1. ごはんでごはんを食べる?「すしこ」はこんな食べ物
度肝を抜くような、鮮やかな濃いピンク色が目を引く「すしこ」。よく見るとその色の正体が、米の粒であることに気付く。きゅうりやキャベツの漬物と蒸したもち米から作られるこの料理は、主に中泊町・つがる市・鶴田町・鰺ヶ沢町・深浦町...といった、津軽地方の日本海側で食べられてきた。この地域には稲作農家が多く、冬は「すしこ」を一斗樽で仕込み、保存食にしていたという。体力勝負の稲刈り時期には、大切なエネルギー源としての役目も担っていたらしい。乳酸発酵の進んだものはより甘酸っぱく、食欲がなくなる暑い季節でもサッパリと食べられると、熱狂的なファンも少なくはない。中にはもち米がドロドロになるほど寝かせた酸味が強いものの方が好きだという人もいるが、最近では画像のような粒のはっきりしたサラダ感覚で食べられるものが一般的だ。県内の一部のスーパーや道の駅でも販売されている。
「すしこ」の属性は何か?
1つの疑問が沸いてくる。「すしこ」は寿司なのか、はたまた漬物なのか。米を用い発酵させる料理といえばハタハタや鮭の飯寿司を連想させるが、「すしこ」では魚を使わない。かと言って漬物かと聞かれると、米の割合が多すぎるのだ。結局のところ型にはまらない、謎に満ちた食べ物でもあるのだ。
色の正体は?
はっとするほど綺麗な色をしているが、着色料を使っているわけではない。実は「すしこ」にはクエン酸が加えられており、材料の赤しそに含まれる色素・アントシアニンと反応を起こし、このような色になる。中性だと紫色のアントシアニンは、酸性だと赤になる。この性質に由来する。
2. 「すしこ」の作り方
さて、そろそろ「すしこ」が食べてみたくなってきた頃ではないだろうか。とはいえ今すぐ青森に向かうわけにはいかない人のために、レシピやアレンジ方法を紹介しよう。
■材料(作りやすい分量)
キャベツ 中玉1/5個
きゅうり 1本
食塩(キャベツときゅうりの下漬け用) 14g
もち米 120g
赤しそ 30枚
食塩 3.5g
砂糖 3.5g
酢 8g
クエン酸 2g
きゅうり 1本
食塩(キャベツときゅうりの下漬け用) 14g
もち米 120g
赤しそ 30枚
食塩 3.5g
砂糖 3.5g
酢 8g
クエン酸 2g
■作り方
- キャベツは1cm幅に、きゅうりは輪切りにし、ひと晩塩漬けする。
- みじん切りにした赤しそを分量外の塩で揉み、出てきた黒い汁を捨てる。その後も揉んでは汁を捨てる作業を3回程繰り返す。赤い汁が出てくるようになったらクエン酸を振り混ぜ、しそを搾る。出てきた赤い汁を約35ccとっておく。
- もち米をすし飯くらいの固さに炊いておき(※)、酢・砂糖・赤い汁を混ぜる。下漬けしてしておいた野菜を固く絞り、2の赤しそと一緒に混ぜ合わせ、一晩置く。
(※)120gのもち米に対し、140ccの水で固めに炊く。もち米は吸水性が良いため、研ぐときも手早く行うように気を付けよう。浸水も不要だ。
■アレンジ方法
野菜の古漬けや、赤しそではなく紫キャベツの色を利用する場合もある。昔ながらの方法にこだわるのであれば、クエン酸は不要だ。より大人好みに仕上げるのであれば、みょうがや鷹の爪・赤トウガラシを加えても旨い。海苔巻きの具材として食べることもある。
3. 他にもある、青森の旨いびっくりごはん
けいらん
漢字で「鶏卵」と書くが、卵は使っていない。一部の南部地方や下北地方に伝わる郷土料理で、餡子入りの甘い団子の上に、だしの効いた澄まし汁をかけて食す。団子の形が卵形であることが名前の由来だといわれ、かつては秋の収穫の終了を祝う、秋仕舞いのごちそうだった。現在では結婚式等の祝い事や、弔事に振る舞われる。甘じょっぱい味わいがクセになる。
いかの寿司
寿司とあるが、ごはんは使わない。丸々としたいかの中には、しゃきしゃきと甘みのあるキャベツやにんじん、いかの下足がぎゅうぎゅうに詰まっている。ショウガの甘酢漬けの風味が爽やかだ。そのままでも旨いが、マヨネーズと一味唐辛子をかけて酒のつまみにしてもいける。日本三大霊場・恐山のある、むつ市周辺で主に食べられている。
黒石つゆ焼きそば
B級グルメのブームにより、耳にしたことがあるかもしれない。ねぶたが有名な青森市や、田んぼアート発祥の地・田舎館村に隣接する、黒石市のご当地グルメだ。簡単に説明すると、平たく太い麺のソース焼きそばに、つゆがかかっている。つゆはラーメンスープの場合とそばつゆベースの場合があり、店によって異なる。時間が経つほどに焼きそばのソースがつゆに溶け出して旨い。
味噌カレー牛乳ラーメン
ラーメン好きなら知っている人も多いだろう。青森市周辺ではスタンダードともいえる、スパイシーかつマイルドな、オリジナリティ溢れるラーメンだ。実はバターも入っていて、それぞれのフレーバーが絶妙なハーモニーを織りなす。市内には人気店が数軒あり、ひっきりなしに客が訪れる。
結論
海の幸にも山の幸にも恵まれた青森県民は、正直、舌が肥えている。決して出身者ゆえの欲目ではなく、筆者が今まで接してきた他県からの赴任者や旅行者も口を揃えて言うのだから、事実なのだろう。そんな青森県民が愛し続けた郷土の料理たち。「すしこ」を筆頭に個性豊かなものが多いような気もするが、一度は食べてみる価値、大アリではないだろうか。機会があれば、ぜひ気軽に食べてみてほしい。
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