目次
1. まずはドライクリーニングについて徹底解説

ドライクリーニングとはどんなクリーニング方法なのか、基本的なところから詳しく解説していく。
水を使わないクリーニング
ドライクリーニングとは、石油系の溶剤やパークロロエチレンなどの揮発性有機溶剤を使って衣類の汚れを落とす洗濯方法のことだ。洗濯といえば普通は水を使うが、ドライクリーニングは石油系の溶剤のみで汚れを落とす。これが水洗いとの大きな違いであり、またドライクリーニングが「水を使わないクリーニング」とも呼ばれている理由だ(ただし微量の水を用いることはある)。
ドライクリーニングの特徴
麻やシルク、カシミヤなどの素材は水洗いすると糸が膨張し、縮みや型崩れを起こす。しかしドライクリーニングの溶剤では糸が膨張しないので、生地に変化が起こりにくい。素材に負担をかけずに洗いあげるドライクリーニングは縮みや型崩れ、色落ちや風合いの変化が少なく衣類を長持ちさせる効果もある。
なお石油系の溶剤を使うドライクリーニングは、水洗いでは落ちにくい皮脂や機械油などの汚れに強く、口紅やチョコレートの汚れも落とせる。その反面、汗など水溶性の汚れは落ちにくい。ドライクリーニングが指定されている衣類の水溶性の汚れを落とす際は、石油系の溶剤に加えて水を使ったウェットクリーニングが適している。
なお石油系の溶剤を使うドライクリーニングは、水洗いでは落ちにくい皮脂や機械油などの汚れに強く、口紅やチョコレートの汚れも落とせる。その反面、汗など水溶性の汚れは落ちにくい。ドライクリーニングが指定されている衣類の水溶性の汚れを落とす際は、石油系の溶剤に加えて水を使ったウェットクリーニングが適している。
ドライクリーニングに向いている素材
水洗いをしてしまうと型崩れを起こしたり色落ちしたりするデリケートな衣類、風合いを損なわせたくない衣類などはドライクリーニングがよいだろう。ウールやカシミヤ、レザーなどでできたコートやジャケット、ウール素材がメインのスーツなどもドライクリーニングがおすすめだ。
ドライクリーニングの仕上がりまでの日数や頻度
衣類の種類や出すタイミングにもよるが、一般的にスーツやシャツ系は早くて3日程度、長くて1週間程度を見ておこう。ダウンやコート、ジャケットやカシミヤ、革などは1週間が目安だ。またドライクリーニングに出す頻度は汚れ具合などによって変わる。コートやジャケットなどは2〜3週に1回あたりが目安になるだろう。シーズン終わりは、そこから長期保管に入るためドライクリーニングに出してから保管しよう。
2. ドライクリーニングは自宅でできる?

ドライクリーニングは自宅の洗濯機でもできるのだろうか?洗濯機には「ドライ」などのコースがあるが、それとは違うのだろうか?続いてはそんな疑問を解消していこう。
自宅でドライクリーニングはできない
石油系の溶剤や揮発性有機溶剤を使うドライクリーニングは、クリーニング師の免許を持つ業者が専用の機器を使用して行う。したがって専門技術や専用機器、溶剤のない自宅ではできない。
ドライコースはクリーニングではない
ほとんどの家庭用洗濯機には「ドライ」コースがある。メーカーや機種によって「手洗い」「ソフト」「おしゃれ」など呼称は異なるが、いずれも弱水流で洗う、衣類への負担が少ないコースのことだ。ドライコースとドライクリーニングは本質がまったく異なるため勘違いしないように気をつけよう。
3. 自宅で洗えるドライクリーニング指定の衣類の見分け方とは?

