1. 梅干しの基礎知識
梅の木と中国
梅の木は、中国が原産と言われている。中国の古い薬学書には、すでに梅の記載があり、そのころから、薬効があったことがうかがえる。日本に伝来したのは、飛鳥時代頃。青梅を燻し、乾燥させた烏梅と呼ばれる漢方薬として、やってきたようだ。
薬としての梅干し
梅干しが日本の書物に登場するのは、平安時代に著された日本最古の医学書『医心方』。医学書に記されていることからもわかるように、この頃は薬として用いられていたようだ。さらに時代を経て、戦国時代。この頃もまだ、薬として愛用されていて、戦にもしばしば用いられていた。
酸っぱい梅
長く薬として珍重されていた梅干しが、庶民のものとして広がったのは、江戸時代のこと。現在のようなしその葉で漬けた美しい赤色の梅干しが登場したのも江戸時代だと言われている。昭和になると品種改良などが盛んに行われるようになり、南高梅などのいわゆるブランド品種が生まれ、庶民にも広く親しまれるようになる。
2. 梅干しができるまで
青梅と完熟梅
梅干しは、一般的に完熟以上の梅で作られる。黄色く熟し、自然落下した超完熟と呼ばれる梅でつくると皮が柔らかで、とろりとした梅に仕上がると言われている。ちなみにこの完熟梅は、6月中旬から7月初旬の短い期間にしか手に入らないので、自家製する場合は、この期間に手に入れることが必須。
塩のパワー
梅干し作りに欠かすことができない塩。梅の実にたっぷりと塩を振ると浸透圧の関係で水分が出てくる。これが梅酢と呼ばれるもので、この梅酢に梅の実を浸しておくと熟成が進む。塩の量は、梅の実の重量の18%ぐらいが基準と言われている。減塩のものなどもあるが、保存性が低くなることから、自家製にはおすすめしない。またしそ漬けにする場合は、しそも別で塩漬けにして、のちに合わせる。
3日3晩の土用干し
「3日3晩の土用干し」と言われるように、梅雨明けに晴れの続く日を狙って、土用干しをする。これは天日干しの意味で、ざるなどに梅を広げて、昼は外、夜は中に入れてという作業を3日続ける。こうすることで余分な水分が蒸発し、保存性がさらに高まる。
この後、もともと漬けていた赤い梅酢にもう一度つける方法とそのまま保存する方法があるが、双方ともに3ヶ月後くらいからが食べごろだ。
この後、もともと漬けていた赤い梅酢にもう一度つける方法とそのまま保存する方法があるが、双方ともに3ヶ月後くらいからが食べごろだ。
3. 調味料としての梅干し
和物のベースに使う
梅干しは、そのままで食べる以外にも活用方法がある。まずは、和物のベースに使う方法。タネを外した果肉を叩いて、醤油を加えれば、梅和えのベースが完成。茹でたほうれん草やスライスした玉ねぎを和えると美味しい。また、うどんやパスタなどを和えるのもおすすめ。
+調味料で味変
マヨネーズやポン酢などに梅干しを合わせるといつもとはちょっと違う味わいに変化する。梅干しそのものは苦手、という人もこれならチャレンジしやすい。デイリーにはもちろん、衛生面に配慮して、お弁当に加えるのもいいだろう。
タネをつかった裏技
梅干しの種は、味が出るので、捨てずに活用したい。おすすめは、醤油につけておく方法。梅の旨味が醤油にうつり、コクと奥深さを与えてくれる。豆腐にかけたり、炒め物の仕上げに加えたりと普通のお醤油感覚で使える。作り方は、口に入れない状態で使った梅のタネを醤油に漬けるだけ。小瓶などに入れて、保存するといいだろう。種はどんどん継ぎ足しOK。
結論
「梅は医者いらず」とはよく言ったもので、古くは薬として食べられてきた梅干し。平安時代から日本人に親しまれていたと思うと感慨深いものがある。酸っぱさだけが際立つが、使い道はいろいろ。伝統的な作り方をしたものを選べば、10年も保存できると言われている。そのまま食べる以外の方法も学んで、上手に暮らしに取り入れたいものだ。
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