1. ニラってどんな野菜?

ニラとは中国原産のユリ科ネギ属の植物の一種であり、葉ニラ・花ニラ・黄ニラなどいくつか種類がある。日本でニラというと一般的には、濃い緑色の葉っぱが特徴的な葉ニラを指すことが多く、この葉ニラの中では「ワンダーグリーンベルト」や「パワフルグリーンベルト」といった品種が代表的となっている。通年流通しているが、11月~翌年4月に採れたものが美味しいといわれている。
2. ニラの基本的な栄養価

「日本食品標準成分表」には、一般的な「ニラ」のほかにも、花ニラや黄ニラなどの栄養価も収録されている。ここでは基本となる「ニラ(葉/生)」の100gあたりの栄養価をまとめておく。
ニラ(葉/生)の100gあたりの栄養価
- エネルギー:18kcal
- たんぱく質:1.7g
- 脂質:0.3g
- 炭水化物:4.0g
- 脂肪酸
・飽和脂肪酸:0.04g
・一価不飽和脂肪酸:0.01g
・多価不飽和脂肪酸:0.08g - ビタミン
・βカロテン:3500μg
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:2.5mg
・ビタミンK:180μg
・ビタミンB1:0.06mg
・ビタミンB2:0.13mg
・ナイアシン:0.6mg
・ビタミンB6:0.16mg
・ビタミンB12:0μg
・葉酸:100μg
・パントテン酸:0.50mg
・ビオチン:2.1μg
・ビタミンC:19mg - ミネラル
・ナトリウム:1mg
・カリウム:510mg
・カルシウム:48mg
・マグネシウム:18mg
・リン:31mg
・鉄:0.7mg
・亜鉛:0.3mg
・銅:0.07mg
・マンガン:0.39mg
・ヨウ素:1μg
・セレン:1μg
・クロム:1μg
・モリブデン:15μg - 食物繊維:2.7g
(・水溶性食物繊維:0.5g)
(・不溶性食物繊維:2.2g)
3. ニラに多く含まれる栄養素

ニラは100gあたり18kcalと低カロリーであるにも関わらず、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維、アリシンなども含んでいる。そんなニラの栄養素や栄養成分について確認してみよう。
その1.ビタミン類
緑黄色野菜であるニラはβカロテンを多く含んでいる。また、βカロテンのほかにもビタミンE、ビタミンK、ビタミンB群、ビタミンCなどのビタミン類も多く含んでいることから「マルチビタミン野菜」と呼ばれることもある。それぞれのビタミン類の特徴は以下のようになっている。
【βカロテン】
ニラは、βカロテンを100gあたり3500μg含んでいる。βカロテンはビタミンAの前駆体であり、体内ではビタミンAとして目や皮膚などを健康に保つ働きをする(※2)。また、βカロテンには抗酸化作用があるため、活性酸素の発生を抑えたり、取り除いたりする働きも期待されている(※3)。
【ビタミンE】
ニラは、ビタミンEを100gあたり2.5mg含んでいる。ビタミンEは抗酸化ビタミンの一種として知られており、体内の活性酸素の働きを抑えるほか、細胞内に過酸化脂質が作られるのを抑制する働きもある(※3)。成人男性(18~64歳)の場合、1日あたりの目安量は6.0~7.0mgである(※2)。
【ビタミンK】
ニラは、ビタミンKを100gあたり180μg含んでいる。ビタミンKは血液凝固や骨の形成などに関与しているビタミンとして知られている。成人男性(18~64歳)の場合、1日あたりのビタミンKの目安量は150μgである(※2)。
その2.ミネラル類
ニラは、ミネラル、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、マンガンといったミネラル類も含んでいる。特に「カリウム」の含有量は多く、100gあたり510mgとなっている。カリウムは、ナトリウムを排出し、細胞の浸透圧を調節する働きがある。普段の生活で不足することは少ないが、塩分の摂取量が多い日本人にとっては重要な栄養素の一つとなっている(※2、3)。
その3.食物繊維
ニラは、食物繊維を100gあたり2.7g含んでいる。食物繊維には、例えば、大腸内で膨らんでぜん動運動を活発にする、食後の糖の吸収を穏やかにして食後血糖値の上昇を抑えるといった働きがあるという。しかし、現代人は不足しがちであるため、積極的に摂取するのが望ましい(※3)。成人男性(18~64歳)は1日に21g以上を目標に(※2)、ニラなどから食物繊維を摂るようにしよう。
その4.アリシン
アリシンとは、特にニンニクに多く含まれている辛味成分のことである。また、アリシンにはさまざまな働きがあり、例えばビタミンB1の吸収効率をサポートする、食欲を増進させるといった働きがあるという(※4)。なお、アリシンは水に弱いため、切ったニラを長時間水に浸けたままにしないように注意しよう。
4. ニラの栄養素を上手に摂るコツ

