1. 納豆の種類
ひと口に「納豆」といっても、いくつかの種類がある。まずはそれぞれの特徴を簡単に解説しておこう。
納豆の種類と違い
文部科学省「食品成分データベース」(※1)で見てみると大きく糸引き納豆・ひきわり納豆・五斗納豆・寺納豆の4種類が確認できた。糸引き納豆は、よく見られる小粒や大粒の納豆だ。ひきわり納豆は、大きく完熟した大豆を文字通り挽き割ったものである。スーパーなどで売られている納豆の多くがこの2つのいずれかだ。
そのほか、糸引き納豆に塩や麹菌などを混ぜて発酵させたものが五斗納豆、麹菌を加えて発酵させたものが寺納豆である。これらを大別すると、ひきわり納豆と粒納豆になる。なお本稿ではこれ以降「粒納豆=糸引き納豆」として解説させていただく。
そのほか、糸引き納豆に塩や麹菌などを混ぜて発酵させたものが五斗納豆、麹菌を加えて発酵させたものが寺納豆である。これらを大別すると、ひきわり納豆と粒納豆になる。なお本稿ではこれ以降「粒納豆=糸引き納豆」として解説させていただく。
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2. ひきわり納豆と粒納豆の違いは?
ひきわり納豆は、単純に粒納豆を挽き割っただけのもの、というわけではない。違いを詳しく解説しよう。
製法が異なる
- ひきわり納豆
1.大豆を挽き割る
2.皮を取り除く
3.水に浸す
4.煮る
5.納豆菌をかける
6.発酵させる - 粒納豆
1.大豆を水に浸す
2.煮る
3.納豆菌をかける
4.発酵させる
ご覧のようにひきわり納豆は、発酵する前に大豆を細かく割り、皮を取り除いてから発酵させる。粒納豆を細かくすればひきわり納豆になる、というわけではないことがお分かりいただけるだろう。
食感や味わいも異なる
ひきわり納豆は挽き割っているため、納豆本来の旨みが際立っているのが特徴だ。加えて、皮も取り除かれているため柔らかく、なめらかな食感を持つだけでなく消化にもよいとされる。一方、粒納豆は大豆の食感や歯ごたえを感じることができるのが特徴だ。ただし丸呑みせず、よく噛み砕くことが望ましい。
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3. ひきわり納豆と粒納豆の栄養価の違いを徹底比較
文部科学省「食品成分データベース」(※2・※3)による、ひきわり納豆と粒納豆の栄養価の違いを見ていこう。まずはそれぞれの主な栄養一覧を紹介する。なお以下の含有量はカッコ外が「ひきわり納豆」を、カッコ内が「粒納豆」を表している。
100gあたりの主な栄養一覧
- エネルギー:194kcal(200kcal)
- 水分:60.9g(59.5g)
- たんぱく質:16.6g(16.5g)
- 脂質:10.0g(10.0g)
- 炭水化物:10.5g(12.1g)
- ミネラル
└ナトリウム:2mg(2mg)
└カリウム:700mg(660mg)
└カルシウム:59mg(90mg)
└マグネシウム:88mg(100mg)
└リン:250mg(190mg)
└鉄:2.6mg(3.3mg)
└亜鉛:1.3mg(1.9mg)
└銅:0.43mg(0.61mg)
└マンガン:1.00mg(ーmg) - ビタミンE(トコフェロール)
└α:0.8mg(0.5mg)
└β:0.3mg(0.2mg)
└γ:9.0mg(5.9mg)
└δ:5.4mg(3.3mg) - ビタミンK:930μg(600μg)
- ビタミンB群
└B1:0.14mg(0.07mg)
└B2:0.36mg(0.56mg)
└ナイアシン:0.9mg(1.1mg)
└B6:0.29mg(0.24mg)
└葉酸:110μg(120μg)
└パントテン酸:4.28mg(3.60mg) - 脂肪酸
└飽和:1.45g(1.45g)
└一価不飽和:2.21g(2.21g)
└多価不飽和:5.65g(5.65g) - 食物繊維
└水溶性:2.0g(2.3g)
└不溶性:3.9g(4.4g)
納豆1パックあたり40〜50g程度なので、実際の含有量は1食あたり上記の4〜50%程度になる。カロリーや、たんぱく質・脂質・炭水化物という三大エネルギー産生栄養素、脂肪酸などはほぼ変わらないが、ミネラルやビタミン、食物繊維の含有量に若干の差があることに気づく。主な栄養と効能を見ていこう。
