1. ハリッサとは?
ハリッサ(Harissa)とは、唐辛子で作られたペースト状の調味料のこと。主な材料には唐辛子のほか、ニンニク・コリアンダー・キャラウェイ・クミン・パプリカ・オリーブオイル・塩などが使われている。真っ赤な見た目のとおり刺激的な辛さがあるが、さまざまな材料を混ぜて作るので奥深く複雑な味わいなのが特徴。また、塩気がきいているので、料理の味を引き締める役割も担っている。
ハリッサの名前の由来は?
ハリッサ(Harissa)という名前は、アラビア語の「harasa」に由来するといわれている。また「harasa」には「叩く」「バラバラにする」などの意味がある。ハラッサが多く使われているチュニジアでは、「チュニジアの国民的調味料」や「チュニジアの肉料理・魚料理の象徴」などと呼ばれている。
2. ハリッサとチュニジアの関係
ハリッサは、チュニジア料理に欠かすことができない調味料として知られている。魚介や羊肉などの煮込み料理、クスクスを使った料理、豆を使ったサラダなどには、必ずといっていいほどハリッサが添えられている。なぜこれほどまでにハリッサが使われているのだろうか。その理由を解説する。
ハリッサはスペイン占領下以降に誕生した
チュニジアなどマグリブ諸国に唐辛子が輸入され始めたのは、1535~1574年頃のスペイン占領下でのことといわれている。唐辛子自体は、チュニジアがスペインに占領される以前に、歴史的に有名な「コロンブス交換」により新世界(新大陸)から旧世界へと渡っていたようだ。そして、マグリブ諸国がスペイン占領下となって以降、唐辛子がマグリブ料理へと導入されたと考えられている。
チュニジアはスパイスに恵まれていた
マグリブ諸国に唐辛子が導入されて以降、この地域では唐辛子を使った料理が増えたという。特にチュニジアでは唐辛子を使うことが多く、その中で「ハリッサ」が誕生したそうだ。また、ハリッサにはさまざまなスパイスが使われているが、これはチュニジアが「ローマの穀倉地帯」と呼ばれるほどに食料に恵まれていたことが関係している。こうした地理的・歴史的背景からハリッサは誕生した。
3. ハリッサの3つの魅力を紹介!
近年は日本でもハリッサブームが起きているが、なぜこれほどまでにハリッサに注目が集まっているのだろうか。そこにはハリッサ特有の魅力が隠されているようだ。そこでハリッサの魅力・特徴も確認しておこう。
魅力1.辛味が強くパンチを与えてくれる
ハリッサの最大の魅力は、とにかく辛味が強いこと。唐辛子をふんだんに使っているため、見た目以上にスパイシーで強い刺激を加えることができる。ちなみにハリッサの辛さは、使用する唐辛子の品種により異なる。チュニジア産の唐辛子を使っている場合は、スコヴィル値が4~5万程度だという。
魅力2.使い勝手がよくて何にでも合う
ハリッサの二つ目の魅力は、どのような料理にも合わせやすいことだ。たとえば、地中海料理ではクスクスやケバブなどにも使われている。また、地中海生まれの調味料だが、日本では万能調味料として知られており和食や中華などに合わせることも多い。刺激的な美味しさがクセになってしまう。
魅力3.手軽にエスニック感を味わえる
ハリッサにはコリアンダー・キャラウェイ・クミンなどが使われているものもあり、ハリッサを使うだけで地中海料理のような味わいに仕上げることが可能だ。地中海料理に多い煮込み料理や豆のサラダなどを作るときには、ぜひ美味しくてスパイシーなハリッサを加えるようにしよう。
4. 自家製ハリッサの簡単な作り方
最もシンプルなハリッサは、唐辛子・オリーブオイル・塩の三つがあれば作れる。また、ペーストを作る際には「フードプロセッサー」があると便利。材料をフードプロセッサーにすべて入れて攪拌すれば、比較的簡単にハリッサが完成する。以下の作り方を参考にしながらハリッサを作ってみよう。
