1. 素材の味を見事に引き出す日本の出汁

・そもそも出汁とは何なのか?
出汁とは、動物性や植物性の天然素材を煮出す、水に浸すなどして旨味成分を抽出したもの。その歴史は縄文時代に遡り、食物を煮た「煮汁」が原点といわれている。やがて昆布や鰹節などの熟成加工品で出汁をとる食文化へ発展する。これは西洋のブイヨンとは一線を画す日本固有の食文化である。脂は一切使わず、素材の旨味のみで感動的なコクや風味を生み出すのだ。この旨味成分も素材によって違い、昆布の旨味成分はグルタミン酸、鰹節や煮干しはイノシン酸、椎茸はグアニル酸である。これらの旨味成分の効果で、調味料は少なめでも深みのある味の料理を作ることができる。
・料理によって使い分ける
植物性の昆布出汁は、動物性の食材に合わせると旨味が更に増すため、魚や肉の煮物、豚汁などによく合う。鰹節や煮干しなど動物性の出汁は、植物性の材料を引き立てるため、野菜の煮物、おひたし、味噌汁などに合う。そして、植物性の昆布に動物性の鰹節などを合わせて出汁をとることによって、更なる旨味の相乗効果が生まれる。まず基本となる昆布の特徴を知って、合わせ方を模索してみるのがいいだろう。
2. 出汁に使える昆布の種類

昆布でとる出汁は上品でクセが無い。素材の味、香りを活かした繊細な料理には最適な出汁だ。和食の出汁の基本といえる昆布だが、昆布の種類によって味や香りの特徴が違う。日本で採れる昆布の約90%が北海道産で、その他は青森県、岩手県、宮城県の三陸海岸沿いで採取される。産地によって昆布の種類が異なり、用途も違う。出汁として使われる昆布は4種類ほど。それぞれの特徴を知って上手に使い分けてほしい。
- 真昆布・・・産地は函館沿岸。厚みがあり幅広い形状で昆布の高級品とされている。香りが穏やかで上品な甘みがあり、清澄な出汁がとれる。すまし汁などに最適。
- 羅臼昆布・・・産地は羅臼沿岸。茶褐色で香りが良く柔らかい。黄味を帯びた濃厚でコクのある出汁が特徴。
- 利尻昆布・・・産地は利尻、礼文、稚内沿岸。真昆布に比べてやや硬め。透明でクセの無い出汁がとれ、懐石料理などに使われる。
- 日高昆布・・・産地は日高沿岸。別名、三石昆布。黒味を帯びた濃い緑色で柔らかい。磯の香りが強めの出汁。出汁以外にも佃煮や昆布巻、おでんの具にも使われる。
3. 基本の昆布出汁のとりかた

昆布で出汁をとる方法には、煮出し法と水出し法の2種類がある。煮出し法は昆布を火にかけることで、水出し法よりも短時間で濃厚な旨味を引き出せるメリットがある。水出し法は昆布を分量の水に入れるだけという手軽さと、雑味の少ないすっきりとした出汁がとれるのがメリットだ。
■煮出し法
水 1ℓ
昆布 10g
昆布 10g
- 昆布の表面を固く絞った布きんなどでサッと拭く。
※昆布の表面に付いている白い粉は旨味成分のため水洗いはしない - 分量の水に昆布を30分位漬ける
- やや弱めの中火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す
煮出し法で最も間違えやすいポイントは、「3.沸騰直前に取り出す」という点だ。料理初心者は、ぐつぐつと煮た方が昆布の出汁をたっぷり取ることができると考えてしまいがちだが、煮すぎるとえぐみや粘り成分が溶け出し、風味を損なうためかえって逆効果だ。
目安としては、「鍋底から小さな気泡がフツフツ上がってきた」ときがねらい目。タイミングを逃さず、昆布を取り出す。最初は心配になってしまうかもしれないが、これくらいでも十分に昆布の濃厚な出汁は出てくれるものなのだ。
目安としては、「鍋底から小さな気泡がフツフツ上がってきた」ときがねらい目。タイミングを逃さず、昆布を取り出す。最初は心配になってしまうかもしれないが、これくらいでも十分に昆布の濃厚な出汁は出てくれるものなのだ。
■水出し法
水 1.5ℓ
昆布 20g
昆布 20g
- ウォーターポットにミネラルウォーターを注ぎ、2~5㎝幅にカットした昆布を3時間以上漬ければ完成。(できれば一晩置くとベスト)
※冷蔵庫に保存し1週間程度で使い切ること。夏場などは傷みやすいため、なるべく早めに使い切る
結論
昆布出汁は、意外に簡単に作れることがおわかりいただけただろう。化学調味料では出せない、天然昆布の旨味でワンランク上の和食に挑戦してはいかがだろうか。