1. コーン油とは
最初にコーン油について簡単に解説する。
とうもろこしが原料の植物性油
とうもろこしからコーンスターチを作る際に出る「胚芽」に含まれる油脂を加工して分離させたものである。コーン油1Lあたり100kgのとうもろこしを使うといわれている。用途は幅広く、炒め物や揚げ物のほか、マーガリンにも加工されるなど、我々の身近に存在する油として有名である。身近であるからこそ、体にどんな影響があるのか知っておきたいと思う方も多いはずだ。カロリーをはじめ、栄養や注意点など詳しく解説していこう。
2. コーン油のカロリー
油類はカロリーが高いため、油断すると必要とする摂取カロリーを簡単にオーバーしてしまう。近年、糖質制限ダイエットが人気で、脂質の摂取量を気にしているダイエッターの方も多い。カロリーオーバーによる身体への悪影響を避けるためにも、コーン油のカロリーを把握しておこう。
コーン油大さじ1杯のカロリー
文部科学省「食品成分データベース」(※1)によれば、コーン油100gあたりのエネルギーは921kcalである。これを大さじ1杯12gに換算すると、110.52kcalとなる。
1日あたりの摂取カロリー目安量は?
ヒトが1日に必要な摂取カロリーは年齢や活動量によって異なるが、30〜49歳男性の例を紹介すると、身体活動レベルが低い方で2300kcal、普通程度の方で2700kcal、高い方で3050kcalとなっている(※2)。コーン油大さじ1杯あたり110.52kcalとお伝えしたが、これは体重50kgの人が27分ウォーキングしてやっと消費できるエネルギー量だ。大さじ1杯でこれだけのカロリーを取り込むことになる。
いろいろな油大さじ1杯のカロリーと比較
- 植物性油
└なたね油:110.52kcal
└ごま油:110.52kcal
└米ぬか油:110.52kcal
└オリーブオイル:110.52kcal - 動物性油
└牛脂:112.8kcal
└ラード:112.92kcal
いずれも文部科学省「食品成分データベース」(※3〜8)を参照した。植物性油にもさまざまな種類があるが、ご覧のように実はどれも大さじ1杯あたり同じようなカロリーだ。そのため、いずれも使い過ぎ・摂り過ぎには十分気をつけよう。また動物性油のカロリーは、ご覧のように大さじ1杯あたり約113kcalで、コーン油よりもややカロリーが高い。
油が吸収される仕組み
油の主成分は「グリセリド」と呼ばれるもので「トリグリセリド」「ジグリセリド」「モノグリセリド」などがあるが、大半を占めるのはトリグリセリドである(※9)。トリグリセリドが体内で消化される際、酵素の働きで分解され小腸に吸収される。その後、再び油として合成されて全身に運ばれ、中性脂肪や体脂肪となるほか、エネルギーになるものもある。一方ジグリセリドは小腸に吸収されたあと油として再合成されず、肝臓に運ばれたあと燃えてしまう。
3. コーン油のカロリー以外の栄養素
続いて、コーン油のカロリー以外の栄養素についても見ていこう。
コーン油100gあたりの主な栄養一覧
- エネルギー:921kcal
- 脂質:100.0g
- カルシウム:Tr(微量)
- ビタミンE
└トコフェロールα:17.1mg
└トコフェロールβ:0.3mg
└トコフェロールγ:70.3mg
└トコフェロールδ:3.4mg - ビタミンK:5μg
- 脂肪酸
└飽和脂肪酸:13.04g
└一価不飽和脂肪酸:27.96g
└多価不飽和脂肪酸:51.58g
いずれも文部科学省「食品成分データベース」(※1)によるものだ。脂肪酸について詳しくは後述するとして、ここではビタミンEやKについて効能を解説する。
抗酸化作用を持つビタミンE
コーン油には抗酸化ビタミン(※10)のひとつビタミンEが含まれている。ビタミンEは油に溶ける脂溶性ビタミンで、体内脂質の酸化を防ぐ抗酸化作用が強い。細胞の老化やLDLコレステロールの酸化を防ぎ、生活習慣病や老化に関わる病気の予防に効果が期待されている。成人男性が1日に摂取するトコフェロールαの目安量は6.5mg、成人女性は6.0gだ(※2)。
体内に溜まりにくいため過剰摂取はほとんど心配しなくてよいとされてはいるが、サプリメントで補っている場合などは、コーン油によって過剰摂取しないように心がけよう。
