目次
- 1. 重曹とは
- 2. 食用と掃除用の重曹の違い
- 3. 食用の重曹の使い方
- 4. 掃除用の重曹の使い方
- 5. 重曹を使う上での注意点|アルミは変色のおそれも
- 6. 重曹とクエン酸の違いや上手な使い分け方
- 弱アルカリ性の作用で酸を中和する
- 発泡性や膨張作用がある
- 加熱するとアルカリ性が高まる
- 油と混ざると石鹸のような働きをする
- 消臭作用や吸湿作用がある
- 研磨作用がある
- 油汚れに直接重曹をふりかける
- しばらく待ち、水で濡らしたスポンジで軽くこすり洗いをする
- すすぎ(水を流せなければ水拭き)と乾拭きで仕上げる
- 空のスプレーボトに、水100mlにつき小さじ1杯の重曹を加えて溶かす
- 皮脂や手垢、油など酸性の汚れが気になる場所にスプレーする
- スポンジや雑巾でこすり洗いをし、すすぎ(水拭き)と乾拭きで仕上げる
- 小皿を用意し、重曹と水を2:1の割合で混ぜる(水っぽいときは3:1)
- 油汚れに直接塗り、しばらく置いてからスポンジでこすり洗いをする
- 水ですすいで(または水拭きをして)乾拭きをして仕上げる
- 水拭きできない場所、素材、もの
- アルミ・銅、真鍮、金箔
- 貴金属、宝石類、メガネ
- 漆器、ニス塗りのもの
- 皮革、絹製品
- コーティング(表面加工)された家具
- 自動車の塗装面
- 油や熱ですでに劣化している塗装面
- お風呂の鏡やシンクの水垢
- お風呂の床の石鹸カス
- トイレの尿石汚れ
- 頑固な油汚れ
1. 重曹とは

重曹といえばナチュラルクリーニングに欠かせないアイテムだが、その成分や作用を詳しく知らない方もいるだろう。まずは基本的なところから解説する。
炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ)のこと
重曹はpH8〜8.5程度の弱アルカリ性物質で「炭酸水素ナトリウム」や「重炭酸ソーダ」ともいう。ソーダの漢字表記が「曹達」なので、重炭酸曹達を略して重曹と呼んでいる。自然界に存在する物質で、環境に優しく適量なら人体にも無害である(市販の重曹は食塩を電気分解し、二酸化炭素を加えて作られている)。
昔から蒸しパンを作るときなどにベーキングソーダ(ふくらし粉)として使われてきたほか、掃除や美容・装飾品の手入れ、脱臭、胃腸薬まで幅広く使われてきた。そんな重曹の特徴や作用は次の通りだ。
重曹の特徴・作用
重曹にはこのようにさまざまな特徴や作用がある。たとえば加熱すると二酸化炭素が発生し、その後アルカリ性が高まる。それにより酸性の汚れが落としやすくなる。こうした点や、油と混ざることで石鹸のような働きをする点などは、まさに掃除向けといったところだろう。
また重曹は結晶が丸く非常に細かいため、粉末のまま使うと研磨剤のような効果が得られる。消臭作用や吸湿作用もあるため、冷蔵庫やクローゼット、靴箱の消臭・除湿にも役立つ。まさに万能アイテムだ。
重曹はどこで買える?相場は?
重曹は100均やドラッグストア、ディスカウントストアやスーパー、それにネット通販まで、さまざまな場所で手に入る。価格は500gで200〜300円程度、1kgでも300〜400円程度だ(100均なら500gが100円で手に入ることもある)。
2. 食用と掃除用の重曹の違い

