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魚が食卓から消える日が来る!?日本の漁業の危機的状況を俯瞰

魚が食卓から消える日が来る!?日本の漁業の危機的状況を俯瞰

投稿者:オリーブオイルをひとまわし編集部

監修者:管理栄養士 出口美輪子(でぐちみわこ)

鉛筆アイコン 2021年5月19日

魚好きをざわつかせる、ある研究結果が発表された。なんと数十年後という、そう遠くない未来、魚の数が今よりも激減し得る、とんでもない事態が起こるかもしれないというのである。それは果たしてどういうことなのか、日本の漁業の現状と合わせて考えてみたい。

  

1. 魚に異常が現れる?

2017年1月。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学の研究から、このまま海水中の二酸化炭素濃度が上昇し続けると、2050年までに魚が「炭酸酩酊」を引き起こす可能性があることが発表された。炭酸酩酊とは生体内に取り込まれる二酸化炭素の量が増えすぎることによって現れる意識障害のことで、酒で酔っ払ったような状態になる。炭酸酩酊に陥った魚は海中内で方向感覚を失って巣に帰る事が出来なくなり、天敵となる捕食動物の居場所すら掴めなくなるという。

海水中の二酸化炭素濃度の上昇は世界中で起こっていることであり、日本も例外ではない。海に囲まれ、魚を食べる文化の根強い日本において、この問題は重大だろう。日本には4つの海流があり、特に世界2大潮流の1つでもある「黒潮」と豊富なプランクトン量を誇る「親潮」は、日本の漁業にとって大きな役割を担っている。黒潮にのってやってくる代表的な魚といえばマグロやカツオである。また黒潮は、二ホンウナギの回遊にも関与していると言われている。これらはいずれも日本の食卓には欠かせない魚だ。海流自体が蛇行して悪影響を及ぼしてしまうこともあるが、さらに炭酸酩酊を起こした魚が上手く潮に乗れなくなるような事があれば、冬を越せない魚や良い餌場にありつけずに個体数の減少に繋がったり、いつも獲れるはずの漁場に魚が居なくなってしまうことも考えられる。

2. 日本の漁業自体も危機に瀕している

2017年までの30年間で世界の漁業生産量は約2倍になっているという。その一方で日本の漁業生産量は約1/2まで落ち込み、世界第1位の座から7位まで順位を落としている。原因として経営方法の違いや後継者の不足、従事者の高齢化などが考えられるが、他にも漁船の燃料の高騰や海水温度の上昇などの海洋環境の変化、水産資源を適切に管理せず乱獲を見過ごしてきたことなど、さまざま考えられる。日本の漁業には問題点が多い上、他の先進国に比べ資源の管理方法などに遅れを取っていることは否めない。ただ魚を獲れば良い訳ではない。売り物にならないような小さな魚を獲って棄ててしまうよりも、数年経ってから売り物になるものを獲った方が良いし。また、産卵を終えたものを獲れば次の世代を絶やすこともない。実際の例として、秋田のハタハタ漁が有名だ。秋田のハタハタは、長きに渡る乱獲によって一時は全く獲れなくなってしまった。しかし、1992~1994年まで禁漁期間を設けることによって漁場に戻ってきたのである。同じような現象が福島の海でも見られる。原発事故以来自粛されていた漁を久しぶりに行ったところ、それまでは2時間かかっていた量を30分で獲ることが出来たというのだ。

最近ではその事実に気付き、自ら魚を守るため行動している漁師も少なくはない。しかしこのような乱獲を進めさせてしまった原因に、良質な魚でさえも安くなければ買いたくない、無いということを我慢できない消費者や、漁師に無理を強いてきた販売業者や飲食店側も関わっているということを忘れてはならない。

3. 新しい漁業の形

なかなか良い兆しが見えにくい日本の漁業だが、もちろん悪いことばかりではなく、良いニュースもある。ここ数年、各メディアで取り上げられることが多くなった「好適環境水」の誕生もその一つだ。岡山理科大学で研究が進められてきたこの水の中では、海水魚も淡水魚も一緒に生きていける。海水からは不要な成分を取り除き淡水には海水の成分を加えることで、どの成分が両者に棲む魚にとって必最低限なのかを突き詰めたことで生まれたこの水は、まさしく「魔法の水」。海のない内陸部でも海産物を養殖できる。また、この水で植物まで育てる事も可能なのだ。水中には天然の海水のように雑菌がいないため、商品が病気になることも減るという。海水を運んできたり人工海水を作るより低コストで済むのも大きなメリットである。

また、好適環境水ではなく人工海水を使用して内陸部で海産物の養殖を行う陸上養殖(閉鎖循環式陸上養殖)事業は、既に全国的に数か所で行われていることにも注目すべきだ。
  • 栃木県那珂川町...豊富な温泉水や温泉排熱、元スイミングスクールのプールを利用してのトラフグ養殖。
  • 茨城県つくば市...チョウザメを養殖し、キャビアも採取。
  • 新潟県妙高市...輸入品が大半を占める、バナメイエビを養殖。
  • 宮崎県綾町...ヒラメ養殖や、自社のヒラメを堪能できるレストランの運営。
その他にもクエやマグロの養殖をする所もあり、試食の段階であるものから実際に出荷されているものまで幅広い。

結論

魚が食卓から消え得る原因のほとんどは、人間によるものだ。二酸化炭素の増加や、水温の上昇、赤潮などの環境汚染や乱獲...。自分で自分の首を絞めているようなものではないだろうか。数十年後に実際魚が食卓から消えているかどうかはわからないが、そのリスクを回避したり、これ以上悲しい事態を招くことのないよう、出来ることを実践していきたいものである。

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  • 公開日:

    2020年2月19日

  • 更新日:

    2021年5月19日

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