1. 鏡開きとは
鏡開きは正月の最後に行われる大切な行事だ。「鏡餅を割って食べる」とだけ知っていれば十分かもしれないが、日本人であるならばぜひ、そこに込められた先人の願いや言葉の意味・由来などを知っておこう。
鏡開きとはどんな行事?
新年に「歳神様(年神様=としがみさま)」を迎えるため、門松やしめ飾り、そして鏡餅といったいわゆる「正月飾り」を飾る。このうち鏡餅には、正月の間、歳神様が宿っているという。その鏡餅をおろして食べることで、歳神様を送り出すと同時に1年間の無病息災を願う行事が鏡開きである。つまり、飾っておろして食べて初めて意味を成すのが鏡開きなのだ。
江戸時代から続く風習
鏡開きの歴史は江戸時代にまでさかのぼる。武家では正月に兜や鎧を飾り、その前に鏡餅を供えていた。武家社会では鏡餅を下げたあと雑煮などに入れて食べており、これが鏡開きの始まりとされている。やがて武家以外にもこの風習が広がり、一般的な日本の行事となったのだ。
餅を割るのに「開き」というのはなぜ?
近年の鏡餅はパック入りのものが多い。そのパックを開封するから開きと表現するのだろうか?江戸時代にはパック入りの鏡餅など存在していないためそれはないだろう。ではなぜ開きなのかというと、お伝えしたように武家の風習が影響している。乾燥した鏡餅を木槌や金槌を使って小さく割るのだが「割る」という言葉は縁起が悪く禁忌ワードであった。そのため末広がりなどよい意味を持つ「開く」が使われるようになったというのだ。なお「鏡」にも円満という意味が込められている。
酒樽も「鏡開き」という理由は?
日本酒の入った酒樽の上蓋を、木槌などで割る行事も鏡開きという。これは、酒屋の間で上蓋を鏡と呼んでいたことに起因する。やはり割るという言葉は縁起の悪いものだったのだろう。
2. 鏡開きはいつ?正しいやり方と禁止事項
鏡開きの基本をご理解いただいたところで、具体的な時期ややり方、禁止事項などをお伝えしていく。
鏡開きをする日
もともとは1月20日だったが、徳川家光が4月20日に亡くなり、毎月20日が月命日となったことから1月11日に変更された。これにより、それまで1月15日までとされていた松の内(歳神様が宿っている期間)も1月7日までに変わった。ただし、地方によっては松の内が1月15日までというところもあり、その場合は1月15日または20日に行うこともある。逆に京都では、少し早めの1月4日に鏡開きを行うこともある。
鏡開きの正しいやり方
やり方はご存知の通り、鏡餅を木槌や金槌で叩いて小さく割るという方法だ。鏡開きをする頃には乾燥してカチカチになっているため、小さなサイズに割るのはひと苦労かもしれない。ここで一気に割ろうと力を込めすぎると失敗しやすいため、まずはヒビを入れる目的で少しずつ叩いていこう。ヒビが入ったら、あとは勢いをつけて強めに叩けば割れるはずだ。
なお餅がかなり乾燥しているなどで、うまくいかない場合もある。そのときは餅を半日ほど水に浸しておき、耐熱容器に入れて電子レンジで加熱しよう。ある程度柔らかくなったら、火傷に注意しながら取り出し、手でちぎればOKだ。
なお餅がかなり乾燥しているなどで、うまくいかない場合もある。そのときは餅を半日ほど水に浸しておき、耐熱容器に入れて電子レンジで加熱しよう。ある程度柔らかくなったら、火傷に注意しながら取り出し、手でちぎればOKだ。
鏡開きの禁止事項
実は、鏡開きでは「包丁など刃物で餅を切ってはならない」という禁止事項がある。これも武家の風習であることが関わっている。刃物は切腹を連想させるためだ。また食べずに捨ててしまうなどはもちろんNGだが、食べ残しもNGとされている。ごく小さなかけらは汁物に入れるなどし、すべていただくのが基本なので覚えておこう。
3. 鏡開きをした餅の食べ方とおすすめレシピ
「食べる」までが鏡開きである。基本的な食べ方や、ひと手間加えたおすすめレシピを紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
基本は「雑煮」「おしるこ」
鏡開きをした餅は雑煮で食べるのが基本だ。あるいは、魔除けの意味が込められているおしるこにするのもよいだろう。いずれにせよ、汁物なら小さなかけらも食べやすいはずだ。だが正月は、家族で家で過ごす時間が増える。鏡開きをする頃はすでに餅をさんざん食べたあとだということもあるだろう。そんなときは、ひと手間加えてみてはいかがだろうか?
