1. ほうれん草の原産地と語源

カロテンにクロロフィル、ビタミン類、ミネラル類など、栄養満点のほうれん草。私たちの食卓と健康を支える重要な野菜のひとつは、どこで生まれたのだろう。
原産地
ほうれん草は、カスピ海西部の西アジア付近を原産とする葉野菜。自然のままの野生種は見つかっていない。栽培がはじまったのはペルシャ(今のイラン)で、かなり古くから作られていたと考えられている。また現在では、世界のほうれん草の約9割が中国で生産されている。
語源
ほうれん草を漢字で書くと「菠薐草」。この「菠薐」は中国の唐代に「頗稜(ホリン)国」(ペルシャまたはネパールのことをさしている)から伝えられ、それを誤って「菠薐」と名付けたといわれている。中国(唐代)から入ってきたため、当時は「唐菜(からな)」とも呼ばれていた。ちなみに英語名「Spinach(スピナッチ)」は、ペルシャ語が語源になっているらしい。
2. 日本への伝来と普及

ペルシャで栽培されていたほうれん草は、東西に分かれて長い期間をかけて広まり、ヨーロッパ方面で西洋種が、中国方面で東洋種が形成されていった。ヨーロッパへは12世紀に北アフリカから渡り、16世紀にはヨーロッパ全土に広まったと考えられている。東アジアへはシルクロードを通って広まり、7世紀頃に中国へ伝播。日本へは江戸時代に中国から入ってきた。江戸時代末期には日本にも西洋種が入ってきたが、アクの強さからあまり好まれず、広まらなかったようだ。
昭和の初めくらいまではそれほど一般的ではなく、同じ葉野菜なら小松菜のほうが人気だったよう。日本でほうれん草の需要が伸びたのは第二次大戦後。きっかけはアニメの「ポパイ」。主人公がピンチの時にほうれん草の缶詰を食べることから、「ほうれん草=パワーアップ」というイメージが日本でも広まり、一気に定番野菜の仲間入りをした。品種改良が進み、栽培しやすく食べやすくなったことも要因だろう。
昭和の初めくらいまではそれほど一般的ではなく、同じ葉野菜なら小松菜のほうが人気だったよう。日本でほうれん草の需要が伸びたのは第二次大戦後。きっかけはアニメの「ポパイ」。主人公がピンチの時にほうれん草の缶詰を食べることから、「ほうれん草=パワーアップ」というイメージが日本でも広まり、一気に定番野菜の仲間入りをした。品種改良が進み、栽培しやすく食べやすくなったことも要因だろう。
3. 代表的な品種

中国方面へ渡ったものが「東洋種」、ヨーロッパ方面へ渡ったものが「西洋種」。環境などの違いで、それぞれ風味や形状の特徴を得るようになった。現在お店に出回っているのは、両方を掛け合わせた交配種がほとんどだ。
東洋種
日本へ最初に渡ってきた日本ほうれん草の代表格だが、近年はほとんど栽培されていない。
形状:葉先が尖り切れ込みが深く、葉肉が薄い。根元が赤くなる。
味:アクが少なく甘みがある。
適した料理:おひたしなどあっさりした日本料理。
形状:葉先が尖り切れ込みが深く、葉肉が薄い。根元が赤くなる。
味:アクが少なく甘みがある。
適した料理:おひたしなどあっさりした日本料理。
西洋種
欧米で普及し改良された品種。病害虫に強い。
形状:葉が丸く葉肉が厚い。根元はあまり色づかない。
味:アクが強めでやや土臭い。
適した料理:バター炒め、オーブン料理など高温で調理するもの。
形状:葉が丸く葉肉が厚い。根元はあまり色づかない。
味:アクが強めでやや土臭い。
適した料理:バター炒め、オーブン料理など高温で調理するもの。
交配種
「東洋種」と「西洋種」を掛け合わせた「一代雑種」。
形状:剣葉系と丸葉系がある。
味:えぐみが少なく食べやすい。
適した料理:オールマイティに使える。
形状:剣葉系と丸葉系がある。
味:えぐみが少なく食べやすい。
適した料理:オールマイティに使える。
サラダほうれん草
生食用に改良されたもの。
形状:葉肉が薄く茎が細い。
味:アクが少ないため、湯がく必要がない。
適した料理:サラダの他、おひたしなど。
形状:葉肉が薄く茎が細い。
味:アクが少ないため、湯がく必要がない。
適した料理:サラダの他、おひたしなど。
4. 世界各地のほうれん草料理

西アジアを起点に東西へと広がっていったほうれん草。世界各地には、さまざまな料理ある。
トルコではヨーグルトサラダに
トルコで前菜としてよく食べられているのが「ほうれん草とヨーグルトのサラダ」。みじん切りにしたニンニクと玉ねぎとほうれん草を炒め、粗熱が取れたらヨーグルトを加え、レモンなどで味付けしたもの。
インドでは定番のカレー
インドカレー屋さんではおなじみ。鮮やかなグリーンが美しい「ほうれん草のカレー」。本場インドでは、ほうれん草をミキサーでペースト状にしてから加える。肉やチーズなどお好みで組み合わせる。
アメリカではステーキの付け合わせに
ステーキハウスのサイドメニューに必ずといっていいほど載っているのが「クリームド・スピナッチ」。湯がいたほうれん草をホワイトソースで和えたものだ。炒めた後に和えるつくり方もある。野菜嫌いの子供でも食べられそうだ。
イタリアでは蒸し煮にして
イタリアでほうれん草のソテーといえば蒸し煮風のもの。オリーブオイルとニンニクを熱し、ほうれん草をくたくたになるまで蒸し煮にする。短時間でシャキッと仕上げるソテーとはまた違った味わいだ。
結論
おひたしを筆頭に日本の家庭料理には欠かせないほうれん草。栄養価の高い葉野菜としておなじみの食材だが、現在のようなポジションを得たのは意外と最近。長い旅の後、栽培しやすく食べやすく改良されてきた。現在出回るのは交配種がほとんどだが、最近では東洋種の美味しさも見直されつつあるという。見つけたらぜひ味わってみよう。
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