- 梅干し:黄色く熟した梅を塩漬けにして天日干しした、昔ながらの製法によるもの
- 調味梅干し:梅干しを塩抜きして、昆布やかつお節、はちみつなどを加えた調味液に漬けたもの。一般的な梅干しより塩分が少ないが、添加物が含まれる
- 梅漬け:カリカリ梅のこと。塩漬けにした梅干しを天日干しせず、硬く仕上げたもの
- 白干し梅:塩のみで味付けしたシンプルで伝統的な梅干し
- 赤しそ漬け:梅干しを赤しそに漬け込み赤く染めたもの。塩抜きしてから作る調味梅干しタイプもある
- はちみつ漬け:塩抜き後はちみつで味付けした、甘みのある調味梅干し
- かつお梅:塩抜き後、醤油やみりん、かつお節で味付けした調味梅干し
1. 梅には実のできるものとできないものがある?
早春の花である梅には、「春告草」や「風待草」をはじめ、「好文木」「木の花」「匂草」「初名草」など、さまざまな別名がある。花の姿や香り、さらに実を楽しめるため、鑑賞用としても食用としても古くから親しまれてきた。梅は、用途の違いにより「花梅」「実梅」の2種類に分けられる。それぞれの特徴を見ていこう。
花梅とは?
花の色や香り、樹形、咲き方などを楽しむことを目的に改良された品種である。鑑賞用として育てられた梅のため、実は食用に不向きなものが多い。白やピンク、赤などの美しい花を咲かせる。
【花梅の種類】
花梅は、大きく3系統に分けられている。それぞれの種類や代表的な品種は下記の通りだ。
■野梅系:原種に近い種類で花や葉が小さく、枝は細く多い。香りがよい。
・野梅性(代表的な品種:初雁、冬至、道知辺など)
・難波性(代表的な品種:難波紅、御所紅、蓬莱など)
・紅筆性(代表的な品種:紅筆、内裏、古金欄など)
・青軸性(代表的な品種:月影、白玉など)
■緋梅系:野梅系から派生した種類で、花だけでなく枝や幹の内部も紅色をしている。
・緋梅性(代表的な品種:蘇芳梅、鹿児島紅など)
・紅梅性(代表的な品種:紅千鳥、鴛鴦、緋の司など)
・唐梅性(代表的な品種:唐梅など)
■豊後系:梅と杏の交雑種で、枝が太く葉や花弁が大きい。香りは弱い。
・豊後性(代表的な品種:武蔵野、八重揚羽、滄溟の月など)
・杏性(代表的な品種:八朔、江南所無、緋の袴など)
実梅とは?
鑑賞を楽しむ目的の花梅に対して、実を食用とするために品種改良され育てられたのが実梅である。花が咲くだけでなく、多くの実がなるのが実梅の特徴だ。食用としてだけでなく、花の鑑賞も楽しむことができる。
花梅は花を、実梅は実を楽しむものとされているが、花梅にも実を食べられる品種はある。そのため、実梅と花梅の境界線は曖昧といわれている。
2. 実梅の種類
実梅の種類も非常に多い。本記事では、広く名前が知られる南高梅をはじめ、ごく一部の代表品種10種類について詳しく紹介していく。
南高梅
最も知名度が高く、生産量の多い実梅である。梅の代表的産地である和歌山県で多く生産され、紀州の梅とも呼ばれる。実は25gほどの中粒で、種が小さく果肉が厚い。皮が薄く果肉がやわらかく、ジューシーな食感が特徴だ。6月中旬~下旬に収穫され、梅酒や梅干しなどをはじめ、さまざまな食品に加工される。
小粒南高
南高梅と同じ品質で、一回り小さい16~22gほどの中粒品種である。一本の樹から多くの実を収穫できる。主な産地は和歌山県で、6月上旬からが旬となる。主に梅干しの原料として使われる。また、花粉の量も多いため南高梅の受粉樹としても用いられる。
古城
青梅の一級品で、25~30gほどの中粒品種である。濃い青みと、かたく締まった肉厚な果肉が特徴だ。「青いダイヤモンド」という別名をもつ。和歌山県で主に生産されるが、生産量が減少傾向にあり希少性が高まっている。5月下旬から収穫され、梅酒や梅ジュース、梅シロップのほか、梅干しにも使われる。
鶯宿
28gほどの大きさの青梅で、濃緑色の美しい果皮をもつ。古来種として古くから親しまれてきた。実がかたく香りが強い。主に奈良県や徳島県、大分県などで生産され、6月中旬からが旬となる。主に梅酒や梅ジュース、梅シロップ、カリカリ梅などに使用される。また、受粉樹としても用いられる。
青軸
実が25gほどの中粒品種で、香りのよい白い花が咲くため鑑賞も楽しめる。全国的に広く栽培され、古くから親しまれてきた梅である。6月上旬からが旬となる。青梅は梅酒に使用され、熟し始めて黄色くなったものは梅干しやジャムに向く。
白加賀
20~25gほどの大きさの実をもつ中粒品種で、国内で最も多く植樹されている。形の美しい果実、繊維の少ない緻密で肉厚な果肉が特徴だ。南高梅が関西で生産されるのに対し、主に茨城県や群馬県など関東地方で生産されている。6月中旬~下旬にかけてが旬となる。梅酒や梅シロップの原料が主な用途だが、状態のよいものは梅干しにも使用される。
豊後
50gほどの大きな実が特徴の、大梅の代表品種である。梅と杏の交雑種で、淡いピンク色の花が咲くため庭木として鑑賞も楽しめる。種が小さく果肉が多く、酸味が少ない。大分県発祥の梅だが、青森県などの東北地方や長野県など、寒冷地でも多く生産される。6月中旬が旬で、梅酒や梅シロップに適している。また、酸味の少ない梅干しを作りたい場合にも向く。
紅映
30~40gほどの大粒の実をもつ高級品種である。種が小さいため果肉が厚く、酸味は弱い。福井県のみで栽培され、日光を浴びた部分が鮮やかな赤色になる。6月下旬に旬をむかえる。酸味控えめの梅干しに加工され、高品質なものができる。また、梅酒にも使用されコク深い味わいを楽しめる。
十郎梅
実が30gほどの大粒品種で、種が小さく肉厚である。また、やわらかい肉質も特徴だ。神奈川県小田原市で生産される、オリジナルブランドの品種である。皮が薄く傷つきやすく、結実も不安定だが、肉質がやわらかく味もよい。旬は6月下旬で、主に梅干し用として収穫される。
竜峡小梅
3~5gほどの小粒品種で、小梅では最も生産量が多い。信濃小梅の改良品種で、果肉が多い。主に長野県で栽培され、5月下旬~6月上旬に収穫される。カリカリ梅の原料として用いられるほか、一般的な梅干しにも使用される。
3. 梅干しの種類
梅の主な加工品である梅干しにはさまざまな種類があり、製法や味付けなどが異なる。代表的な梅干しの種類を紹介しよう。
製法の異なる3種類の梅干し
梅干しには、下記のように製法が異なる3つのタイプがある。
梅干しの味付けの種類
味付けによって異なる代表的な梅干し、4種類を紹介する。
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結論
梅には花を楽しむ花梅と、実を食べる実梅の2種類があり、さらにそれぞれさまざまな系統や品種がある。実梅も、粒の大きなものや小さなもの、梅干しに向くもの、梅酒や梅ジュースに向くものなど、品種によって特徴が異なる。また、梅干しの種類もさまざまだ。梅を食べる際には、好みや用途に合わせて適したものを選ぶとよいだろう。
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