体内に溜まりにくいため過剰摂取はほとんど心配しなくてよいとされてはいるが、サプリメントで補っている場合などは、コーン油によって過剰摂取しないように心がけよう。
骨粗しょう症の予防に有効なビタミンK
同じく脂溶性ビタミンに分類される、体の機能を正常に保つために欠かせない栄養素がビタミンKだ(※11)。コーン油大さじ1杯あたり0.6μg含まれている。ビタミンKはケガなどで出血した場合に止血を促したり、骨の形成をサポートしたりするビタミンで、骨粗しょう症の治療薬としても使われている。緑黄色野菜などさまざまな食材に含まれるほか、体内でも合成されるため基本的に摂取不足の心配は少ない。過剰摂取した場合の健康被害についても、報告はなされていないようだ。
糖質はゼロ
コーン油には糖質が一切含まれない。糖質制限ダイエット中の方などには朗報かもしれないが、糖質はヒトにとって重要なエネルギー源であることは覚えておこう。とはいえ、過剰摂取が健康に害を及ぼすリスクはあるため、糖質をコントロールしたい方にとってはコーン油のこうしたポイントはうれしいだろう。
4. コーン油の脂質・脂肪酸
コーン油に限らず、油を語るうえで欠かせないのが脂質や脂肪酸の話である。基本的なところだけを簡単に解説しよう。
「脂質」「脂肪酸」とは
脂肪酸がさまざまな物質と結びつくことで作られるのが脂質である。したがって、脂肪酸は脂質の主要成分といえる。しばしばダイエットの敵として扱われるが、ヒトが生きていくうえで欠かせない大切な栄養素だ。脂肪酸は「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」に大別でき、さらに不飽和脂肪酸は「多価不飽和脂肪酸」と「一価不飽和脂肪酸」に細別される。
コーン油をはじめとする植物性油には不飽和脂肪酸が、ラードなどの動物性油には飽和脂肪酸が多く含まれる。不飽和脂肪酸には「オメガ3(n-3)系脂肪酸」「オメガ6(n-6)系脂肪酸」「オメガ9(n-9)系脂肪酸」などがある。
コーン油をはじめとする植物性油には不飽和脂肪酸が、ラードなどの動物性油には飽和脂肪酸が多く含まれる。不飽和脂肪酸には「オメガ3(n-3)系脂肪酸」「オメガ6(n-6)系脂肪酸」「オメガ9(n-9)系脂肪酸」などがある。
コーン油はオメガ6系脂肪酸が豊富
コーン油を構成する主な脂肪酸は、リノール酸を始めとしたオメガ6(n-6)系脂肪酸である。リノール酸はコレステロールを下げる作用が確認されており、生活習慣病予防などに効果が期待できる。しかし過剰摂取すると、善玉コレステロールも減少させてしまったり、免疫力の低下を招いたりすることがある。
また空気に触れる、高温で調理するといったことで酸化しやすく、がんの原因となる過酸化脂質に変化する場合がある(※12)。コーン油をはじめとした植物油は市販の菓子やパン・総菜・ファストフードなどに多く使われている。過剰摂取を防ぐには、料理で使う以外に加工品などにも気を配ることが大切だ。
また空気に触れる、高温で調理するといったことで酸化しやすく、がんの原因となる過酸化脂質に変化する場合がある(※12)。コーン油をはじめとした植物油は市販の菓子やパン・総菜・ファストフードなどに多く使われている。過剰摂取を防ぐには、料理で使う以外に加工品などにも気を配ることが大切だ。
トランス脂肪酸の過剰摂取には注意
さらにトランス脂肪酸(※13)にも注意しよう。コーン油などのオメガ6系脂肪酸を個体に加工する過程で生まれるトランス脂肪酸は、摂り過ぎると生活習慣病発症の危険性が上がるといわれている。固体化されたコーン油はマーガリンやショートニング、食用精製加工油脂を使った製品に使われている。トランス脂肪酸の摂取量目安は1日の総エネルギー摂取量の1%以内なので覚えておこう。
5. コーン油の上手な摂り方
コーン油をカロリーオフする食べ方としては、油自体の使用を控えるのがもっとも手っ取り早い。たとえば大さじ1杯を小さじ1杯(4g)にすることで、73.68kcal減らすことが可能だ。前述の通りコーン油にはメリットもある。それも踏まえて、健康に配慮したコーン油の摂り方を紹介しよう。
オメガ3系脂肪酸とのバランスを考える
