1. 食事はお腹を満たすだけのもの?

仕事が忙しいと食事の時間がとれないことも少なくない。お腹が空いて頭が働かなかった経験は誰もがあるだろう。食事は、パフォーマンスを発揮するために大切なものだが、ただお腹を満たすだけでなく、食べ物の量や内容も大切だ。
■偏った食事で起こること
バランスがとれた食事の反対は「偏った食事」となり、これが長期間続くと体に影響がでるリスクが高まる。冷蔵技術がなかった時代、長期間船で過ごす船乗りには壊血病が多く見られた。壊血病は、皮膚や粘膜からの出血を伴い、貧血、抵抗力の減少などが起こる病気で、ビタミンCが長期間欠乏することで起こる。昔の船乗りたちは、長期保存ができる塩漬けや砂糖漬けなどばかり食べていたため、新鮮な野菜などに含まれるビタミンCが不足しやすかったのだ。特定の栄養素が不足することで起こる病気はほかにもあり、さまざまな食べ物から栄養を摂ることが推奨されている。
■健康で元気に過ごすために
食事が偏ると、必要な栄養素が不足する可能性や、逆に多く摂りすぎてしまうこともある。たとえば、ビタミンAは不足すると暗いところで目が見えにくくなる夜盲症になりやすく、多く摂りすぎると肝機能障がいのリスクがあることが知られている。栄養素は、体の中でよくも悪くも働くのだ。バランスのとれた食事とは、体の中でよい働きをする、自分に合った内容の食事のことといえるだろう。
2. 食事バランスガイドを目安に

食事バランスガイドは厚生労働省と農林水産省が作ったツール。1日に何をどれだけ食べたらよいのかを図示したもので、コマの形をしている。
■コマで表していること
コマの形で何を表しているか紹介しよう。コマの軸は生命に必要な水分を表している。コマの胴体部分は4段に分かれている。上から1段目は、主食のごはん・パン・麺。2段目は副菜の野菜・きのこ・いも・海藻料理。3段目は主菜の肉・魚・卵・大豆料理。4段目は中央で2つに分けられていて、牛乳・乳製品と果物だ。コマからヒモがとびだしていて、これはし好品を表している。
さらに、運動することでこのコマが回ることを想定している。
さらに、運動することでこのコマが回ることを想定している。
■1日に食べる目安が明確になる
コマには食事の絵が描かれ、1日に食べる量の目安を表している。その日の食事を当てはめてみると、なにが欠けているのかコマの形が変わることでわかりやすくなる。バランスのとれたコマが回り続けるように、食事内容を知ることは健康な体づくりにつながっていく。食事バランスガイドは、健康な人の食事量の目安だ。糖尿病や高血圧などの持病があり、医師から食事指導を受けている場合は、指導に沿った食事内容がその人にとってバランスがとれているといえるだろう。
3. バラエティ豊かな食卓を

食べ物に含まれる栄養は、水に溶けやすいもの、油に溶けやすいもの、熱に弱いものなどそれぞれ特徴がある。調理方法によって、栄養が減ったり、消化のしやすさが変わったりするのだ。さまざまな食材を食べるほかに、調理法も多彩にすると、栄養を摂りやすくなる。
■多彩な調理法で
和食は、一汁三菜が基本でいろいろな食材を摂りやすい。しかし、煮る調理法も多く、水に溶けやすい栄養が流れてしまうこともある。加熱する料理だけでなく、生野菜を組み合わせると、水に溶けやすい栄養も摂りやすくなる。ほかにも、ニンジンやトマトに含まれるβ-カロテンは油に溶けやすい性質を持っている。また、油に溶けることで、体での吸収もよくなることも知られている。油を使いすぎるとエネルギーの摂りすぎが気になるが、適度に使うことで栄養吸収がアップするのだ。
■各国の料理も取り入れて
日本の食事はバラエティ豊かだ。古くから食べている和食だけでなく、イタリア、フランス、中華、韓国、アジア料理なども身近に食べることができる。また、さまざまな食材が手に入るので、味にも変化をつけやすい。和食に限らず、多彩な料理で食卓を彩るのもおすすめだ。
■数日で調整して食べる
バランスのとれた食事を意識していても、その日によって足りなくなってしまうものもある。1日のバランスを完璧にする必要はなく、特定の食材が不足したなら、次の日に意識して食べるなど調整して補おう。まずは1週間の食事を振り返ってみてはどうだろう。自分の食傾向がつかめて、改善ポイントが見出しやすい。
結論
バランスのとれた食事とは、健康で毎日過ごせる食事のことだ。食事バランスガイドを目安に、毎日の食事を見直してみよう。日本では、いろいろな食材が手に入るので、和食に限らず多彩な調理法を試してみてほしい。