ニシンが美味しい旬はいつ？季節によって味が変わるってホント？

まずはニシンの特徴、産地、旬についてみていこう。

ニシンの体長は約30cmで、見た目はマイワシに似ている。大きな群れで回遊し、旬の春の産卵時に、北海道沿岸に集まってくる。卵の数は平均5万粒で、これがカズノコだ。また、びっしりと卵を産み付けられた昆布は子持ち昆布として知られる。

ニシンの産地はほとんどが北海道だが、産卵時期、回遊範囲などで異なる系群に分かれる。大規模回遊のサハリン系群は3～6月下旬、小規模沿岸回遊の石狩湾系群は1月下旬～5月下旬、北海道太平洋沿岸を回遊するニシンは9～11月下旬頃に旬を迎える。全体的に見ると漁獲量が多い季節は春で、旬は春といえるだろう。

旬を迎えた春のニシンは、腹に卵や白子をもっていて美味だ。鮮度がよければ湯引きや煮付けでいただこう。ド定番の塩焼きももちろん旨い。マイワシを上品にしたような、日本人好みの味わいが楽しめる。

現在のニシンの漁獲量は1万4千tだ。しかし、明治時代の終わりから大正時代にかけて、最盛期には100万t近くの漁獲量があった。北海道の小樽では、旬の時期にニシンで財をなしたニシン長者たちの豪勢な「ニシン御殿」が立ち並んだ。しかし、その乱獲の影響か、昭和の初めにはわずか約1万tにまで落ち込んでしまう。いまでは、長年にわたる地道な種苗や放流で、徐々に漁獲量が回復している。

北海道日本海沿岸のニシンの旬は春であるが、同じく北海道の太平洋沿岸で漁獲されるニシンは秋に旬を迎える。春のニシンとの違いや特徴、味をみてみよう。

一般的に、魚は産卵前（卵を腹に持つ前）にコンディションを整え、身体に栄養を蓄える。魚の種類にもよるが、この産卵前に一番脂がのって美味しい魚が多いようだ。しかし産卵前は遠洋で回遊しているため、漁獲量は多くない。逆に産卵期には浅瀬に近づくため、漁獲量が多くなる。

ニシンも例外ではない。北海道日本海沿岸で漁獲できる春は、漁獲量が多く、卵や白子を含め美味しくいただける旬だ。一方、北海道太平洋沿岸で漁獲できる秋は、漁獲量は多くないが、魚そのものを美味しくいただける旬といえるだろう。季節がめぐるように魚の体調も変化し、美味しさや味わいも変わる。

春と秋に旬を迎えるニシンの美味しい食べ方を季節ごとにみていこう。

塩漬けされたカズノコを塩抜きして、好みの味付けでいただこう。定番はお節料理に欠かせない出汁で味付けをしたカズノコだ。そのほかにも、ポテトサラダに混ぜたり、クリームチーズとおかかで和えたりしても美味しい。春が旬のカズノコのプチプチ感がたまらならい。

3枚におろしたニシンに、レモン汁、オリーブオイル、塩こしょうを混ぜあわせたドレッシングをかけていただこう。ラディッシュやセロリで彩りを加え盛り付けると鮮やかだ。秋が旬のニシンは刺身で食べると格別の味を楽しめる。ただし、アニサキスが寄生しているおそれがあるため、「刺身用」と記載されているニシンを選び、十分に注意して作ろう（※1）。

ジブリ映画「魔女の宅急便」で、キキが女の子に届けるパイは、なんとニシンのパイ。焼いたニシンに、野菜のペーストとホワイトソース、チーズを重ね、パイをのせてオーブンで焼こう。春が旬のニシンでも、秋が旬のニシンでも美味しくいただける。

ニシンは、春も秋も味わえる、古くから日本人に愛されてきた食材である。漁獲量は以前のように多くないので、北海道以外の地域では入手が難しいかもしれない。お取り寄せを利用して、ぜひ、春に旬を迎えるニシンと秋に旬を迎えるニシンを食べ比べてみてほしい。

（参考文献）

※1出典：アニサキスによる食中毒（札幌市）