ミネラル
ヒトが体内で合成できない栄養素であるため、食品からバランスよく、かつ意識的に摂取する必要がある(※4)。ひきわり納豆に多いのは、塩分の摂り過ぎを調節するうえで重要な役割を果たすカリウムのほか、歯や骨の形成に関わるリンなどのミネラルだ。一方粒納豆に多いのは、人体にもっとも多く含まれ、歯や骨を形成するミネラルであるカルシウム、貧血予防などに効果的な鉄、体内で起こるさまざまな代謝を助けるマグネシウム、それに亜鉛などである。
ビタミン
さまざまな機能を正常に保つために欠かせないビタミンも、ヒトの体内ではほとんど合成できないため、食べ物から摂取する必要がある栄養素だ(※5)。ひきわり納豆に多いのはビタミンE・K・B1・B6・パントテン酸といったビタミンで、粒納豆に多いのはビタミンB2・ナイアシン・葉酸といったビタミンB群だ。とくにビタミンKは、粒納豆が600μgなのに対しひきわり納豆が930μgとかなり多い。ビタミンKは骨の健康を保つうえで欠かせないビタミンなので、老若男女問わず積極的に摂りたい成分だ。
食物繊維
血糖値の上昇をゆるやかにしたり、便秘や腸内環境を改善したり、糖やナトリウムを吸着して体外に外出したりなど、さまざまな効果が認められているのが食物繊維だ(※6・※7)。日本人は不足気味のため意識して摂取したい栄養素だが、ひきわり納豆よりも粒納豆のほうが多く含まれている。これは、ひきわり納豆には皮がないことが理由である。
納豆に期待できる効果とは?
納豆に含まれる栄養素から期待できる効果としては、免疫力の向上や疲労回復、生活習慣病の予防や便秘の改善、エイジングケアや血栓の予防など多岐にわたる。もちろん、納豆だけを食べていればよいというものではないが、やはり優秀な食材であるといえるだろう。
4. ひきわり納豆と粒納豆、どちらを選ぶ?
見た目や食感だけでなく、栄養価に違いがあることも分かってしまうと、今後納豆を買うときにどちらにしようか迷ってしまうかもしれない。ひきわり納豆と粒納豆、もちろん好みはあるかもしれないが、それ以外で選ぶときにポイントになるところを最後にお伝えしよう。
選び方
粒納豆は大きくて食べにくい、柔らかく消化器官に優しいほうがよい、歯や骨の健康を考えているといった方はひきわり納豆の栄養価のほうが合っている。一方、トータル的な栄養価の高さにこだわりたい、血糖値の上昇を抑えたり便秘を改善したりしたいという方は粒納豆が向いている。とはいえ、どちらもなにかの栄養素がずば抜けているというものではない。いずれを選ぶとしても、継続的に食べ続けることが大切だ。
結論
ひきわり納豆と粒納豆は、たしかに栄養価はやや異なるものの、どちらも日本の元祖スーパーフードであることに変わりはない。選ぶ際は好みだけでなく、食べやすさや栄養価、どんな効果を求めるかなどを意識するとともに、1日1パックを継続的に食べ続けられるような食習慣を考えてみてはいかがだろうか?
(参考文献)
- 1:文部科学省「食品成分データベース」
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl - 2:文部科学省 食品成分データベース「豆類_だいず_[納豆類]_挽きわり納豆 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04047_7 - 3:文部科学省 食品成分データベース「豆類_だいず_[納豆類]_糸引き納豆 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04046_7 - 4:厚生労働省「ミネラル _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-035.html - 5:厚生労働省「ビタミン _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html - 6:厚生労働省「食物繊維 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html - 7:厚生労働省「食物繊維の必要性と健康 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html