「マルチビタミン野菜」といわれるほどビタミン類を多く含んでいる「ニラ」。そんなニラのビタミンなどを効率よく摂るためのポイントについても確認しておこう。
コツ1.食用油と一緒に摂る
ニラに多いβカロテン、ビタミンE、ビタミンKなどは脂溶性ビタミンと呼ばれており、油と一緒に摂ると吸収率がアップすることで知られている。そのため、ニラの炒め物やニラの天ぷらなどにするのがおすすめだ。また、和え物にするときはマヨネーズやツナなどを加えてみるのもよい。
コツ2.水に長時間浸さない
ニラはビタミンB群やビタミンCといった水溶性ビタミンも含んでいる。これらは水に溶け出す性質を持っているため、下ごしらえで長く水に浸けていると栄養素の流出に繋がってしまう。また、鍋料理やスープなどに使う場合は、汁ごと飲むことで栄養素を逃さずに摂ることができる。
5. ニラの栄養面に関するよくある質問

ここまでニラの栄養価・栄養素について詳しく説明してきた。しかし、まだ「1日にどれくらい食べればいいのか」「黄ニラや花ニラと栄養価は違うのか」などが気になる人もいるだろう。そこで最後にニラの栄養面に関するよくある質問に回答する。
Q1.ニラは1日にどれくらい食べればいいの?
ニラの上限量・目安量などは特別定められてない。しかし、厚生労働省が策定した「健康日本21」によれば(※5)、1日にあたりの野菜の摂取目安量は350g以上。このうち緑黄色野菜の目安量は120g以上としている。ニラは緑黄色野菜の一種であるため、人参・ほうれん草・小松菜・ブロッコリーなどと合わせて、合計で120g以上食べるようにしてみよう。
Q2.ニラと黄ニラ、花ニラの栄養価は違うの?
ニラには黄ニラや花ニラなどもあるが、基本的な栄養価を比べてみるとニラ(葉ニラ)のほうが全体的に含有量は多い。特にβカロテンの含有量は葉ニラ3500μg、黄ニラ59μg、花ニラ1100μgであり(※1)、葉ニラの含有量が圧倒的に多くなっている。必ずしも「栄養素が多ければいい」というわけでもないが、同じ量を食べるなら「葉ニラ」のほうが多くの栄養素を摂ることが可能だ。
結論
ニラは「マルチビタミン野菜」と呼ばれることもあり、βカロテン・ビタミンE・ビタミンK・ビタミンB群・ビタミンCを含んでいる。また、カリウム・食物繊維のほかに、辛味成分であるアリシンも含んでいるのが特徴だ。炒め物・揚げ物・鍋料理・和え物などさまざまな料理に使えるので、栄養バランスを整えるために加えてみるのもよいだろう。
【参考文献】
- ※農畜産業振興機構「野菜ブックにら」
https://www.alic.go.jp/content/001162832.pdf - ※1:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
https://fooddb.mext.go.jp/ - ※2:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf - ※3:e-ヘルスネット「トップページ」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ - ※4:JA筑前あさくら「[博多万能ねぎ] 栄養価・歴史」
http://www.asakura-fk-ja.or.jp/product/vegetable/negi/post_4.php - ※5:厚生労働省「健康日本21」
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b1.html#A13
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