洗濯表示にドライクリーニングのマークがあると「ドライクリーニングしかできない」と思うかもしれない。だがこのマークは本来「ドライクリーニングができる」という意味である。たとえドライクリーニングが指定されている衣類であっても「水洗い可」のマークが併記されていれば自宅の洗濯機でも洗える。見分けるポイントは洗濯表示だ。
ドライクリーニングの洗濯表示
- 黒丸の中に「P」または「F」が書かれているマーク
- 黒丸の中に「ドライ」または「ドライ/セキユ」の文字があるマーク
これらはドライクリーニングができるという意味の洗濯表示である。洗濯表示には新旧があるため迷ってしまう方もいるかもしれない。心配な方や詳しく知りたい方は、消費者庁のサイト(※1・※2)で確認しておこう。
自宅で洗濯できる洗濯表示とは?
- 「洗濯桶」あるいは洗濯桶に「手」のイラストがあるマーク
- 「洗濯機」あるいは洗濯桶に「手洗イ」の文字があるマーク
ドライクリーニングの洗濯表記と並列して上記いずれかの洗濯表示があれば、ドライクリーニングが指定されている衣類でも自宅で洗濯できる。ただし「洗濯桶にバツ」あるいは「水洗い不可」などと書かれたものは自宅で水洗いできない。つまりドライクリーニングしかできないということになるので、クリーニング店にお任せしよう。
水洗い不可でも自宅で洗える場合がある?
クリーニング店にお任せしようとお伝えしたが「ドライクリーニング」の洗濯表示があり、かつ「水洗い不可」という衣類でも自宅で洗える場合がある。素材でいえばウールやアンゴラ、レーヨンやレース、ポリエステルや麻などだ。ただし、そもそも水洗い不可の素材を自宅で洗濯した場合、型崩れや縮み、風合いが損なわれるなどトラブルが生じるリスクをともなう。本稿では推奨しないため、ここについては割愛させていただく。
4. ドライクリーニング指定の衣類を自宅で洗濯する方法

ドライクリーニングが指定されてはいるものの、水洗いもOKという衣類を洗濯する方法を紹介する。
用意するもの
- 洗濯ネット
- オシャレ着用洗剤
- 柔軟剤(お好みで)
- 洗濯桶(手洗いの場合)
- 平干しネット(なければ寝かせて干せるもの)
これだけ用意すればよい。なおオシャレ着用洗剤とはデリケートな繊維を優しく洗うことができる中性洗剤で「エマール」「アクロン」など各メーカーから発売されている。基本的にはお好みで構わないが商品説明などをチェックし、ドライマーク用(ドライクリーニングの洗濯表示にも対応している)か確認してから商品を選ぼう。
ドライクリーニング指定の衣類を洗濯機で洗う方法
- 洗濯表示で「水洗い可」であることを確認する
- 衣類をたたみ洗濯ネットに入れて洗濯機へ
- 洗濯機の電源を入れてドライコースを選ぶ
- 30℃以下の水を規定の量まで注ぐ
- オシャレ着用洗剤や柔軟剤を適量セットする
- スタートボタンを押して「洗い」「すすぎ」まで済ませる
- 脱水は30秒〜1分以内など短めにする
- 脱水が終わったら速やかに取り出す
- 形を整え、風通しのよい日陰に平干しをする
洗濯ネットにはほかの衣類と一緒にせず単体で入れるのがポイントだ。また、ぬるま湯やお湯を使うと縮みなどトラブルの原因になるので必ず水を使おう。そのほか、脱水時間が長いとシワや縮みなどの原因になる。1分以内などごく短めに留めよう。時間設定ができないときは手動で停止すればよい。なおハンガー干しは自重で伸びや型崩れの原因になるので避けよう。
ドライクリーニング指定の衣類を手洗いする方法
- 洗濯表示で「水洗い可」であることを確認する
- 洗濯桶に水をはり、オシャレ着用洗剤を適量溶かす
- 衣類をたたんで洗濯ネットに入れる
- 洗濯ネットごと衣類を浸し、20〜30回ほど優しく押し洗いする
- 水を入れ換えながら泡立たなくなるまですすぐ
- 洗濯ネットのまま洗濯機に入れ、30秒〜1分以内の脱水をする
- 脱水が終わったら速やかに取り出す
- 形を整え、風通しのよい日陰に平干しをする
手洗いなのに洗濯ネットに入れるのは、脱水時にダメージを受けないようにするためである。必須ではないが、できれば使ったほうがよいだろう。またすすぎは押し洗いと同じ要領で優しく行おう。なお柔軟剤を使うのであれば、最後のすすぎの前に適量を溶かせばOKだ。
5. ドライクリーニング指定の衣類を自宅で洗う際の注意点

