1. ワインの歴史

ワインの新世界を説明するなら、ワインの歴史は避けて通れない。ワインの起源ははっきりとしていないが、紀元前9000~4000年ごろに現在のイランに位置するザグロス山脈で造られたと考えられている。
■ブドウの栽培とワイン造り
ワインの造り方はシンプルだ。ブドウの果汁を絞り、ツボやタルに入れて熟成させることでできる。時間が経つにつれて皮に付いている酵母が働き、ブドウの糖分がアルコールに変化していくのだ。ザグロス山脈から始まったワイン造りは、文明の発展したメソポタミア、エジプトなどに広がっていく。その後、ギリシャに伝わった。ギリシャはブドウ栽培に適した気候だったため、全土で栽培されるようになり、ワイン造りも盛んとなった。当初、ヨーロッパでは、ギリシャのワインが飲まれていたが、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガルなどでもブドウ栽培が始まり、ワイン造りも行なわれるようになった。
■旧世界と新世界
古くからワインが造られていたヨーロッパを、ワインの世界では旧世界またはオールドワールドと呼ぶ。一方で、16世紀半ば以降からワイン造りを始めたヨーロッパ以外の地域を新世界またはニューワールドと呼ぶのだ。新世界に分類される国には、アメリカ、チリ、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン、南アフリカなどがある。新世界でのワイン生産が増えたのは、世界中でワインを飲む人が増加したことが理由だ。そのため、ヨーロッパのワイン生産量では足らず、世界各国で造られ始めた。
2. 新世界と旧世界のワイン

なぜ新世界と旧世界のワインが区別されるのか、疑問に思うのではないだろうか。新世界と旧世界、それぞれで造られるワインの特長を見ていこう。
■ブドウの品種が明確
ワインの味は、ブドウの品種や栽培地域、熟成させるタルなどの容器、熟成期間などさまざまな条件で変化する。旧世界のワインは、ブドウの品種に関わらず産地などで評価されることもあり、知識が深くなければ選びにくいといわれている。しかし、新世界のワインはブドウの品種が表記されていることがほとんどで、味わいを想像しやすい。ワインの知識が深くなくても選びやすいため、新世界のワインは世界中で親しまれるようになっていった。
■価格がリーズナブル
旧世界のワインは伝統的な製法で造られ、国が制定する基準も厳しいことが多い。そのため質の高いワインであるが、価格も高いことが少なくない。一方で、新世界のワインは、伝統的な製法だけに限らず、新しい製法も試されている。これまでかかっていた手間や、設備を新しくするなどして作業を効率化することで、リーズナブルで手に取りやすいものも多いのだ。
3. 新世界の産地

- アメリカ
カリフォルニア産が大半を占める。ブドウ栽培に適した「地中海性気候」で、水はけのよい地形と土壌が特長。ヨーロッパ地域の多彩なワインを、造ることができるため種類が豊富だ。 - オーストラリア
アメリカとほぼ同じ大きさの広大な国土を誇る。沿岸部で古くからブドウが栽培されていたが、第二次世界大戦後に内陸部に広大なブドウ畑が作られた。シラー(シラーズ)から造られた赤ワインや、シャルドネなどの白ワインが有名だ。 - ニュージーランド
昼と夜の寒暖差が大きい。気温の高くなる昼にブドウが熟し、寒くなる夜にはブドウが締まって酸味がでる。赤ワインよりも白ワインの生産が多い。赤ワインのピノ・ノワールや、白ワインのソーヴィニョン・ブランなどが造られている。 - チリ
日照時間が長く、雨が少ない気候。ブドウの実が濡れると、腐敗しやすくなるため、雨の少ないチリでは質のよいブドウが栽培できる。そのため、ワインの味も安定している。赤ワインではカベルネ・ソーヴィニョン、カルメネール、白ワインではソーヴィニョン・ブラン、シャルドネが多い。 - 南アフリカ
ワイン製造の歴史はアメリカやオーストラリアよりも古い。1600年代にオランダ人がブドウ栽培を始め、ワイン醸造の技術も伝わった。ワイン造りに適した気候と土壌で、特徴のあるワインが造られている。赤ワインではカベルネ・ソーヴィニョン、シラーズ、白ワインではシュナンブラン、コロンバールが多い。
結論
ワインでいう新世界とは、ヨーロッパ以外の生産地のことである。新世界で造られるワインは、新しい製法も取り入れられリーズナブルなのが特長だ。安価といっても質が悪いわけではなく、世界で評価の高いワインが多数ある。