1. 炊飯の基礎知識をおさらい

「はじめちょろちょろなかぱっぱ」の説明をする前に、まずは炊飯に関する基礎知識について紹介する。日本で採用されている炊飯法や炊飯器の歴史などを確認しておこう。
その1.日本では炊き干し法が主流である
炊飯法には炊き干し法、湯取り法、湯立て法、炒め煮、蒸しの5つがあるが、日本では一般的に「炊き干し法」によって米を炊いている。炊き干し法の特徴は、水分が多い段階では米を煮て、水分が少なくなった段階では米を蒸すという炊き方であること。もっちりとした粘り気のある白飯に仕上がるため、粘り気のあるご飯を好む日本や東アジア圏で多くみられる炊き方となっている。
その2.自動炊飯器は昭和30年に登場する
炊飯が終了すると自動でスイッチが切れる「自動炊飯器」が誕生したのは、1955年(昭和30年)のこと。それまでは釜やかまどを使ってご飯を炊くのが主流だったが、これにより炊飯方法は炊飯器を使った方法に変わっていった。実際、1970年代には炊飯器の普及率は90%以上となり(※1)、日本の家庭の必需品になっていることが伺える。「台所の大革命」ともいえる発明であった。
2. はじめちょろちょろなかぱっぱとは?

はじめちょろちょろなかぱっぱとは、釜やかまどを使って米を炊くときの火加減・手順を表した言葉のこと。広辞苑には「始めちょろちょろ中ぱっぱ赤子泣くとも蓋取るな」という言葉で収録されており、意味や解説には「弱火から強火にし、途中では決して蓋を取らないという、飯の上手な炊き方を教えた言葉」と書かれている(※2)。一般的には、江戸時代ごろに誕生したと考えられている。
はじめちょろちょろなかぱっぱのバリエーション
・始めちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子泣くとも蓋取るな
・始めちょろちょろ、中ぱっぱ、じゅうじゅうふいたら火を引いて、赤子泣いてもふたとるな
・始めちょろちょろ、中ぱっぱ、ブツブツいうころ火を引いて、ひと握りのワラ燃やし、赤子泣くともふた取るな
・始めちょろちょろ、中ぱっぱ、じゅうじゅうふいたら火を引いて、赤子泣いてもふたとるな
・始めちょろちょろ、中ぱっぱ、ブツブツいうころ火を引いて、ひと握りのワラ燃やし、赤子泣くともふた取るな
3. 「はじめちょろちょろなかぱっぱ」の段階ごとの意味

「はじめちょろちょろなかぱっぱ」にはいくつかバリエーションがあるが、ここでは「始めちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子泣くとも蓋取るな」をもとにそれぞれの段階の意味を紹介する。なお、
ステップ1.始めちょろちょろ
初めちょろちょろは「最初はとろ火で」という意味である。予備炊き・前炊きと呼ばれる段階で、米に水を吸収させるための時間である。10~15分程度かけて沸騰させることで、米の中心部まで吸水させることができるという。また、じっくりと加熱することで、米本来の甘みも引き出せるそうだ。
ステップ2.中ぱっぱ
中ぱっぱは「中頃に火を強くする」という意味である。本炊き・炊き上げと呼ばれる段階で、米をやわらかくしたり、粘り気を出したりする時間のことだ。沸騰状態(=100℃)を15~20分程度キープすることで、米のデンプンがα化されるという。さらに、最後のほうは水蒸気で炊き上がっていく。
ステップ3.赤子泣くとも蓋取るな
赤子泣くとも蓋取るなは「どんなことがあっても蓋を取るな」という意味である。蒸らしと呼ばれる段階で、より米の甘みや粘り、香りを引き出す時間となっている。この工程では90℃以上をキープするのが望ましいため、火を消してからもフタを取らないで10~15分程度待つとよい。
4. 土鍋では「はじめちょろちょろなかぱっぱ」は使えない?

「はじめちょろちょろなかぱっぱ」は本来、釜やかまどを使って米を炊くときの火加減・手順のことを指す。そのため、土鍋などを使って米を炊くときは、土鍋に合わせて時間や火加減を調整する必要がある。以下に、土鍋を使った米の炊き方をまとめておくので参考にしてみよう。
土鍋を使った炊飯方法・手順
1.研いだ米を水に浸けて吸水させる
2.米と水を土鍋に移して中火にかける
3.沸騰したら弱火にして15分程度炊く
4.火を切って10分程度そのまま蒸らす
5.手早く炊けた白飯を切ったら完成
2.米と水を土鍋に移して中火にかける
3.沸騰したら弱火にして15分程度炊く
4.火を切って10分程度そのまま蒸らす
5.手早く炊けた白飯を切ったら完成
【土鍋を使って炊飯する際のポイント】
・浸水時間は夏場で30分、冬場で1時間を目安にする
・炊いたあとは、水分が残っていないか中を確認する
・蒸らすときはフタの穴を閉じるなどして密閉度を上げる
・炊いたあとは、水分が残っていないか中を確認する
・蒸らすときはフタの穴を閉じるなどして密閉度を上げる
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結論
「はじめちょろちょろなかぱっぱ」には、上手に白米を炊くための先人の知恵が詰まっている。現在は釜やかまどで米を炊く機会は少ないが、もし土鍋などで米を炊く機会があったら思い出してみるとよいだろう。また、土鍋で炊くときには今回紹介した手順やポイントを意識してみよう。
(参考文献)
- ※1:中央調査社「■ 台所・厨房機器の保有率の推移」
https://www.crs.or.jp/backno/old/No607/6071.htm - ※2:広辞苑無料検索
https://sakura-paris.org/dict/
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