開きも焼きアジと同様に水分が抜けて重量が軽くなるため、生のアジと100gあたりで比較すると栄養価が高くなるはずだ。しかし、実際はカルシウムやビタミンDなどの一部の栄養素は生のアジよりも低くなっている。一方で、EPAとDHAは倍以上に増えている。EPAやDHAを効率よく摂るにはアジの開きは最適だといえる。
アジフライの栄養価
シンプルなアジ料理も美味しいが、少し手間をかけて作るアジフライも外せない。アジフライは衣をつけて揚げるため、カロリーは高くなってしまう。アジフライの作り方はさまざまだが、ここでは以下の分量で作った場合の栄養価を紹介する(※8)。ちなみに、ここでは下味に使う塩とこしょうは割愛する。
真アジ 100g
卵 6g
水 25g
小麦粉 12g
パン粉 5g
サラダ油 22g
エネルギー:376kcal
たんぱく質:22.1g
脂質:27.6g
炭水化物:12.3g
カルシウム:73mg
マグネシウム:38mg
ビタミンD:8.9μg
ビタミンB1:0.15mg
EPA:300mg
DHA:575mg
アジフライを作る際に小麦粉やパン粉をつけるため、ほかの料理に比べて炭水化物量が多いのがアジフライの特徴だ。ちなみにアジフライは油で揚げるため、カロリーが高い。ほかのアジ料理に比べて脂質も高くなるため、食べすぎに注意し適量を食べるようにしよう。
4. アジの栄養を逃さない調理法

アジにはさまざまな栄養が含まれているが、調理法によってはせっかくの栄養素が損なわれてしまうことがある。アジに含まれる栄養を逃さずに食べるなら、生で食べるようにしよう。なぜなら、アジに多く含まれるEPAやDHAは加熱すると流れ出てしまうからだ。新鮮なアジなら刺身やカルパッチョにして食べるのがおすすめだ。どうしても加熱しなくてはならないなら、汁物の具にしよう。EPAやDHAが溶けだした汁ごと食べられるため、アジに含まれる栄養を逃さずに摂ることができる。また、栄養たっぷりのアジを食べたいなら旬を狙うとよい。アジは6~8月に旬を迎えるが、その時期のアジは脂がたっぷりとのっている。脂が多いアジにはEPAやDHAも多く含まれているため、より効率よく栄養を摂ることができる。
結論
アジは青魚の1つなので、EPAやDHAといったn-3系多価不飽和脂肪酸が多く含まれている。また、たんぱく質やカルシウムなどさまざまな栄養素が多く含まれているため、アジを食べれば一度にさまざまな栄養素を摂ることができる。EPAやDHAは加熱すると溶けだしてしまうため、生で食べられる刺身やカルパッチョにして効率的に摂るようにしよう。
(参考文献)
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