目次
1. ステンレスが錆びにくい理由

ステンレスは英語表記で「stainless steel」であり、直訳すると「錆びない鋼」である。まずは、金属なのに錆びにくいとされる理由から解説しよう。
耐食性に優れている
主成分の鉄に、クロムやニッケルなどの金属を添加した合金鋼がステンレスである。鉄だけでは錆びやすいのだが、そこに耐食性(錆びにくさ)に優れたクロムやニッケルを添加して作られている。
自己修復能力がある
鉄に添加されたクロムは、酸素と結合してステンレスの表面に極薄の酸化皮膜(不動態皮膜)を作る。これが錆の発生を防止する役割を果たしている。酸化皮膜は、たとえ傷ついても酸素に触れるだけで瞬時に再生する。つまりステンレスには自己修復能力があるのだ。クロムの含有量を増やして耐食性を高め、酸化皮膜を強化するニッケルを添加することで、さらに耐食性を向上させている。これが、ステンレスが錆びにくい理由だ。
2. ステンレスが錆びる原因とメカニズム

極薄ではあるが非常に強い酸化皮膜で覆われているステンレスが錆びるのはなぜなのだろうか?
もらい錆
たとえば、ステンレスのシンクにアルミ缶やカミソリの刃など金属を放置すると茶色の汚れがつく。これは、水分と反応した金属が腐食を起こしてできた錆がステンレスの表面に移ったもので「もらい錆」と呼ばれている。ステンレス自体は錆びにくいが、もらい錆ができてしまうとその部分から腐食が進み、症状が悪化することがあるため注意が必要だ。
塩分の付着や残った汚れ
ステンレスに塩や油、あるいは水や食べカスなどが付着して残ったままでいると、クロムが酸素と結合できず酸化皮膜が形成されない。その結果、錆びることがある。ステンレスは塩分に対する耐食性はそれほど低くない。だが長い間塩分が付着した状態が続くと、ほかの金属のように錆が発生してしまうことがあるので覚えておこう。
激しく傷ついている
物を落下させるなどしてステンレスの表面が激しく傷つくと、酸化皮膜が破壊されてしまうことがある。そこへ水分や塩分、汚れなどが付着することで錆びる場合がある。
薬品が付着している
薬品や洗浄剤などの種類・成分・濃度などにもよるが、酸やアルカリなどが原因で錆びることもある。
3. ステンレスが錆びるのはどんな箇所?

とくに錆に気をつけたいのは次のようなポイントだ。
汚れや水が溜まりやすい箇所
角や裏、曲がっている箇所や溶接されている箇所などは、お手入れが行き届きにくく汚れが溜まりやすい。上述のように、汚れがあると酸化皮膜が形成されず錆びやすくなる。
金属と接している箇所
ステンレス以外の耐食性の低い金属と接している箇所も、その金属が錆びてしまうともらい錆が発生するおそれがある。
深い傷がある箇所
水分や汚れが入り込めてしまうほどの傷がある箇所も、酸化被膜が形成されず錆を招くおそれがある。
汚れがある・濡れている箇所
汚れた台の上に置いたり、水に濡れたままの状態で耐食性の低い金属の上に置いたりした場合なども、錆が発生しやすくなるので気をつけよう。
4. ステンレスの軽度な錆の落とし方

それでは、ステンレスに発生した錆の落とし方を紹介していこう。まずは、軽度の錆から解説する。
軽度の錆はメラミンスポンジで
用意するモノはメラミンスポンジだけでOKだ。水をつけて錆の部分をこするだけで落とせることがあるので、まずは試してみよう。ただし力を入れすぎるとステンレスが傷つくおそれがある。円を描くように優しくこするのがコツだ。落ちた錆汚れや残っている水分は乾いた布で拭き取っておくことも忘れないようにしよう。
5. ステンレスの頑固な錆の落とし方

