1. イエトストは煮詰めて作られる

イエトストは9世紀頃にアイルランドの修道士により、ノルウェーに運びこまれてきたといわれている。一般的にチーズは原材料の生乳を酵素(レンネット)や酸で凝固させて、水分(ホエー)を抜くことで作られる。しかし、イエトストは別の作り方をされるチーズなのである。
イエトストの原材料はヤギや牛の生乳とホエー、クリームである。通常のチーズでは取り除かれるホエーがじつは大事な役割を果たす。タンパク質凝固剤を加えることなく、原材料を混ぜ合わせたものを加熱すると、煮詰まることで固まる。まさに、キャラメルを煮つめながら作る方法と同じなのである。このときに、糖分の部分に熱が加わることで、褐色に変化して綺麗なキャラメル色のチーズが完成する。
この作り方は日本の飛鳥時代に行われていた方法と似ている。この時代、牛の生乳を加熱して煮つめることでチーズに似たような「蘇」と呼ばれるものが作られていたと記録が残っている。そのため、通常のチーズと作り方が違うため、比較的新しいチーズであると思われがちであるが、じつはその歴史は古いのである。
2. ノルウェーの朝食では欠かせないイエトスト

北欧と聞くとサーモンなどの海産物をイメージする人が多いかもしれない。そのため、ノルウェーチーズと聞くといまいちイメージがわかないという人も多いのではないだろうか。しかし、イエトストはノルウェー全土で作られており、ノルウェーの朝食には欠かすことができないほどの定番メニューの1つなのである。
甘みと塩気がしっかりとあり、キャラメルのように濃厚な味わいを楽しむことができるイエトストは別名キャラメルチーズとも呼ばれている。
その味を活かすために、朝食を軽く済ませることが多いノルウェーでは、薄くスライスしたイエトストをパンの上にのせて食べるのが定番の食べ方である。この食べ方が一般的であるため、ノルウェーではイエトストを薄くスライスするための専用の道具も販売されているそうだ。それほど、ノルウェーの人にとっては身近な食べ物の1つなのである。
3. イエトストを美味しく食べるためのポイント

イエトストは塩気が強いだけでなく、ミルクの甘さもしっかりと感じることができる。そのため、日本でもここ数年人気の塩キャラメルに味がたとえられることが多い。そして、味わいはチーズというよりコクの強いクリームの風味が強いといわれている。
朝食に欠かせないイエトストは、トーストにのせたイエトストとブラックコーヒーの組み合わせで口にすることが多い。もちろん、この組み合わせもイエトストを味わうにはおすすめである。しかし、じつは酒との相性もよいのである。ヨーロッパのほうでは、エール系のどっしりとした味わいが特徴であるビールと一緒に楽しむ人も多い。また、日本では、厚めにスライスして、ワサビや七味唐辛子などを添えて甘口の日本酒といただくこともおすすめの食べ方といわれている。
また、いまはヤギの生乳だけでなく、牛の生乳を混ぜ合わせて作られていることが多いイエトスト。しかし、100%ヤギの生乳で作られているイエトストも販売されている。ヤギの香りが強いため好みがはっきりと分かれてしまうものであるが、ヤギのチーズが好きという人はこちらのほうが好みかもしれないので、探して食べてみるのもよいだろう。
結論
キャラメルのような味わいを楽しむことができるチーズのイエトスト。いままで抱くチーズのイメージとは異なるかもしれないが、塩気と甘みの絶妙なコンビネーションがはまること間違いなしの1品である。日本でも比較的簡単に手に入れることができるチーズの1つ。一度試してみてはいかがだろうか。とくに、甘いものが好みの人は、きっとはまることを間違いないだろう。
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