コーン油の主成分であるオメガ6(n-6)系脂肪酸は、魚の油などに含まれるオメガ3(n-3)系脂肪酸とバランスよく摂取することで、身体によい影響を与える。そのため摂取量のバランスを考えて食べるようにしたい。理想の割合は【オメガ6系:オメガ3系=4:1】だ。近年、私たちの食生活では【オメガ6系:オメガ3系=20~25:1】の割合で摂取するようになってしまったといわれている。手作りの料理だけでなく加工品にも配慮して、摂り方を考えよう。
良質なコーン油を選択する
摂取を控えたいトランス脂肪酸は、コーン油を高温で精製する際にも発生する。また高温で精製したコーン油は酸化や変質している場合があり、身体によい油だとはいいがたい。良質なコーン油を選ぶには「低温圧搾(コールドプレス)」と記載されているかどうかをチェックしよう。低温圧搾製法は30℃以上の熱を加えずに精製するため、よりフレッシュな油だといえる。
低カロリーの「油」は存在しない
人工的に合成した油の「代替物」として低カロリー(カロリーゼロ)の油は存在するが、天然で低カロリーまたはカロリーゼロといった油は存在しない。とはいえヒトの生命維持に欠かせない栄養素であるため、まったく摂取しないというわけにもいかない。したがって、上述のように摂取量に気をつけつつ摂り方や選び方の知識を身につけておくことが大切だ。
結論
コーン油はビタミンEが豊富など魅力的な点も多いが、現代人の食生活はカロリーオーバーやオメガ6系脂肪酸・トランス脂肪酸の摂り過ぎなども懸念されている。摂取量に気をつけるほか、オメガ3系脂肪酸とのバランスに配慮した摂り方をしたり、良質なコーン油を選んだりするなどして、健康的な食生活につなげてほしい。
(参考文献)
- 1:文部科学省 食品成分データベース「油脂類_(植物油脂類)_とうもろこし油 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14007_7 - 2:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html - 3:文部科学省 食品成分データベース「油脂類_(植物油脂類)_なたね油 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14008_7 - 4:文部科学省 食品成分データベース「油脂類_(植物油脂類)_ごま油 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14002_7 - 5:文部科学省 食品成分データベース「油脂類_(植物油脂類)_米ぬか油 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14003_7 - 6:文部科学省 食品成分データベース「油脂類_(植物油脂類)_オリーブ油 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14001_7 - 7:文部科学省 食品成分データベース「油脂類_(動物脂類)_牛脂 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14015_7 - 8:文部科学省 食品成分データベース「油脂類_(動物脂類)_ラード - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14016_7 - 9:農林水産省「油脂」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/fat_oil.html - 10:厚生労働省「抗酸化ビタミン _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-008.html - 11:厚生労働省「ビタミン _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html - 12:厚生労働省「不飽和脂肪酸 _ e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-031.html - 13:農林水産省「すぐにわかるトランス脂肪酸」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/