1. トマトの主な栄養価とは?

文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」には、トマト(生)・ミニトマト(生)・黄色トマト(生)などの栄養価が収録されている(※1、2)。このうち100gあたりのトマト(生)の栄養価は以下のとおりである。
- エネルギー:19kcal
- たんぱく質:0.7g
- 脂質:0.1g
- 炭水化物:4.7g
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸:0.02g
・一価不飽和脂肪酸:0.01g
・多価不飽和脂肪酸:0.03g - ビタミン
・βカロテン:540μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:0.9mg
・ビタミンK:4μg
・ビタミンB1:0.05mg
・ビタミンB2:0.02mg
・ナイアシン:0.7mg
・ビタミンB6:0.08mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:22μg
・パントテン酸:0.17mg
・ビオチン:2.3μg
・ビタミンC:15mg - ミネラル
・ナトリウム:3mg
・カリウム:210mg
・カルシウム:7mg
・マグネシウム:9mg
・リン:26mg
・鉄:0.2mg
・亜鉛:0.1mg
・銅:0.04mg
・マンガン:0.08mg
・ヨウ素:0μg
・セレン:1μg
・クロム:0μg
・モリブデン:2μg - 食物繊維:1.0g
(・水溶性食物繊維:0.3g)
(・不溶性食物繊維:0.7g)
2. トマトの特徴的な栄養素を紹介!

ヨーロッパのことわざに「トマトが赤くなると医者が青くなる」とあるように、昔からトマトの栄養価の高さはよく知られていた。その中でも特に注目したい栄養素について詳しく確認してみよう。
カロテノイドの「リコピン」が豊富
トマトはカロテノイドの一種であり、赤色色素である「リコピン」を多く含んでいる。品種により含有量は異なるのだが、一般的に生食用だと100gあたり3~5mg程度を含むそうだ(※3)。リコピンは、同じカロテノイドのβカロテンと異なりビタミンAの材料にはならないものの、βカロテンよりも強い抗酸化作用が認められており体内の活性酸素を取り除く働きがあるとされている(※4)。
「ビタミン類」をバランスよく含む
トマトは、ビタミンA(βカロテン)・ビタミンB群・ビタミンC・ビタミンE・ビタミンKをバランスよく含んでいる。ビタミン類の体内での役割はそれぞれ異なるものだが、いずれも人の身体を正常に働かせるために必要不可欠な栄養素である。また、βカロテン・ビタミンE・ビタミンCなどには抗酸化作用があり、体内の活性酸素を取り除く働きも期待されている(※4)。
うま味成分の「グルタミン酸」も多い
上記の一覧にはないが、トマトは非必須アミノ酸の一種であり、うま味成分として知られている「グルタミン酸」を100gあたり240mgも含んでいる(※2)。特にグルタミン酸を多く含んでいるのが、種の周りにあるプルプルとしたゼリー質の部分だそうだ(※5)。トマトを使った料理が美味しいと感じる理由は、このようにグルタミン酸を多く含んでいるからである。
リノール酸の「13-oxo-ODA」を含む
こちらも上記の一覧にはないが、トマトは不飽和脂肪酸の一種である「リノール酸」を含んでいる。しかもこのリノール酸の正体は、2012年に京都大学によって発見された「13-oxo-ODA」と呼ばれる新しい機能性成分であるそうだ。ただし、この機能性成分は肥満マウスを使った研究で明らかになっただけで、実際に人体に影響があるかどうかはまだ十分に明らかになっていないようだ(※6)。
3. トマトの主な加工品の栄養価とは?

