1. 【さみどり】とは?

日本各地で栽培されている茶葉の約75%は「やぶきた」という品種が占めている。ほかの品種の栽培量はあまり多くないものの玉露用や碾茶用などの茶葉があり、日本茶には欠かせない。さみどりは京都府宇治の在来種で、小山政次郎という人物が選抜した品種だ。宇治といえば宇治抹茶が有名だが、さみどりも抹茶加工に適した品種である。抹茶になる茶葉を碾茶という。一般的に茶葉は日光に当てて栽培されるのだが、碾茶は被覆栽培(茶葉をすだれなどで覆って栽培する方法)で育てられる。ちなみに、高級日本茶の代名詞である玉露も同じように被覆栽培で育てられる。日光に当てないことで旨みの強い茶葉となる。抹茶は碾茶を石臼などで挽いて粉末状にしたものを指す。さみどりで作った抹茶は色鮮やかな緑色が印象的で風味も優れている。
さみどりの産地
碾茶用の茶葉は被覆栽培を行わなければならないため、全国でも限られた場所でしか栽培されていない。抹茶の一大産地で思い浮かべやすいのが京都府で、宇治抹茶が有名だ。ほかに碾茶の生産地として有名な場所が愛知県で、現在はおもにこの2ヶ所で栽培されている。さみどりも京都府と愛知県の2ヶ所で栽培されている。
2. さみどりの収穫時期と加工

味、香りともにバランスのよい茶葉が収穫できる時期を八十八夜という。立春から88日目を指し、現在の暦では5月1日または2日にあたる。茶葉の生産量トップの静岡県では、八十八夜より少し早い4月中旬から新茶の収穫が始まる。さみどりが栽培されている京都府では5月上旬より、愛知県では京都府よりも少し遅く5月中旬から収穫が始まる。収穫から加工まで時間がかかるため、さみどりの新茶を使った抹茶が店頭に並ぶのはもう少し遅い時期となる。
碾茶が抹茶になるまで
碾茶をそのまま石臼で挽いても抹茶になるわけではない。石臼で挽く前に茶葉自体が加工される。茶葉はそのままにしておくと酸化発酵してしまい、お茶の色や味わいが変わってきてしまう。そのため収穫された茶葉は酸化発酵を抑制するため、茶園にて蒸し加熱される。加熱された茶葉は乾燥させるのだが、ここが煎茶用の茶葉を作るときとの大きな違いとなる。煎茶作りでは手もみをしてから乾燥させるが、碾茶は手もみせずに乾燥させる。ここまでが茶園での加工で、次は加工業者に移り仕上げが行われる。茶葉の中に混じっていた茎や芽が取り除かれ、石臼で粉末状にする。そうして碾茶は抹茶となり、店頭に並ぶようになる。
3. さみどりは抹茶で飲む

自宅で抹茶を使う場面で多いのはスイーツ作りだろう。クッキーやケーキに抹茶を加えるだけで苦みがアクセントとなり、見た目も色鮮やかになる。しかし、さみどりの抹茶を購入した場合は、スイーツの材料にするだけでなくぜひ抹茶を点てて飲んでみてほしい。茶道では礼儀や作法などいろいろあるが、自宅で楽しむ分には関係ない。
抹茶を飲むために必要な道具
抹茶は点てて飲むものであるため、いくつか用意しなければならない道具がある。必ず用意しなければならないのが茶筅だ。茶筅で抹茶を点てることで空気が含まれ、クリーミーな味わいとなる。次に重要なのが抹茶茶碗だが、底が丸くて茶筅で抹茶を点ててもこぼれないような器であれば代用することができる。抹茶を計る際に使う茶杓も計量スプーン等で代用できるため新しく購入する必要はない。
抹茶の点て方
抹茶は70℃くらいの温度で点てるのが望ましい。そのため沸かしたお湯を少し冷ましてから使うようにしよう。抹茶2gを抹茶茶碗に入れ、そこにお湯を注ぐ。抹茶を点てるときに必要なお湯は60mlだが、ダマになりそうだったら最初に10mlほど入れて溶かしてから残りのお湯を入れるようにするとよい。空気を含ませるように茶筅を動かすのがポイントで、茶碗の中で川の字を書くように茶筅を動かすと空気を含ませやすい。きめの細かい泡が全体的に見られるようになったら完成だ。
結論
宇治の在来種から選抜されたさみどりは碾茶に向いている品種だ。そのため抹茶が有名な京都府や愛知県で主に栽培されている。さみどりと似た名前で「さえみどり」という品種があるが、こちらは煎茶に向いている品種で特徴がまったく異なる。混同しないよう注意してほしい。