1. 名古屋の味噌煮込みうどんはひと味違う

ひとくちに「うどん」といっても、そのバリエーションは驚くほど幅が広い。中でも味噌煮込みうどんは色も食感も独特で、初めて食べる人は驚くだろう。
よく似た「ほうとう」がルーツ
「野菜や具を味噌汁に入れて煮込む」というスタイルは全国的にあり、山梨県のほうとうをルーツにしている。しかし、味噌煮込みうどんの食べ方は、名古屋にしかない独特のものだ。名古屋の尾張地方の農家では、昔から味噌汁の中にすいとんやうどん、野菜を入れてごった煮にしたものをよく食べていた。家庭から職場、職場から飲食店と食の場が変遷するにつれ、その味噌煮はメニューとして洗練されていき、名古屋独特のスタイルになっていった。
地元特産の豆味噌を使った
味噌煮込みに使われる味噌は、岡崎地方で作られている地元特産の豆味噌である。有名な「八丁味噌」だ。色が濃くてやや粘りがあり、初めて見る人は見慣れた米味噌と違うのでビックリするだろう。香りと味は濃厚で複雑、ほぼ褐色に近い色をしている。
2. 名古屋の味噌煮込みうどんの特徴

見た目のインパクトもあるが、味と食感も普通のうどんとは違う
味噌煮込みうどん。これぞ名古屋名物、他では食べられない味である。
味噌煮込みうどん。これぞ名古屋名物、他では食べられない味である。
グツグツ煮立った土鍋で登場
味噌煮込みうどんは肉厚の土鍋に入って、グツグツと煮立ったまま席に運ばれてくる。土鍋は均等に熱を与え、高火力調理で入ったヒビさえ味を左右するといわれる。味噌の粘度があっても焦げ付きにくい利点があるし、最後まで冷めにくく、熱々のまま食べることができるのだ。
八丁味噌の味わい
岡崎地方名産の八丁味噌がベースの煮汁は、ほぼこげ茶色でトロリとしている。少し苦みさえ感じる奥深い味わいだ。出汁は地元でよくとれるムロアジの煮干し出汁が多いが、出汁と味噌は各店ごとに違い、レシピは秘密のことが多い。
バリカタの麺
普段食べているうどんを想像して食べると、まだ煮えていないのではないかと思うほど麺が固い。味噌煮込みうどんの麺は小麦粉と水だけで作られている。塩が入っていないので、茹でても弾力が出ず固く仕上がるのだ。熱々の土鍋で食べ終わる頃には麺の芯が抜けて食感が変わるので、そこも楽しもう。
3. 名古屋の味噌煮込みうどんをより美味しく食べるコツ

もちろん好きな食べ方でいいのだが、地元民おすすめの食べ方があるので紹介しよう。
蓋にのせて食べる
高火力で盛大に煮込むので、調理中は蓋をしない味噌煮込みうどん。このため、普通のなべ焼きと違い、土鍋の蓋に穴が開いていない。こぼれる心配がないので、この蓋に麺や具をのせて取り皿として食べるのが名古屋流だ。ヤケドしないようにフーフーして食べよう。
卵は後から
注文するとほぼデフォルトで生卵が入ってくる。いきなり食べるのではなく、余熱で半熟になったころが食べごろだ。そっと蓋に移し、具をつけてすき焼き風にする人もいる。肉や天ぷらなどの具を半熟卵に絡めると最高である。お腹に余裕があるなら、最後に米を入れて味噌雑炊にするのが定番だ。
結論
近年ではカレー味なども登場し、ますます地元民に愛されている味噌煮込みうどん。自宅で作る時は、ぜひ八丁味噌で作ってみよう。ただの味噌汁にうどんを入れたものとは全く違った味わいになる。麺が独特なのも特徴なので、ネットなどで専用麺を取り寄せるのもいいだろう。蓋に穴のない土鍋も購入可能なあたりに、本場の味噌煮込みうどんの人気がうかがえる。