トマトは用途で分類すると「生食用」と「加工用」の二種類があり、一般的に加工用のほうが栄養価は高いといわれている。そこで「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」を参考に、それぞれの100gあたりの主な栄養価を比較してみる(※1)。また、βカロテンの含有量についても比べておこう。
- トマト缶(ホール):熱量20kcal、たんぱく質0.9g、脂質0.2g、炭水化物4.4g、βカロテン570μg
- トマトジュース:熱量17kcal、たんぱく質0.7g、脂質0.1g、炭水化物4.0g、βカロテン310μg
- トマトケチャップ:熱量121kcal、たんぱく質1.6g、脂質0.2g、炭水化物27.6g、βカロテン510μg
- トマトピューレ:熱量41kcal、たんぱく質1.9g、脂質0.1g、炭水化物9.9g、βカロテン630μg
- トマトペースト:熱量89kcal、たんぱく質3.8g、脂質0.1g、炭水化物22.0g、βカロテン1000μg
- トマトソース:熱量44kcal、たんぱく質2.0g、脂質0.2g、炭水化物8.5g、βカロテン480μg
- ドライトマト:熱量292kcal、たんぱく質14.2g、脂質2.1g、炭水化物67.3g、βカロテン2600μg
- (参考)トマト:熱量19kcal、たんぱく質0.7g、脂質0.1g、炭水化物4.7g、βカロテン540μg
トマトの素材そのものを活かしたトマト缶(ホール)やトマトジュースなどはトマトとあまり栄養価は変わらないが、ドライトマト(乾燥トマト)やトマトケチャップのように水分量が少なくなる加工をすると栄養価は変わってくる。料理に使う際は、それぞれの特徴を理解しておくとよさそうだ。
4. トマトの栄養価に関する質問に回答!

ここまでトマトの栄養価を詳しく見てきたが、まだトマトの栄養価に関する疑問・質問は残っているかもしれない。そこでトマトの栄養価に関するよくある質問をまとめたので、一つずつ答えていく。
Q1.栄養価が高くなる「トマトの旬」はいつ?
トマトは「夏野菜」というだけあって、一般的な旬は7~8月頃となっている。また、野菜は収穫時期によって栄養価が変わることがある。実際、女子栄養大学生物有機化学研究室の調べによると、トマトに含まれるリコピンの含有量は、旬の8月だと2月の約3倍にもなるそうだ(※5)。トマトはハウス栽培が盛であり通年食べられるが、特に栄養価が高くなる7~8月頃に食べるのがよさそうだ。
Q2.トマトの栄養価を逃さないおすすめの食べ方は?
トマトに含まれるリコピンなどは、生食よりも加熱をしたほうが2~3倍程度効率よく吸収できるそうだ。さらに、リコピンは油に溶けやすい性質(油溶性)を持っているため、オリーブオイルなどで加熱して食べるのがよいとされている(※3)。加熱調理をする時間がなければ、トマトにオリーブオイルを和え物にするのもよい。できる限りトマトの良質な栄養素を逃さないようにしよう。
Q3.トマトとミニトマトは栄養価が違うの?
トマトとミニトマトの栄養価を比べると、リコピンを含め基本的な栄養価はすべてミニトマトのほうが上回っている(※1)。そのため、同じ量を食べるなら、ミニトマトのほうが栄養価は高い。ただし、ミニトマトはトマトに比べると値段が高く、サイズ感にやや物足りなさを感じる。また、ミニトマトのほうが水分量は少ないため、みずみずしさはトマトよりも感じにくい可能性がある。
結論
使い勝手がよくて料理の幅を広げてくれるトマトは、実はリコピンやβカロテンなどを多く含み栄養面でも優れている。効率よく栄養素を吸収したいなら加熱調理をするのがおすすめだが、オリーブオイルなどをかければ生食でも栄養素を摂ることが可能だ。また、トマトを使った加工食品も数多くあるので、上手に料理に取り入れていくのがよさそうだ。
【参考文献】
- ※1:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365419.htm - ※2:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06182_7 - ※3:全国トマト工業会「トマトの栄養「リコピン」」
http://www.japan-tomato.or.jp/knowledge/ - ※4:厚生労働省e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ - ※5:農林水産省「特集1 夏野菜」
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1708/pdf/1708_03.pdf - ※6:京都大学「トマトから脂肪肝、血中中性脂肪改善に有効な健康成分を発見」
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2011/120210_1.htm
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