重曹には主に「食用」「掃除用(工業用)」「医療用」がある。我々が日常的に使うのはこのうち食用と掃除用だ。なお、医療用の重曹は胃薬や点滴、火傷の治療などに用いられている。
食用と掃除用の主な違いは「純度」
食用も掃除用も主成分は同じだが、異なるのは「純度」である。一般的に、食用は純度98〜99%、掃除用は95〜98%程度とされている(医療用は100%)。
純度が低いということは、その分不純物が多いことを意味する。食用を掃除に使う分には問題ないが、掃除用は食用にすることを想定して作られていない。食用には食用の重曹を使うようにしよう。
食べられる重曹は「食品添加物」に分類
お菓子や炭酸水作りに使われる重曹は、いわゆる「食べられる重曹」で、食品添加物に分類されている。きめ細かな粒子が特徴的で、製造工程における衛生面や安全性にも配慮されている。こうしたことからも、食用の重曹と掃除用の重曹は使い分けたほうがよいだろう。
3. 食用の重曹の使い方

実際の重曹の使い方について解説する。まずは食用の重曹の使い方から見ていこう。
蒸しパンなどを作る際にふくらし粉(膨張剤)として使う
加熱すると膨らむ重曹の特性を利用して材料を膨らませる。「縦」に膨らむベーキングパウダーと違い、重曹(ベーキングソーダ)は「横」に膨らむ特徴がある。加えすぎると風味が損なわれるおそれがあるため、入れすぎには注意したい。
炭酸水やジュースを作る際に発泡剤として使う
重曹+酸+水で二酸化炭素の細かな気泡が発生する。これを生かして炭酸水や炭酸ジュースを作ることが可能だ。たとえばコップ1杯の水に重曹0.5g、レモン1/4個分の果汁を混ぜると微炭酸レモン水ができあがる。ただし塩分の摂取過多を招くおそれがあるため、重曹の入れすぎには注意しよう。
食材を柔らかくしたりヌメリを取ったりするために使う
鍋に8分目程度まで水を入れて沸騰させたのち、重曹をひとつまみ入れる。そのあと、たとえばキャベツを入れて茹でると柔らかく仕上がる。あるいは肉に重曹をひとつまみまぶして揉み込み、30分ほど放置してからそのまま(重曹を落とさず)調理すると、肉が柔らかく仕上がる。
そのほか、魚に直接ふりかけて軽く揉み込み、調理前に流水ですすいで水気を切ると、臭みやヌメリが取れるといった効果もある。
4. 掃除用の重曹の使い方

続いて掃除用の重曹の使い方を紹介しよう。小さな子どもやペットがいるご家庭で「洗剤を使いたくない」「洗剤が使えない」という場合にも役立つ知識だ。
油汚れが気になる場所に粉末のまま研磨剤として使う
軽い油汚れであればこれだけでも十分キレイになる。拭き残すと白い跡になってしまうので、すすぎや水拭きは入念におこなおう。
水溶液をスプレーに入れて皮脂汚れが気になる部分に使う
水が染み込んでしまうような場所は、シミになるおそれがあるため使用を控えよう。商品パッケージに分量が記載されていればそちらを参考にしよう。
ペースト状にしてコンロや換気扇の油汚れに塗って使う
ペーストにする際は、そのまま廃棄できるよう割り箸で混ぜるとよい。水溶液では垂れてしまうような、角度がある場所にも使える。掃除用の重曹はこの「粉末」「スプレー」「ペースト」を知っておくだけでも、かなり幅広く役立てられるはずだ。
靴箱やシンク下の消臭剤や除湿剤として使う
粉末の重曹を空き瓶に入れ、口をガーゼで覆って輪ゴムで固定する。もしくは小皿に山盛りにしてもよい。それを靴箱やシンク下、クローゼットやトイレ、冷蔵庫に入れておくと消臭剤や吸湿剤のような働きをしてくれる。またゴミ箱や三角コーナーに粉末の重曹を直接ふりかけておくとにおいが軽減する。
中和作用を生かして皮脂汚れが気になる洗濯に使う
いつもの洗濯洗剤をセットしたら、洗濯槽か粉末洗剤の投入口に重曹1カップ(あるいはパッケージに記載の量)を加えて洗濯してみよう。それにより、皮脂や手垢といった酸性の汚れが落ちやすくなったり、泡立ちがよくなったり、消臭・殺菌効果が得られたりする。
5. 重曹を使う上での注意点|アルミは変色のおそれも

