1. 肉の切り方、なぜ重要?

肉を固くする原因のひとつ
見た目は美味しそうな肉料理なのに、食べてみたら肉が固かったりパサパサだったり...。こんながっかりした経験を持つ人は少なくない。せっかくの肉料理を失敗してしまうことは非常に悲しいことだが、なぜこのようなことが起こるのだろうか?加熱しすぎることによって肉の水分がなくなってしまう、調味料を加えるタイミングが悪い、下処理が不十分など様々な理由があるが、肉の切り方もそのひとつ。調理すると肉が固くなってしまうことがよくある人は、肉の切り方に問題があるのかもしれない。
肉が縮んで固くなる!
肉を焼いた時、焼く前と比べて肉が小さくなったり反り返ったりしたことはないだろうか?原因は、肉の縮み。この失敗は日常的に起こりうるが、料理の味だけでなく見た目も悪くなってしまう。特に日本食において料理の見た目は味と同じく重要であり、キレイに料理を仕上げるために肉の縮みは避けたい。更に、肉が縮むと火が通りにくくなり、加熱時間が長くなることで肉が固くなってしまうこともある。また、火の通りが均一でなくなることも。肉の縮みを防ぐには、切り方が重要である。肉を美味しく調理するため、「筋切り」をマスターしよう!
2. 筋切りのポイント

「筋」を断つ
「肉を焼くと縮む」と説明したが、正しくは「肉を焼くと肉の筋が縮む」である。肉の筋が縮むと周辺の肉が引っ張られて反り返りが起こり、結果的に全体的に小さくなるのだ。そのため、筋切りをして肉の筋をあらかじめ切っておくと、加熱による縮みを防ぐことができるのである。鶏のささみのように筋だけを簡単に取り除くことができれば一番良いが、なかなか難しいため、筋に切り込みを入れる。筋の入り方は肉の種類によって異なるため、肉ごとの筋の場所を覚えておこう。
そもそも、なぜ筋は縮む?
肉の筋が縮む理由は、筋肉を構成するタンパク質はもともと鎖状につながっているが、加熱によってこの結合がほどけてその他の分子と結合し、収縮・凝固するためである。一言で説明すると、「筋肉が熱変性を起こすため」だ。筋に切れ込みを入れても熱変性は起こるが、筋が短ければ肉全体が縮んでしまうことはない。肉を切るときには、筋を断つように切ることを意識しよう。
3. 筋切りの方法

では、いよいよ筋切りの方法について解説する。筋を切るには、当然筋がどこにあるのかを見極めなければならない。肉の筋がどこに隠れているのかを知り、しっかりと筋を切ろう!
牛肉・豚肉
生の牛肉や豚肉を想像してみよう。肉には赤身と白い脂身の部分がある。この境にあるのが「筋」だ。この筋を断つことを意識しながら、包丁を立てて赤身と脂身の間に刃先を入れて1cmほどの切れ込みを入れる。3cmほどの間隔を開け、筋全体に切れ込みを入れよう。筋が直線ではなく、カーブしている場所は反り返りが起こりやすい場所である。筋切りの間隔を狭め、特に念入りに切れ込みを入れると焼き上がりがキレイだ。とんかつ用の豚肉やステーキ用の牛肉など厚みのある肉の場合には、同じように裏側にも筋切りをするとよい。
鶏肉
牛肉や豚肉と同じく、鶏肉も筋を切らないで調理すると縮んでしまう。特にモモ肉の筋は固く、筋切りをすることで料理の食感もアップするため、一手間かける価値は多いにある。鶏肉の筋は、牛肉や豚肉よりも見極めにくい。まな板に肉を広げ、白い線状の筋を断つように切り込みを入れる。筋のある部分全体に1~2cm間隔で切り込みを入れてもよい。この場合にも、筋を断つ方向に切ることをお忘れなく!
結論
よく「安い肉は調理すると固くなる」と聞くが、高い肉でも調理方法や下処理によっては固くなる。まずはしっかりと下処理(筋切り)し、素材に合った方法で調理しよう。調味料を加えるタイミングや火加減など、料理は手間と知識で何倍も美味しくなると覚えておこう!