- 乾燥した唐辛子を湯に入れてふやかす
- ふやかした唐辛子のタネと軸を取り除く
- フードプロセッサーで唐辛子・ニンニク・オリーブオイルを攪拌する
※コリアンダー・キャラウェイ・クミンなどのスパイスを加えてもよい - 塩を加えてぺースト状になるまで攪拌したらハリッサの出来上がり
唐辛子の取り扱いには注意しよう
ハリッサのように大量に唐辛子を使う際には、必ず部屋を換気し、手袋とメガネをした状態で作業を行おう。素手で唐辛子を触ってしまうと、後でヒリヒリと痛い目にあう可能性がある。万が一、素手で触ってしまい灼熱感が生じたら、水道水と石鹸を使って丁寧に洗い流すとよい(※1)。
5. ハリッサの美味しい使い方3選
ハリッサは地中海料理をはじめ、和食や中華などさまざまな料理に使うことができる。そこでいくつかハリッサの美味しい使い道を紹介しておこう。
その1.肉料理や魚料理に使う
シンプルに塩コショウでローストした肉料理や魚料理に、ハリッサをつけて食べるのもおすすめ。ハリッサにはニンニクやオリーブオイルが入っているので、肉料理や魚料理などの味を引き締めてくれる。ワインとの相性もよいので、ぜひハリッサを手に入れたら試してみよう。
その2.トーストに使う
ペースト状のハリッサを、食パンやフランスパンなどに塗ってからトーストにするのもよい。オリーブ・ツナ・サーモン・チーズなどをトッピングすれば、即席カナッペの出来上がり。また、ハリッサとヨーグルトを混ぜて塗れば、マグリブ風(モロッコ風)のトーストを楽しむことができる。
その3.サラダやスープに使う
現地では、ハリッサを味の引き締めや味の変化に使うことが多い。前述のようなクスクス・豆のサラダ・ブリック(卵の包み揚げ)に添えたり、スープやパスタなどに加えたりするのも一般的だ。そのほかオムレツなどにつけても美味しい。食事の途中にハリッサで味を変えてみるのもいいだろう。
6. 市販のおすすめハリッサを3つ紹介
ハリッサはさまざまなメーカーから販売されており、輸入食品を扱っている専門店などで見かけるほか、ECサイトなどでも購入することが可能だ。その中から特に人気のハリッサを三つ紹介する。
カルディ「ハリッサ 110g」
ハリッサの中でも特に人気なのが、コーヒーや輸入食品などを販売しているカルディコーヒーファームの「ハリッサ」だ。SNSなどでブームが起きて、一時期は品薄状態が続いていたこともある。唐辛子に複数のスパイスを加えて、日本人好みの味付けに仕上げている。まずは試したい一品である。
ユウキ「ハリッサ 110g」
こちらのハリッサは、中華料理・エスニック料理に必要な調味料を取り扱っているユウキ食品のハリッサである。ニンニクやコリアンダーを加えており、スパイスの香りも楽しめる一品となっている。カルディとは異なり、本場・チュニジアのハリッサに近い味わいになっていることが特徴である。
石垣島海のもの山のもの「島ハリッサ 50g」
島ハリッサは、石垣島海のもの山のもの生産組合が製造・販売しているハリッサだ。石垣島の唐辛子をはじめ、スパイス(長命草)や塩にも石垣島産のものを使っていることが特徴。本場のハリッサとは味が異なるので、いろいろとハリッサを試してみたい人にはおすすめとなっている。
結論
地中海生まれのハリッサは、チュニジア料理には欠かせない唐辛子調味料である。ただ、日本で売られているハリッサは和食や中華料理などに使っても美味しい。辛いもの好きには非常におすすめの調味料なので、専門店やECサイトなどで購入したり、自宅で作ったりしてみるとよいだろう。
【参考文献】
- ※1:農林水産省「プサイシンに関する情報」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/capsaicin/