環境にも人体にも優しい重曹だが、使う上での注意点はある。思わぬトラブルを防ぐためにも、正しい知識を身につけておくことが大切だ。具体的には次のような点に注意しよう。
重曹が使えない場所や素材を知っておく
こうした場所・素材・ものに対して重曹を使うことは控えよう。たとえばアルミ鍋の焦げ付きを落とそうとして重曹を使用した場合、黒ずんで元に戻らなくなってしまう。レンジフードの金属フィルターがアルミ製だった場合も注意が必要だ。
重曹が使用できない場所や素材については、パッケージにも記載されているはずである。使用前に必ず確認しておこう。
重曹が苦手な汚れの種類を知っておく
重曹は弱アルカリ性のため、同じアルカリ性の汚れに対しては高い効果が期待できない。水垢や石鹸カス、尿石といったアルカリ性に近い汚れには効果を発揮しづらいので覚えておこう。
また長年こびりついていたような頑固な油汚れ、焦げ付きに対しても優れた効果は期待できない。専用の洗剤を使うほうが効率的だ。
拭き残しや傷に注意する
重曹の成分を拭き残すと、白っぽい粉のような跡ができる。白い跡が乾いてしまうと、酸性洗剤で中和しなければならないこともある。なにかと手間なので、重曹をふりかけたりペーストを塗ったりした場所は、入念にすすいだり水拭きをしたりしておこう。
肌荒れが不安な方はゴム手袋を着用する
重曹は弱アルカリ性である。アルカリ性洗剤(塩素系漂白剤)のような刺激はないにせよ、長時間使用したり、肌が弱い方が直接触れたりすると肌荒れを招くおそれがある。心配な方は炊事用ゴム手袋を着用しよう。
食べる・飲む場合は事前に医師や薬剤師に相談する
重曹は炭酸水素ナトリウムと呼ばれていることからも分かるように、ナトリウムが含まれている。「ナトリウム=塩」ではないが、血圧を上昇させる働きは少なからずある。高血圧症や腎臓疾患で治療中の方、薬を服用している方などが、食用の重曹を食べたり飲んだりする際は、必ず事前に医師または薬剤師に相談しよう。炭酸ジュースを作るときも、入れすぎにだけは注意してほしい。
6. 重曹とクエン酸の違いや上手な使い分け方

重曹と並んでナチュラルクリーニングの必須アイテムとなっているのが「クエン酸」である。重曹とクエン酸の違いや、使い分けるコツについても解説しておこう。
重曹とクエン酸の違い
弱アルカリ性の重曹に対し、クエン酸はpH2程度の酸性である。同じように100均やドラッグストアで手に入るアイテムで、主成分は柑橘類や梅干しにも含まれる「酸っぱい成分」だ。
重曹とクエン酸を使い分けるコツ
重曹とクエン酸はpH(液性)が異なるため、効果がある(落とせる)汚れのタイプも異なる。皮脂や油など酸性の汚れを落としたいときは「重曹」、水垢や尿石などアルカリ性の汚れを落としたいときは「クエン酸」というように、汚れの種類で使い分けるのがコツだ。
重曹とクエン酸の合わせワザも効果的
重曹とクエン酸を混ぜて、水やぬるま湯をかけると、二酸化炭素の細かな気泡が立ち始める。その泡の力で、キッチンの排水口のヌメリを浮かせたり、水垢と油が混じった汚れを落としたりする使い方もある。
ただし気泡は細かく洗浄力も高いわけではないため、頑固なヌメリや汚れには思ったほどの効果が期待できない。そのようなケースでは、専用洗剤(パイプクリーナー)を使うのがおすすめだ。
結論
重曹とはなにか、お分かりいただけただろうか?環境にも人体にも優しい自然界の物質で、食用と掃除用(医療用も)があり、それぞれ用途が異なる。クエン酸と併せて、正しく使い分けることが大切だ。本稿で紹介した重曹やクエン酸の使い方を参考に、ぜひ日々の生活に役立てていただきたい。