キムチチーズ餅
- 餅にキムチ適量とチーズをのせる
- オーブントースターで焼き色がつくまで焼く
キムチとチーズでは風味が足りない場合、しょうゆやポン酢、だし汁などをかけてみよう。
餅グラタン
- 餅を食べやすいサイズに切りる
- 耐熱皿に、餅と餅がかぶるくらいの水を入れる
- 電子レンジで2~3分加熱し、柔らかくなったら水気をきる
- グラタン皿に餅を並べ、好みの野菜を細かく切って乗せる
- ホワイトソースを上からかけ、チーズをたっぷり乗せる
- 250℃に余熱したオーブンで10〜15分ほど焼く
野菜は玉ねぎ・パプリカ・マッシュルームなどがおすすめだ。
揚げ出し餅
- 餅を1cm角に切る
- フライパンにサラダ油をひいて熱する
- 180℃になったら餅を入れて揚げる
- 揚がったら餅の油をよく切る
- めんつゆ大さじ1を熱湯大さじ3で薄め、餅を浸す
- 大根おろしを適量かけ、小口切りにしたネギを適量のせる
明太子や生姜など、お好みでアレンジしてみよう。
4. 鏡開きとあわせて知っておきたい「正月飾り」の意味
新年に降臨する歳神様は、その年の幸せを授けてくれるという。正月飾りは、その歳神様を迎え入れるためのものだ。最後に正月飾りそれぞれの意味を解説しよう。
門松
「立松(たてまつ)」「飾り松」「松飾り」とも呼ばれる。平安時代の行事に由来すると考えらえており、一見すると竹の存在が目立つが、縁起のよい木とされる「松」が主体にある。門の前に飾るご家庭は減っているが、門松は歳神様にとって目印であり、新年に幸福を迎え入れるために置くものだ。12月13日から1月7日(地方によっては1月15日など)の松の内と呼ばれる期間に飾る。処分はどんど焼きが一般的である。
しめ飾り
正月に玄関ドアなどにかける飾りである。近年あまり見かけないが、ひと昔前は車に飾る方も多かった。しめ飾りは藁で作られており、手作りするご家庭もある。歳神様を迎える準備が整っていることを示しており、門松とあわせて歳神様を家に迎える目印となる。飾る期間や処分方法は門松と同じである。
鏡餅
歳神様へのお供え物である。と同時に、門松やしめ飾りを目印に降臨した歳神様が、正月の間に「依り代」とする場所でもある。飾り始める時期は門松やしめ飾りと同じだが、お伝えしたように1月11日(地方によっては1月15日や20日など)におろして食べる。お供え物には歳神様の魂が宿っており、それを食べることで力を分けてもらえると考えられている。
結論
鏡餅は歳神様へのお供え物であるとともに、松の内の歳神様の依り代となる場所である。また松の内を過ぎて行う鏡開きは、その歳神様を送り出すと同時に、無病息災を願う大切な行事である。意味や歴史を理解すると、また違った鏡開きを迎えられるだろう。開いた餅は、小さなかけらもすべていただくことが大切だ。紹介したレシピもぜひ参考にしてみてほしい。
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