1. ニンニクの芽とは?
まずは、中華料理などによく使われるニンニクの芽の基本から解説していく。
実は「芽」ではなく「茎」
ニンニクの芽というが、厳密には私たちが普段目にするニンニクの、頭から伸びる茎のことを指す。その青々とした見た目から「茎ニンニク」と呼ばれることもある。一見するとネギに似ているが、食感もややネギに近くシャキシャキとしている。料理の彩りのほか、食感に変化をつけるために加えられることも多い。
日本では生産が盛んでない
ニンニクそのものの日本での生産量は比較的多い。しかしニンニクの芽を収穫目的で栽培している農家は極端に少なく、芽が伸びるよりも先にニンニクとして収穫される。日本のスーパーなどで見かけるニンニクの芽はほとんどが中国産だ。
においはある?
ニンニクといえば気になるのがにおいだろう。あのにおいの元は「アリシン」と呼ばれる成分だ。ビタミンB1の吸収を促し疲労回復に効果を発揮するとされる成分である。ニンニクの芽にはアリシンが含まれているためにおいはあるが、鱗茎(ニンニクの球)よりも少ないため、気にしすぎることはないだろう。
2. ニンニクの芽の栄養
ニンニクが栄養豊富なのは広く知られているが、その芽にはどういった栄養素が含まれているのだろうか?
ニンニクの芽の優れた栄養素
ミネラルが豊富に含まれているほか、カロテンも多い。ミネラル量に関してはカルシウムを除き「ニンニク」のほうが勝っている。しかしニンニクのカロテン含有量は極微量だ。抗酸化作用を持つカロテンには、細胞の老化を防ぐ効果が期待できる。また体内でビタミンAに変化し、肌を健康に保つ効果があるとされている。エイジングケアや美容に気を使っている方には、とても魅力的な成分だといえるだろう。
ニンニクの芽100gあたりの主な栄養素
- エネルギー:45 kcal
- たんぱく質:1.9g
- 脂質:0.3g
- 炭水化物:10.6g
- ナトリウム:9mg
- カリウム:160mg
- カルシウム:45mg
- マグネシウム:15mg
- リン:33mg
- 鉄:0.5mg
- 亜鉛:0.3mg
- 銅:0.06mg
- マンガン:0.35mg
- βカロテン:710μg
- ビタミンK:54μg
- ビタミンB1:0.11mg
- ビタミンB2:0.1mg
- ナイアシン:0.3mg
- ビタミンB6:0.31mg
- 葉酸:120μg
- パントテン酸:0.29mg
- ビタミンC:45mg
- 食物繊維:3.8g(水溶性0.7g/不溶性3.1g)
上記は文部科学省「日本食品標準成分表」(※1)によるものだ。こうしてみるとミネラルやカロテンのほか、ビタミンCもたっぷり含まれていることが分かる。
3. ニンニクの芽の旬と選び方
続いて、美味しいニンニクの芽を選ぶポイントを解説していこう。
国産の旬は5~6月初旬
量は少ないものの、国産のニンニクの芽もある。旬は5~6月頃であり、それ以外の時期に生のニンニクの芽を見かけることはあまりない。そのため、旬の時期ではないときにニンニクの芽がほしいときは、スーパーや農家のホームページなどで冷凍したものを通販していないかチェックするなどしよう。
輸入ものはほぼ通年手に入る
一方、中国産など輸入もののニンニクの芽は、ほぼ一年中手に入れることが可能だ。産地にこだわらないという方で、国産の旬の時期以外にほしいという方は輸入ものを選ぶのもよいだろう。
選び方
葉の緑色が鮮やかで茎を軽く押したときに柔らかく、弾力が感じられるものが美味しいとされている。切り口が青々しているかどうかも確認しよう。また茎は曲がったものよりも、ピンとまっすぐなものの方がシャキシャキしている。食感も魅力のひとつなので、できるだけまっすぐなニンニクの芽を選ぶことをおすすめする。
4. ニンニクの芽の保存方法
ニンニクの芽が多めに手に入ったときや、使いきれずに残ってしまったときの保存方法をお伝えする。
冷蔵保存は2〜3日が目安
2〜3日以内に使い切るのであれば、保存容器などに入れて冷蔵庫で保存できる。だが3日以上経つとしなびてしまい、シャキシャキ感が損なわれてしまうので覚えておこう。美味しいまま長期保存したい場合は冷凍保存がおすすめだ。
冷凍保存なら1カ月ほどもつ
冷凍する前に下処理をしておこう。沸かしたお湯に塩をひとつまみ入れ、1分ほどニンニクの芽を茹でる。ニンニクの芽につぼみがついている場合もあるが、つぼみの部分は10数秒ほど茹でればOKだ。茹でたらすぐに冷水で冷やし、ザルにあげて水気をしっかり切ろう。水気が残っていると、冷凍したときに霜焼けしやすくなるため注意してほしい。下処理を終えたらラップとジッパー付き保存袋の二重で包み、冷凍庫へ入れて1カ月を目安に使い切ろう。
解凍方法
使う量などにもよるが、凍ったまま鍋やフライパンに入れると急激に温度が下がってしまうおそれがある。それに水気が出て、せっかくの香りも味も飛んでしまう。そのため、冷凍保存したニンニクの芽を使うときは、事前に冷蔵庫である程度解凍してからにしよう。
5. ニンニクの芽の下処理とおすすめレシピ
最後に、ニンニクの芽を使う際の下処理やおすすめのレシピをいくつか紹介する。
下処理について
とくに難しい下処理などはないが、基本的にはニンニクの芽の根元のほう(硬い部分)は切り捨てる。目安としては2cmほどだ。あとは好きなようにカットすればよいのだが、根元近くは筋っぽさがあるため、料理に使うときは斜め切りなどにするとよいだろう。
肉料理
簡単に調理するなら豚肉や牛肉、鶏肉などとの炒め物がおすすめだ。塩コショウでも、醤油やオイスターソースでもよいだろう。コチュジャン炒めや甘辛炒め、ピリ辛炒めなども食欲をそそる。なおニンニクの芽はやや青臭さがあるため、炒めるときはよく油を絡めるようにしよう。
野菜料理
オイスターソースでニンジンやキクラゲ、あるいはちくわやこんにゃくなどと炒めたり、ニンニクとベーコンなどと一緒にじゃがいもと炒めたりしても美味しい。ナムルやきんぴら、単に茹でたものをマヨネーズであえるだけといった食べ方もシンプルだが美味しいので試してみてほしい。
卵料理
細かく刻んで卵焼きの中に入れたり、卵とニンジン、しいたけなどと一緒に炒めたり、ベーコンや白ネギなどと一緒に炒めたりするのもおすすめだ。卵料理に使うと、黄身の黄色とニンニクの芽の緑など彩りもよくなる。
結論
ニンニクの芽はその独特の風味と食感から、癖になってしまう方も多い。だが日本では生産農家が少なく、国産を手に入れることは難しい。だからこそ、スーパーなどで運よく国産のニンニクの芽を見つけたら、多めに購入して正しく保存し、いろいろな料理に使って楽しんでみよう。
(参考文献)
- 1:文部科学省「日本食品標準成分表」
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365419.htm