1. 市田柿とは?
長野県特産の干し柿のことを市田柿と呼んでいる。初めて名前を聞いたという人もいるかもしれないが、どのような特徴をもつ柿なのだろうか。
市田柿の産地
市田柿とは長野県の南信州、伊那谷地域の特産品として古くから栽培・加工されている干し柿だ。干し柿にはセミドライタイプとドライタイプに分けられるが、ドライタイプの市田柿は味に定評がある。
市田柿の特徴
市田柿の特徴のひとつが、表面が糖分の結晶に白く覆われていることだ。縦の長さは約4~5cmで、大きさはほかの干し柿と比較するとやや小ぶりだ。見ためは鮮やかで果肉に透明感があり、独特のもっちりとした食感を楽しめる。ほかの干し柿では出せないような上品な甘みがあるのも特徴のひとつだ。自然の恵みが凝縮されており、日常的に食べるのはもちろん、贈答品として贈るのもおすすめ。
2. 市田柿ができるまで
ここでは市田柿ができるまでを段階ごとに紹介しよう。
栽培
柿農園で行われている市田柿の栽培方法を解説する。まず年明け早々の雪が残っているくらいの寒い時期に剪定作業を行う。栄養の通り道を作り、余分な芽をすべてつまみ取って主要な枝のみを残す。害虫や病気が発生しやすいので、柿の様子をみながら必要最小限の消毒を行う。5月頃に花が咲き6~8月に大きな実がなるよう、摘果という余分な実を取る作業を行う。
収穫
収穫を行うのは10月末~11月にかけての時期だ。ポイントは全体が濃いオレンジ色で、よく熟した柿を収穫すること。ちなみに柿農家はこの時期、市田柿の収穫と家での皮むき作業を同時進行で行うので、忙しいという。
暖簾づくり
収穫した市田柿の皮をむき残しがないよう、丁寧にむく。次に柿と柿が触れあわないように、間をあけて吊るす。この吊るしたものを柿暖簾と呼んでおり、昔はこの時期に各家の軒下にたくさん吊るされ、季節の風物詩だった。現在は衛生上の指導により販売される市田柿は、専用のハウスで乾燥・熟成されている。
柿もみ
柿が35%くらいの重さになるまで、1ヶ月ほど乾燥させる。のれんから下ろし、1個ずつ乾燥具合をみて柿をもむ。水分が多い市田柿は、再び天日に干して調整する。柿もみのポイントは、柿の中心部の水分を押し出す。シワがないやわらかな干し柿を作るために、きめ細かな粉を出すことは大切な作業だ。 3~4回くらい、丁寧な柿もみと寝かせ込みを繰り返せば、白い粉に覆われた干し柿が完成する。ただし現在は、ドラム式の機械で行われている。
出荷
完成した市田柿は農家で包装作業を行い、JAの集荷場で内部検査が行われ、全国へと出荷される。贈答用としても人気の市田柿だが、通販の値段相場は15粒入りで税込3,480円だ(2021年12月現在)。
3. 市田柿の加工品
そのまま食べても十分においしい市田柿だが、加工品で販売されているスイーツを紹介しよう。
ミルフィーユ
市田柿を加工したスイーツのひとつが「市田柿フロマージュ」だ。特徴は市田柿とチーズをミルフィーユ状に重ねているところ。人気の理由は市田柿の濃厚な甘みを、コクのあるチーズの塩気が引きたてているという点だ。お茶請けはもちろん、ワインのお供やオードブルにおすすめだ。
栗きんとん
「栗柿」は市田柿のへたを丸くきれいに切り整え、半分に切って中の種を取り除き、栗きんとんを詰めたスイーツだ。メディアで紹介されたこともあるほど人気のスイーツである。購入して食べた人の口コミをチェックすると、お歳暮用に購入したが、あまりに美味しくて全部食べてしまったという声があるほどだ。
結論
南信州を代表する特産品のひとつである市田柿の特徴について紹介した。これまで名前すら聞いたことがないという人でも、ある程度知識を身につけてもらえたのではないだろうか。近くで販売されていなくても、ネット通販で購入できるので、気になる人はチェックしてみてはいかがだろうか。
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