1. 筆柿とは?
筆柿(ふでがき)とは、愛知県額田郡幸田町に古くから自生している柿の一種である。筆先のような扁球形で先が尖った見た目をしており、果実の重さは100g程度と小ぶりになっている。また、不完全甘柿という柿の一種で、タネが多くなるほど甘いという特徴がある(※1)。ただし、一般的に流通しているものの多くは適切に選別されており、甘くてジューシーなものを食べることができる。
筆柿の産地と旬
筆柿は、江戸時代の頃には愛知県の幸田町に自生していたとされている。また、農林水産省の「特産果樹生産動態等調査」によれば(※2)、現在は愛知県での栽培が多いが、長野県でも作られていることが確認できる。筆柿の旬はほかの柿よりも少し早くて、9月中旬から10月にかけてである。また、11月頃にも出荷されているため、比較的長期間にわたり筆柿を楽しむことができる。
2. 筆柿の特徴や魅力を紹介
柿は富有(ふゆう)や次郎(じろう)、平核無(ひらたねなし)、西村早生(にしむらわせ)などの品種が有名だが、これらの柿と比べて筆柿にはどのような特徴や魅力があるのだろうか。ここではほかの柿と比べながら、筆柿の特徴や魅力について確認しておこう。
その1.程よい甘みと滑らかな舌触り
筆柿は、西村早生などと同じ「不完全甘柿」という種類の柿である。これは「タネが多い果実ほど甘くなる」という特徴がある柿のことで、渋みが少ない筆柿は程よい甘みと滑らかな舌触りが魅力となっている。また、タネは多いが皮は薄いため、そのまま食べることも可能だ。なお、現在では筆柿の選別にあたり自動選別機が導入されているため、市販の筆柿の多くは甘くて美味しい。
その2.筆先のような見た目をしている
筆柿はその名前の通り、筆先のような扁球形(細長い形)で先端が尖った見た目をしている。そのため、富有柿などのような扁球形(平たい形)の柿とは全く異なる形をしている。また、富有柿は平均230~280g程度であるが、筆柿の重さは100g程度と小ぶり。手のひらにすっぽりと収まるくらいのサイズ感となっている。
その3.筆柿には別名が数多くある
現在では筆柿という名前で親しまれているが、実は「盆柿」や「珍宝柿」という名前でも呼ばれている。盆柿の由来は、旧盆の時期に収穫・出荷されることが関係しているという。また、珍宝柿は「珍しくて貴重な柿だから」と「男性器に似ているから」という理由からこのような呼び名がついたそうだ。ただし、珍宝柿は品のないイメージを与えるため、筆柿という名前が使われるようになった。
3. 美味しい筆柿の見分け方
筆柿はほかの柿に比べると流通量が少ないため、一般的なスーパーや八百屋では入荷していないことが多い。しかし、産地である幸田町の道の駅や直売所などでは見かけることが多いようだ。もし自分で柿筆を選べるなら、以下のような色味や重みなどを参考に美味しいものを探すようにしよう。
- 色味:表面が濃いオレンジ色でツヤ感があるもの
- 重み:手に持ったときに重みを感じるもの
- 硬さ:手に持ったときにやや硬さを感じるもの
なお、中には果皮に白い粉が付いていることがあるが、これは「ブルーム(果粉)」というもので新鮮な証拠となっている。また、果肉に茶色の斑点のような模様が出ることもあるが、これは「タンニン」というもので甘みがあることのサインである。 いずれも美味しい筆柿を見極めるポイントなので覚えておくようにしよう。
4. 筆柿の美味しい食べ方2選
筆柿は他の柿と同じように、デザート感覚でそのまま食べたり、サラダや白和えなどの料理に使ったりするのがおすすめだ。そこでここでは筆柿の美味しい食べ方を2種類確認しておこう。
食べ方1.そのまま食べる
程よい甘みと滑らかな食感が特徴の筆柿は、そのまま食べるのが一番美味しいとされている。皮が薄いため丁寧に洗ってから皮ごと食べたり、ほかの柿と同じように1/4サイズに切ってから皮を剥いて食べたりするとよい。なお、食べるときは細長い種が多いので気を付けるようにしよう。
食べ方2.料理に使う
果肉が硬い筆柿は、サラダや白和えなどの料理に使うのもおすすめだ。フルーツサラダの作り方はいろいろあるが、例えば、バルサミコ酢で味付けしたベビーリーフなどと和えたりするのがおすすめ。また、白和えにするときは豆腐などで和え衣を作り、それに適当な大きさにカットした筆柿を加えて和えてみよう。やや硬い筆柿であっても、料理にすることで美味しく食べることが可能だ。
5. 筆柿の正しい保存方法
筆柿は常温保存か、冷蔵保存で保管しよう。常温保存する場合は、新聞紙などに包んでからポリ袋に入れて風通しのよい冷暗所で保管する。また、冷蔵保存する場合も、同じくポリ袋などに入れてから野菜室で保管しよう。なお、筆柿は常温保存することで果肉が柔らかくなり美味しくなる。果肉を硬い状態にしておきたいなら、できる限り冷蔵庫で保管するようにしよう。
結論
不完全甘柿の一種である筆柿は、その名前の通り筆先のようなユニークな見た目をしている柿のことである。もともと愛知県の幸田町で自生していたため、現在でも愛知県で多く栽培されている。一般的には9~11月頃に流通しているため、興味があればその頃にネット通販で探してみたり、産地の直売所や道の駅などに行ってみたりするといいだろう。
【参考文献】
- ※:JAあいち三河「柿|管内の農産物」
https://www.ja-aichimikawa.or.jp/product/product_kaki.php - ※1:農林水産省「aff(2018年10.月号)」
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1810/pdf/1810_all.pdf - ※2:農林水産省「特産果樹生産動態等調査」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tokusan_kazyu/index.html#r
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