1. 干し椎茸を「戻す」コツ
干し椎茸を戻す時はぬるま湯を使う、砂糖を水に混ぜるなど諸説あるが、大きなポイントは3つある。
●戻す前にさっと洗う
干し椎茸についたゴミなどをサッと洗って落とす。この時、手早く洗って旨みを逃さないようにすることが大切だ。洗ったあとは香りや旨みが逃げないよう、密閉容器か保冷用バッグに入れて密封しておくとよい。
●必ず「冷水」で戻す
必ず5℃以下の冷水で戻すというのが干し椎茸を戻す時の一番重要なポイントである。ぬるま湯など温度が高い水や湯で戻しても戻る時間に変わりはない上、苦味のあるアミノ酸の割合が高くなって、苦味を感じてしまうことがあるという。
●5~12時間かけて戻す
干し椎茸は冷水で、旨味成分のグアニル酸が最大になる5時間後を目安に戻すのが好ましい。ただし、椎茸の種類によって戻る時間が異なるので、どんこ椎茸やこうこ椎茸なら12時間位、こうしん椎茸の場合6時間くらいかけて戻す。朝、水に浸しておいて夕方調理するくらいがちょうどいい頃合いである。
2. 豆類を「戻す」コツ
●豆はなぜ戻すのか
豆は調理で柔らかくなるので戻す必要がないのではと思われるかもしれないが、煮る前にあらかじめ吸水させることで、ゆでる時の熱が豆全体に均一に伝わり、煮えむらを防ぐ効果があるる。大豆など一般的な豆はざっと洗ってホコリなどを取り除いてから、たっぷりの水に浸して戻す。
●水の量はどのくらい?
豆を浸す水の量は豆の重量の4倍くらいが目安である。ひたひたの量では豆が水を吸水した時に水面から出てしまう豆がある。するとその豆は充分吸水できなくなるので、かならずたっぷりの水で戻す。
●浸水時間はどのくらい?
豆の種類や温度などにもよるが、一般的に浸水時間は6時間程度である。「一晩置く」と表現しているレシピが多く、充分に水を吸ってふっくらした豆に仕上がる。
●戻さずに使う豆もある
あずきやレンズ豆は戻さずにそのまま煮る。あずきは種皮からは吸水せず、種瘤からのみ吸水する。そのため豆全体に吸水させようと思うと非常に時間がかかる。あずきを煮る時は水に浸さずに、そのまま煮てもよい。ただ、冷蔵庫で一晩吸水させると20分ほど早く煮える。レンズ豆は扁平な極小粒なので、水に戻さなくてもすぐに煮える。
3. 戻さずに使う乾物
●あずき
あずきは豆類のなかでも非常に吸水しにくい豆である。種皮から水を吸わず種瘤から吸水するが、長く水に浸しておくと、その種瘤部分から水溶性成分が溶けだし、発酵することがある。そのため水に戻さない、あるいは一晩戻してから使用する。圧力鍋を使うととてもスピーディーに煮ることができる。あずきを煮る時は、およそ1リットルの水によく洗ったあずき150gを入れ強火にかけ、沸騰したら豆が踊る状態で10分ほど煮る。いったんざるに上げて水を切る「渋切り」を行い、再び新しい水に入れ、沸騰したら豆が踊る状態で20分煮る。その後弱火にして10分ほど煮たら火を止めて蓋をしたままさらに10分ほどおくとよい。豆が踊るとは、絶えず豆が湯の中で動いている状態である。
●平湯葉
平らな板状の「平湯葉」という湯葉があるが、これは濡れ布巾に挟んで戻す。水に浸けて戻すと、戻しすぎたり破れやすくなったりするのである。
●ライスペーパー
ライスペーパーも破れやすいので、濡れ布巾に5分ほど挟んで戻す。もしくは水にくぐらせ、キッチンペーパーに挟んで2分戻す。
●戻し汁が使える食材
干し椎茸、かんぴょう、昆布は精進料理のだしとして古くから使われてきたため充分に活用したい。また、禅宗の寺では切り干し大根や大豆の戻し汁も料理に使う。これは切り干し大根や大豆の戻し汁にアクが含まれていないからでもある。水で戻す前にたっぷりの水でしっかり洗うとよい。
結論
食材を干すことは、冷蔵や冷凍の技術が発達していなかった時代に食物を長期保存するための知恵であった。また、同時に干すことにより栄養や旨みが凝縮され、干すことで新しい価値が生まれることもある。干し椎茸や豆類など、干した食材を正しく戻して料理に活用してみよう。