最後に、ドライマークと水洗い両方の洗濯表示がある衣類を自宅で洗う際のポイントや注意点をまとめたので参考にしてほしい。
ドライクリーニング指定の衣類を自宅で洗う際のポイント
- 弱水流コースで洗い、脱水時間は短くする
- 30℃以下の水を使い、残り湯は使わない
- 形を整えてから平干しをする
- オシャレ着用やドライマーク用の洗剤を使う
ドライマーク用の洗剤を使う際の注意点
ドライマーク用の洗剤を使えば、確かにドライクリーニングと水洗い両方の洗濯表示がある衣類を自宅で洗うことができる。ただし結局は水洗いすることになるため、ドライクリーニングと同等の効果が得られるわけではない。「ドライクリーニング指定の衣類を水洗いをした際の、繊維への負担を若干和らげることができる」程度の認識でいよう。
レーヨンをキレイに仕上げるコツ
レーヨンは天然由来の合成繊維で、水に濡れると収縮する性質を持っている。そのため以前はドライクリーニングしかできなかったが、加工技術の進歩により水洗い可能なレーヨン製品も増えた。キレイに仕上げるにはオシャレ着用洗剤を使い、洗いとすすぎを数十秒以内でサッと終わらせることがポイントだ。
カシミヤを洗う際のポイント
山羊の獣毛から作られたカシミヤ繊維の表面には、天然の油分が付着している。洗濯時は油分が抜けてしまうため、適量の柔軟剤を入れて補っておこう。
コートを洗う際の注意点
トレンチコートなど綿製のものはシワになりやすいので、洗濯後は低温のスチームアイロンで伸ばしておくのがおすすめだ。ただしウール製のコートはアイロンをかけるとテカリが出るおそれがあるため控えるか、必ず当て布をして低温で仕上げるなどしよう(アイロンOKの場合)。
ダウンを洗う際の注意点
ダウンは水洗い可の表示がついているものに限り自宅で洗える。洗濯前に破れやほつれがないか点検しておこう。気づかずに洗うと内部の羽根が飛び出してしまう大惨事になるおそれがある。穴が開いていた場合は、当然ながら洗濯は避けたほうがよい。
またダウンは軽いため、洗濯機の中で浮いてしまうことがある。タオルで覆って洗濯ネットに入れるなどしよう。脱水後はダウンの羽が偏るので、軽く叩いて中に空気を入れてから干すとよい。ちなみにダウンはコインランドリーの乾燥機を使っても乾かせる。ふっくら仕上がるので近所にあるという方は利用しよう。
またダウンは軽いため、洗濯機の中で浮いてしまうことがある。タオルで覆って洗濯ネットに入れるなどしよう。脱水後はダウンの羽が偏るので、軽く叩いて中に空気を入れてから干すとよい。ちなみにダウンはコインランドリーの乾燥機を使っても乾かせる。ふっくら仕上がるので近所にあるという方は利用しよう。
結論
ドライクリーニングが指定されている衣類でも「水洗い可」の洗濯表示が併記されていれば自宅で洗える。紹介した方法を参考にお手入れしよう。ただし仕上がりはドライクリーニングとは異なる。大切な衣類や少しでも不安な部分がある場合などは無理に自宅で洗濯せず、プロの手で仕上げてもらうことをおすすめする。
(参考文献)
※1:消費者庁 洗濯表示(平成28年11月30日まで)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/wash.html
※2:消費者庁 洗濯表示(平成28年12月1日以降)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/wash_01.html
※1:消費者庁 洗濯表示(平成28年11月30日まで)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/wash.html
※2:消費者庁 洗濯表示(平成28年12月1日以降)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/wash_01.html