続いて、メラミンスポンジのみでは落とせないほどの頑固な錆の落とし方を解説する。
頑固な錆はクリームクレンザーや重曹で
こうした錆には研磨作用を持つクリームクレンザーや重曹を塗布し、布やメラミンスポンジで円を描くようにこすってみよう。布やメラミンスポンジの代わりに、丸めたラップやアルミホイルを使ってもよい。
6. ステンレスの赤錆の落とし方

もうひとつ、赤錆の落とし方についても知っておいたほうがよいだろう。赤錆とは主に、水道水に含まれる微量の鉄が反応したことによってできる、文字通り赤い色の錆だ。赤錆はステンレスにこびりついているため、クリームクレンザーや重曹では落としきれないことがある。強くこするとステンレスが傷つくため、無理に落とすことは控えよう。
赤錆はハイドロハイターなど還元系漂白剤で
衣類用の還元系漂白剤(粉末漂白剤)を使って落とせる場合があるので試してみよう。「ハイドロハイター」などがそれに当たる。錆の部分に粉末をふりかけ、その上から水をたらしてメラミンスポンジでこするといった方法だ。弱アルカリ性の粉末が、酸化した錆を中和して落としてくれる。
頑固な赤錆はクエン酸とクレンザーで
クエン酸には赤錆を溶かす働きがある。布に含ませて赤錆にのせ、しばらく放置したあと水洗いをしてみよう。それでも落ちないときは、クエン酸とクレンザーを混ぜたものを赤錆にのせ、布やメラミンスポンジなどでこすってみよう。
7. 錆を落としたら乾燥させることが重要

上記の方法で錆を落とすことができたら、しっかり乾燥させることを心がけてほしい。錆が落ちた直後のステンレスは酸化被膜がない状態なので、水分や塩分、汚れなどが付着してしまうと再発のおそれがあるためだ。
8. ステンレスのシンクや浴槽、包丁などの錆予防

最後に、ステンレスの錆を予防する方法もお伝えする。せっかくキレイにしたステンレスに錆が再発しないよう、次のようなポイントに気をつけよう。
水気は拭き取る
錆を防ぐには、金属が水に触れないことが重要なポイントになる。使用後のシンクや浴槽は水気を残さず拭き取っておこう。
金属は置きっぱなしにしない
缶詰やカミソリ、ヘアピンなど金属を含むものはステンレスに長期間置きっぱなしにしないことだ。面倒がらず、見つけたらすぐにほかの場所に移動させるか廃棄するなどしよう。
油汚れや塩素系漂白剤はすぐに洗い流す
油汚れを放置したり、塩素系漂白剤を十分に洗い流さなかったりするのはNGだ。酸化皮膜が破壊される、あるいは形成できないなどで錆が発生してしまうおそれがある。すぐに洗い流し、しっかり乾燥させよう。
表面をできる限り傷つけない
金属たわしなどでステンレスをこすると、表面の酸化皮膜が傷ついて錆が発生する原因になる。できる限り傷つかない方法でお手入れをしてほしい。
ステンレス製の浴槽の錆予防
ステンレス製の浴槽は、内側や底に茶色の汚れが付着する場合がある。多くの場合、それらはもらい錆だ。貯水槽や井戸水中に含まれる鉄が主な原因と考えられている。水道の蛇口にフィルターなどを取り付けて鉄を除去するなどしよう。
ステンレス製の包丁の錆予防
使用後は水気をよく切って風通しのよい場所で完全に乾かし、湿度の少ない場所に片付けるのが対策だ。なお新聞紙には湿気を吸収する働きがあるので、包丁をくるんでおいてもよい。
結論
ステンレスの表面は酸化皮膜で覆われているため確かに「錆びにくい」ものではあるが、お伝えしたようにさまざまな原因で錆びることがある。メカニズムを理解して取り扱うとともに、再発させないよう予防策も頭に入れておこう。ステンレス製品の魅力のひとつは光沢だ。錆に気づいたらできるだけ早く落とし、光沢を保つようにしたいものだ。
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