1. 辛味成分の差|本わさびvs西洋わさび
「わさび」には、2つの種類がある。1つは昔から日本にある「本わさび」、もう1つは、海外から伝わった「西洋わさび」だ。これらの辛味成分のメインとなるのは、どちらも同じ「アリルからし油(アリルイソチオシアネート)」と呼ばれるものだ。しかし、一方でこれらのわさびの辛味には大きな違いがある。はじめにこの違いと辛味の特徴についてチェックしていこう。
本わさびとは
わさびと聞いて、ほとんどの人が想像するのはこちらの本わさびだろう。ゴツゴツとした緑色のわさびだ。本わさびにはアリルからし油のほか、「ベンテニルからし油」をはじめとした、甘く清涼感のある香りを持つ辛味成分が含まれている。そのため、本わさびをよく味わうと甘みやさわやかさもあり、奥行きのある辛味を演出してくれていることを実感できるだろう。
西洋わさびとは
日本わさびが緑色をしているのに対して、西洋わさびはやや黄みがかった白色をしている。西洋わさびにはアリルからし油のほか、「β-フェネチルからし油」という辛味成分含まれており、どこか大根のような香りを彷彿させるが、特別甘みなどはない。西洋わさびを口にするとまっすぐ突き刺さるような純粋な辛味が感じられる。なお、西洋わさびは一部の地域では「山わさび」とも呼ばれている。
それぞれの使い分け
本わさびといえば刺身、西洋わさびといえばローストビーフなど肉に添えられるイメージがとても強い。しかし、特にこれといった明確な使い分けはされておらず、好みによるところも大きいため、そこまで気にする必要はないだろう。
市販されているチューブタイプのわさびに関しては、生わさびと書かれていれば、西洋わさびを使用したものだ。一方で、本わさびと書かれている商品に関しては、100%の表記がなければ、西洋わさびと本わさびを合わせて作られたものなので注意してほしい。
市販されているチューブタイプのわさびに関しては、生わさびと書かれていれば、西洋わさびを使用したものだ。一方で、本わさびと書かれている商品に関しては、100%の表記がなければ、西洋わさびと本わさびを合わせて作られたものなので注意してほしい。
2. わさびの辛味成分を活かす調理法
わさびといえば辛味のあるイメージだが、実は、生のまま何も手を加えていないわさびには、さほど辛味を感じない。というのも、わさびはすりおろしたり、切り刻んだりなどの刺激を与えることで細胞が壊れ、化学反応が起こり、辛味を持つのだ。
辛味を引き立たせるすりおろし方
わさびの辛味成分をより出したい場合には、力いっぱいにすりおろすのではなく、表面を当てて動かすようなイメージで行う。わさびは細かくすりおろしたほうが、辛味を増すためだ。そのため、おろし板に関しても、なるべく目の細かいものをおすすめする。特別こだわりたいのであれば、鮫皮おろしと呼ばれるものを使うとよいだろう。
そのほかの調理法
わさびは根をすりおろすほかに、葉や茎を切ったり、煮込んだりしても美味しくいただくことができる。その際には、熱湯をかける・細かく切り刻むというように、すりおろす以外でもわさびに刺激を与えよう。
3. わさびの辛味成分に秘められた効果
最後に、わさびの辛味成分のはたらきについてチェックしていこう。
生臭さを抑える
日本では古くから、生の魚介類とともにわさびを食しているが、これは生臭さを抑えて、食べやすくするためだ。なお、これは辛味成分の香りによる効果のため、醤油にわさびを入れるといった食べ方ではNG。醤油によって風味が飛んでしまっては、生臭さを抑える効果が激減してしまうのだ。
食欲を高める
香辛料は香りによって胃腸が刺激され、食欲を高める効果があるとされている。香辛料で有名な料理といえばカレーだが、わさびにもカレーのような食欲をそそる効果があるというのは、やや意外かもしれない。
昔は食中毒の予防に使われた
わさびの辛味成分には、寄生虫や大腸菌、黄色ブドウ球菌といった食中毒の原因となるものを弱らせる効果があるといわれている。古くから生の魚介類とともにわさびが食されていたのには、こうした理由もあるのだ。だからといって腐った食べ物にわさびをつければOKということにはならないので、過剰な期待は避けてほしい。
結論
わさびの辛味成分に惹かれるのには、きちんとしたワケがあり、使い方次第では、料理をより食欲そそるものへとランクアップさせてくれるだろう。そのためにも、なんとなく料理にわさびを加える、添えるのではなく、正しい知識をもとに辛味が引き立つ調理法を試してもらいたい。