1. 刺身とは

ご存知の通り、刺身とは、魚介類を生のまま薄く切り、醤油などをつけて食す料理のこと。日本を代表する料理だ。四方を海に囲まれた島国である日本において、魚食は自然に人々の暮らしに浸透した。
切り身と刺身
魚を切ったものなのに、刺身と呼ばれるのはなぜだろう?諸説あるが、由来の有力候補は大きく2つ。1つは、魚を切り身にすると見た目には何の魚かわからなくなってしまう。それを防ぐために、切り身にその魚のヒレを刺した状態で提供し、そこから刺身になったという説。もう1つは、切るという言葉は武士の世界ではあまり縁起のよい言葉ではないため、刺身と呼ぶようになったという説だ。
生食の始まり
では一体、日本で刺身が食べられるようになったのはいつ頃のことなのか。こちらも諸説あり定かではないが、平安時代には生で魚を食べていた様子を表す歌が詠まれている。ただ、その頃は細かく切った魚を酢などで味付けしていたといわれている。現在のように醤油につけて食べるようになったのは、江戸時代後期になってからのこと。
2. たたきとは

たたきは、料理名ではなく調理法の1つ。魚を美味しく食べるための方法だ。生魚をネギやしょうがなどの薬味と一緒に包丁で叩いたもの、または切り身を火で炙って、表面に少し火を通したもののことを言う。
青魚のたたき
アジやイワシなど、青魚を生で食べる時によく用いられるたたきという調理法。青魚独特の風味は香味野菜を合わせることでグッと和らぎ、美味しさへと進化するのだ。味噌で味を整えるのも特徴的。味噌は、醤油などより古くから日本で親しまれてきた調味料の1つ。その背景を考えると青魚のたたきは、古くから食べられていたのかもしれない。
カツオのタタキ
もう1つのたたきが切り身を火で炙るという調理法で、カツオが有名だ。土佐の郷土料理としても知られている。カツオも青魚同様、独特のにおいが強い魚だ。また、傷みやすいことでも知られている。その欠点を補い、美味しさへと進化させるのがたたきという調理法なのだ。塩を振り、萱や木、炭などの上で炙るのが基本。こちらも薬味をたっぷりのせて食べられる。
3. お造りとは

お造りと聞いて、料亭や格式ある日本料理店で出される生の魚料理を思い浮かべる人も多いだろう。お造りも刺身同様、日本を代表する生で魚を食べる料理のことだ。刺身と同義と言える。
関西生まれのお造り
お造りは、関西で生まれた言葉という説がある。関西では切ると同様に、刺すという言葉も忌み嫌われていたため、生魚を薄く切った料理を作り身という名前で呼んでいた。その作り身に接頭語の御がつけられ、お造りに発展したのだ。
丁寧語としてのお造り
現在では、刺身をより丁寧に表す場合にお造りというケースも存在する。また刺身は、牛刺しや馬刺しなど魚以外にも使用されるが、お造りは魚に限って使われる表現である点も特徴だ。
4. 刺身、たたき、お造りの違い

刺身とお造りは、料理名。対してたたきは調理法である。刺身とお造りは、ほぼ同意義だが、お造りの方がより丁寧な印象を与えることが多い。たたきは、癖のある魚を美味しく食べるための知恵から生まれた調理法といえそうだ。
結論
生で魚を食べるのは、世界でも珍しいこと。これも海に囲まれた島国だからこそ。美味しい刺身、たたき、お造りを食べる秘訣は、新鮮なものを選ぶこと。目利きに自信がなければ、ぜひ信頼できる魚店を探そう。