1. わかめの旬は春

わかめは、チガイソ科ワカメ属の1年草の海藻である。1年草とは、1年で命を終える植物のことを指す。植物の育ち方には、1年草のほかに多年草、宿根草がある。多年草は、1年中葉を茂らせ、毎年花を咲かせたりする植物で昆布は多年草だ。宿根草は、冬に葉がかれても根が生きていて、春になると芽を出す植物である。わかめは深さ3~10mほどの海の中で生育している。冬から春にかけて成長し、一番大きくなる2~4月に刈り取られるのだ。そのため、わかめを美味しく食べられる旬の時期は、成長した春である。
わかめの一生
わかめは胞子で繁殖する海藻だ。成長するにつれてわかめの根元には、胞子を作る胞子葉(ほうしよう)ができる。この胞子葉はヒダが重なった形をしており、めかぶと呼ばれている。胞子は配偶子(はいぐうし)と呼ばれ、わかめには雌性(しせい)配偶子、雄性(ゆうせい)配偶子がある。これらはそれぞれ海底に付着し、休眠しながら夏を越す。水温が下がり、日が短くなる秋になると、配偶子から卵と精子が作られる。これらが受精すると、発芽して芽胞体(がほうたい)となり、成長して1~2mほどの一般的に知られるわかめの姿になる。そのころには根元にめかぶができていて、1年のサイクルを繰り返す。
2. 日本で収穫されるわかめの種類

日本では北海道から九州までの広い海域で、わかめは収穫できる。古くから食べられている海藻で、701年の大宝律令や万葉集に記述があるほどだ。わかめは植物学的には1種類だが、生育する流域で特色が異なり3種類に分けられる。
北方型わかめ
主に北海道、東北に生育している。三陸産のわかめが有名だ。葉の色が濃く、細長い姿で、葉の切り込みが深い。また、肉厚で次に紹介する鳴門わかめよりも柔らかい。波が荒くても適応できるようになっている。
鳴門わかめ
海水の流れが激しい場所である鳴門海峡で育つわかめで、南方型わかめに含まれることもある。徳島県の特産品だ。しなやかさと強いコシがあり、シャキシャキとした食感を味わえる。木灰をまぶして保存性をよくした、灰干しわかめも作られている。
南方型わかめ
本州太平洋岸中南部、日本海沿岸の地域に生息するわかめを指す。内海など比較的穏やかな海で育ち、浅い所へ生息する。小型で茎が短く、葉の切れ込みが浅い姿を持つ。食感は、北方型わかめと鳴門わかめの中間である。
3. 繁殖力の高いわかめと海外での扱われ方

わかめは、世界の中では、日本と韓国でほとんどが消費されている。本来、北東アジアの日本・朝鮮半島・中国海域に自生していた海藻なのだが、現在ではニュージーランド、フランス、オーストラリア、アルゼンチンなどでも自生したわかめが確認されている。わかめは繁殖力が強く、世界各地の在来種を脅かしたり、養殖の海産物を大量死させたりするなどの影響を与えているのだ。なぜ日本から遠く離れた海域で繁殖しているのだろうか。その原因は、船のバラスト水である。
バラスト水とは
積み荷を運ぶ船は、荷物を積んでいないとき船が浮き上がって船体が不安定になりやすい。そのため、船体のバランスをとるために海水を積み込むのだ。しかし、荷物を積むときには重い海水が邪魔になるため、目的の港へ着く前に海水を排出する。この海水をバラスト水と呼ぶ。バラスト水には、出航前の海域の海水が使われ、海藻の断片や胞子が紛れ込んでいる。
わかめの繁殖力の強さ
わかめは海水が20℃以下で簡単に自生する。わかめの天敵はウニだか、ウニの繁殖力はわかめよりも弱いために、わかめが簡単に増えていくのだ。また日本や韓国以外では、わかめを食べる習慣がないため、自生すると増え続ける。1987年に、ニュージーランドの首都ウェリントン近くの海岸でわかめが見つかり駆除作業を進めたが、ニュージーランドの北部から南東部の海岸一帯に掛けて広がってしまった。この結果から、遠い海域でバラスト水を放出するようにとの規定ができたほどである。このことからも、わかめの繁殖力の強さがうかがえるだろう。
結論
わかめの旬は春である。海域の水温、海流の強さなどの条件で、食感などの特色が異なり、主に3種類に分けられる。また、日本と海外でのわかめの印象は異なり、繁殖力の強さから海外の在来種を脅かす一面もあることも知っておきたい。
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