1. クレソンの日本への普及
クレソンはもともとヨーロッパで食べられており、日本には明治初期に持ち込まれた。伝来当時は、あくまで外国人向けに提供するために栽培されていた。日本に西洋の食文化が広まるにつれて、クレソンも食べられるようになっていった。また、繁殖力が強いため、畑にとどまらず、水辺や湿地を中心に日本全国へ広がった。
クレソンに付けられた日本名
西洋から伝来した植物には、日本名が付けられることが多い。クレソンの日本名は「オランダガラシ」である。ここで気になるのは、オランダという国名が入っていることだ。なぜ、ヨーロッパのほかの国ではなくオランダなのか。クレソンはオランダだけで食べられていたわけではない。実は命名の背景には、歴史的な経緯が関わっている。また、日本名に含まれるカラシも気になるところだ。クレソンが辛いからカラシなのだろう、という想像はできるが、もう少し掘り下げてみよう。
2. なぜオランダなのか?
クレソン伝来の少し前、江戸時代には鎖国政策が実施された。ヨーロッパ諸国とも国交が途絶えていたが、例外的にオランダとは関係が続いていた。
当時、オランダから科学や医学のほか、食物や文化などさまざまなものが日本に取り入れられた。ヨーロッパの他の国の文化や食物も、オランダを経由して取り入れられたことから、当時の日本人の目にはオランダのものと映ったようだ。その関係か、伝来物の日本名にオランダを含めることが多かったようだ。クレソンの和名のオランダも、この習慣の影響で付けられたと考えられる。
他の例として、たとえばキャベツにはオランダナ、アスパラガスにはオランダキジカクシといった別名がある。おそらくいずれも由来は同じだ。
開国して間もない日本にとって、オランダは西洋諸国の代表だった。そのために、西洋の野菜であるクレソンの日本名にオランダの名前が冠されたと考えられる。
当時、オランダから科学や医学のほか、食物や文化などさまざまなものが日本に取り入れられた。ヨーロッパの他の国の文化や食物も、オランダを経由して取り入れられたことから、当時の日本人の目にはオランダのものと映ったようだ。その関係か、伝来物の日本名にオランダを含めることが多かったようだ。クレソンの和名のオランダも、この習慣の影響で付けられたと考えられる。
他の例として、たとえばキャベツにはオランダナ、アスパラガスにはオランダキジカクシといった別名がある。おそらくいずれも由来は同じだ。
開国して間もない日本にとって、オランダは西洋諸国の代表だった。そのために、西洋の野菜であるクレソンの日本名にオランダの名前が冠されたと考えられる。
3. なぜカラシなのか?
カラシという呼び方は、クレソンの辛味から付けられたと考えられる。実は、この辛味は単にカラシと似ているだけではない。クレソンとカラシの辛味は、ともに同じ物質に由来しているのだ。
その物質とはシニグリンだ。これは単体では辛味を発しない。しかし、潰したりすりおろして細胞組織を壊すと、組織内の酵素であるミロシナーゼと反応し、アリルイソチオシアネート(またはアリルからし油)が生成される。この物質が辛味を発するのだ。
また、シニグリンには食欲増進や消化促進の作用があるといわれる。実際クレソンは、ヨーロッパでは主に肉料理の付け合わせとして親しまれている。一方日本では、カラシは代表的な薬味のひとつだ。付け合わせ・薬味としての効能の面からも、クレソンとカラシのイメージが結び付きやすかったのかもしれない。
伝来当時の日本人がクレソンをカラシにたとえたのは、化学の面からも理にかなっていたのだ。
その物質とはシニグリンだ。これは単体では辛味を発しない。しかし、潰したりすりおろして細胞組織を壊すと、組織内の酵素であるミロシナーゼと反応し、アリルイソチオシアネート(またはアリルからし油)が生成される。この物質が辛味を発するのだ。
また、シニグリンには食欲増進や消化促進の作用があるといわれる。実際クレソンは、ヨーロッパでは主に肉料理の付け合わせとして親しまれている。一方日本では、カラシは代表的な薬味のひとつだ。付け合わせ・薬味としての効能の面からも、クレソンとカラシのイメージが結び付きやすかったのかもしれない。
伝来当時の日本人がクレソンをカラシにたとえたのは、化学の面からも理にかなっていたのだ。
結論
クレソンの日本名からは、江戸~明治時代にかけての国交の歴史や、日本人がクレソンをどう受け入れていったかを想像することができる。そう見ると、クレソンに親しみを感じないだろうか。冒頭でも述べたように、クレソンは栄養価が高いため、ぜひ積極的に食べたい。これを機に、スーパーなどでクレソンを手に取ってみてはいかがだろうか。